おじ少 107 また手紙 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

「ごめんください。」
《バンバン》

え!誰かが訪ねてきた。

ホワイトボードをひっくり返してから、階段を上った。

「だれかいませんか?」

今から階段は隠せない。
このまま、戸を開けよう。

「はっはい…今。」

薄暗いから大丈夫だろう。
戸を開けた。

「私、大越マシンの岡部と…」

「岡部さん!」
すっかり爺さんだ。
病院のロビーに来たのは岡部さんだったようだ。

「え。どこかで…」
覚えてないか。

「小野寺ですよ。
ほら…霞村の…」

いや待てよ。
俺は70歳になってないとおかしいな。

「あぁ。小野寺さんの
お父さんそっくりですな。」

お父さん?
なるほど、居候の小野寺の息子にされたのか。

「お父さんはお元気で?」
岡部さん

「え。いや去年の春にガンで」
テキトー

「そうでしたか。
連絡先が分からず、お礼も言えませんでした。
こちらにお住まいですか?」

「いやここは、物置です。
どうしてここへ?」

「あっいや。
うちの社員に松木という変わり者がいましてね。
2012年の今日、この住所の小野寺君に渡してくれと。
松木の生前に手紙を預かったもので。」

「生前って!」
マツさん…そんなぁ。

「病院に手紙を持って行けだのね。
仕方なく12年保管して、今日を迎えた次第です。」
岡部さんが手紙を出す。

「12年前の手紙…ですか。
あのう…松木さんはいつ?」
いつ亡くなったんだ。

「この手紙を書いて、翌月に。
思い残すことは、乾杯くらいだ。
まぁそれも叶うであろう。

と言ってました。
私には何のことやら。」
岡部さんは首をひねる。

「缶コーヒーで乾杯。」


「え?何かご存じですか?」
岡部さんが俺を覗く

「あっいや。
えーと、父もそんなことを言っていたような。あははは」


「とにかく手紙は渡しましたよ。
これで肩の荷が降りました。

でもね。
本当に小野寺さんが居たのはびっくりでした。」
岡部さんはゲートに向きを変えた。

「わざわざありがとうございました!」


岡部さんは杖をついて、草むらを歩いて行く


「おっホンダシティ。懐かしい」
岡部さん