コフィを助手席に乗せて車を出す。
ピットケースを置き去りに走り出すのだ。
半信半疑。
ゆっくりと前進。
ピットケースは、見えない糸で引っ張っているように動いた。
車を止めれば一緒に止まる。
搬送ボックスとは素晴らしいモノだった。
家に向かって走っている。
蟹沢川にかかる市道の橋が見えた。
家は近い。
橋の中間点に人影がある。
若い男性だ。
川を覗く姿勢でいる。
ここから覗く蟹沢川は美しく、俺も好きな場所だ。
男性の脇を過ぎた。
ピットケースが気になって、ミラーで見えない後ろを見ようと振り返った。
「…ぁあっ!」
急ブレーキ!
男性が落ちた。
ハザードランプを点けて車を飛び出した。
コフィも降りている。
「人が落ちました。」
平坦な声のコフィ
深夜の橋に1人。
川なんて真っ暗で見えない。
まさか‥