街中を戦車が走っている。
何故か不思議ではない。
そうか。
こんな、非日常を映画で観ていた。
最近のコンピューターグラフィックスの進歩のせいだ。
確か…去年の
アメリカ版の
ゴジラ対キングモスラのシーンだ。
バーチャルがリアルを超えていた。
まるで、こんな世界を体験済みに感じてしまう。
しかし、これはリアルだ、本物だ。
作り物でも、物語もない。
「テレビもダメみたいね。」
彼女の声だ。
テレビなんかダメに決まってるじゃないか。
彼女はカバーを剥いたスマホをこちらに見せている。
そうか、スマホなら見える。
早速俺はテレビのアイコンを押した。
彼女は、iPhoneイレブン
俺はアンドロイドの機種だ。
試す価値はある。
「どう?」
彼女はスマホをあちこちに向けていた。
ダメだ。
チャンネルは合っている。
どのチャンネルも白い画面だ。
スマホのせいじゃないな。
放送がされていない。
この緊急時にニュースも流さない。
彼女もスマホをしまい、しばらく沈黙になる。
「ジェイアラートです。
ジェイアラートです。
只今、北朝鮮 から 3 機の 飛翔体 を確認しました。」
唯一の情報を得たのは、町内放送だ。
途切れ途切れの電子音声だった。