~IOTA DEN~ 96 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

水族館のような一枚ガラスがこの部屋を二分している。

ガラスの向こうには、死刑執行の電気椅子に縛られている和尚と華伽。

足元のろうそく台から白い煙が上がっている。

防毒マスクを被った老子が、解毒薬をよこせ
と手招きしている。

その指はガラスの一部を指した。

10㎝四方の穴が一つある。

ここから解毒薬を投げ入れろというのだ。

「どうすればいいんだ。」
有火馬達は懐から解毒薬ケースを取り出したものの、穴に入れずにいる。

「騙されるな。
奴は解毒薬を手に入れて逃げるだけさ。」
楼射

「しかし、和尚と華伽が…」
重烏

「和尚さんっ!華伽っ!」
有火馬が叫んだ。

煙が充満して視界が悪くなったからだ。

和尚も華伽も、三分間は息を止めていられる。

「どうにか、このガラスを割れないか?」
紫雲

「これはガラスじゃねぇ。
分厚いアクリル板だ。
水族館の巨大水槽と同じ強度だろう」
有火馬

「もう、渡すしか。」
重烏

「シゲっ。」
楼射は重烏を止める。

「じゃあ、どうするんだ!楼射。
奴に頭下げて、解毒薬を塗ってもらうしか‥」
重烏は楼射を突き飛ばしてアクリル板の間仕切りに走る。

「渡すな!
奴の思うつぼだ!」
有火馬

『シゲ!

シゲ。ありがとう。

お前の気持ち、有り難く頂戴した。

私と華伽は、負けてしまった。

忍びにとって、闘いの負け。
すなわち、死。

華伽も覚悟あり。

それは、渡すでないぞ。

シゲ。みんな。
クロハネに栄えあれ!』
和尚の声だ。

まるで雲の中から仏の声を聴くようだ。

『みんな。
負けないで、私は…私はホワロが待ってるから…ね』
華伽



「やめてくれーっ。
息を止めてくれ。」
紫雲

「あきらめるな!
俺達は最強だ!」
楼射

全員で間仕切りに体当たりをする。

《バシーン》

《バシーン》

『っぐぉ、お。』

「和尚さぁん!」

《バシーン》

《バシーン》

「割れろぉお!」
有火馬