ラジカセしか武器になるものがない。
いや、待てよ。
「おねえちゃん、iPhoneを出して。」
「なんで!?」
「どうりで俺たちの居場所がわかるはずだ。
この GPSだ。
俺たちだけ座標が動いた。」
「GPS…なるった。
(なるほどなっとくした。)」
「おいで、ワンちゃん」
レトリバーに声を掛ける。
飼い犬だ。
しかも頭の良い犬種。
ビビることはない。
レトリバーがペタペタと歩み寄る。
「かわいい。」
彼女が頭から背中を撫でる。
その間に、俺は2台のスマホを首輪にくくりつけた。
「これでよし。」
「うん。
ごめんなさいね。
頑張ってよ。」
彼女が犬に別れを告げると、俺はわざと追い払った。
レトリバーは、たまに振り返ったが、遠くへ走ってくれた。
「さあ、こっちへ。」
ここは、さっきの食堂の裏口だ。
大きな冷蔵庫が、店の裏にある。
ここに隠れよう。
言っておく。バカッターではない。