ことばの力 | 虹色スタジアム

ことばの力


『自分の感受性くらい』 茨木 のり子

ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
何もかもへたくそだったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
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いつまでたっても慣れない関西の地。
月250時間をこえるサービス残業。
深夜早朝かまわず鳴り響く、クライアントからのメールと電話。
自分を見失った先輩社員からの嫌がらせ。
両親からの「たまには連絡しなさい」という留守電。
新幹線で3時間の距離にいる彼からの疑いの目。
やまない頭痛と月給の1/4強をむしばむ薬代。
やせ細る体、荒れ果てた肌。
     ・
     ・
     ・
社会人1年目の私は
今考えるとゾッとするような生活をしていた。
東京に帰ることもできたハズなのに
ちっぽけなプライドと意地がジャマをして
自分で自分の首をしめ続けていた。

上の詩は
「もう、いいや…」
全てを放棄しそうになっていたときに
ふらっと入った本屋さんで出会ったもの。
誰かの、何かの、環境のせいにして深く深く堕ちていこうとしていた私を
この短い一編の詩が、言葉たちが
後ろからガツンと殴り
それから、ふうわりと包み込んでくれた気がした。

立ち読みをしていて涙を流したことなんて
あとにも先にもあれだけだと思う。


あれから数年。
トラブルの対処法も少しずつ覚え
多少のことでは動じなくなってきた。
でも最近また
仕事で、人間関係で、少し揺れている。
生死に関わるような大きな波ではないけれど
心がざわざわと落ち着かない感じ。

今日、久しぶりに詩集を開いてみた。


しっかりしなさい!
前を向きなさい!
背すじを伸ばしなさい!


また叱咤激励された。
そう、全ては自分の責任。しっかり、しなきゃ。