麻酔から覚めたカンウェ(K)
ここは独房の中だ。
右手を見ると靴ひもで止血してあった。
小さな窓からタンの目鼻だけ見える。
配膳の穴からタバコを投げ込まれた。
モクモクと煙が広がる。
「これは!」
カンウェは左手で口と鼻を塞ぐ。
心頭破滅香の複製品だ。
部屋の天井から白くなっていく。
息をしない訳にはいかず…
吸い込んだ。
右手の痛みを忘れるくらいの爽やかな香りがした。
いけないとは知っていても、身体が欲してしまう。
鼻を塞ぐ手を離していた。
窓から研究員のビデオカメラのレンズが見えた。
「いかん。」
我に返るカンウェ
時すでに遅し。
のどの渇き。
悪寒。
続いて、激痛。
震え。
幻覚。幻聴。
「ひぃぃ。
この虎をどけてくれっ!
虎を、虎を」
虎などいない。
黄色のシミと雨垂れのシミがあるだけだ。
カンウェは手首だけの右手で壁を殴り続けた。
「君とは付き合いが長い。
これが本物であることを願うよ。」
タンは解毒薬のケースを投げ込む。
「ンーフ。ンーフ。」
荒い息でタンを睨む。
「早くしな。死ぬよ。」
タンが薬を塗るジェスチャーをした。
「ンーフンーフ」
ケースを左手と口で開ける。
ケースにはわずかな軟膏しかなく、かき集めて鼻に詰め、喉に塗る。