これまで、L’Arc~en~Cielに関しては幾度となく語ってはきましたが、未だ僕の中ですべてのネタが消化されることはありません。1991年に結成されてから、今年で25年の歴史を刻もうとしているのですから、たかが23歳の僕にその語種を摘み取り尽くすなんてことはされえないでしょうし、何より彼らの音楽性の広さがそんなことをさせないのです。日本のロックバンドとされてはいますが、彼らの音楽を聴いていると「いやロックとはなんぞや」と一度考え込んでしまう人も少なくないはず。基本的には80年代のニューロマンティックをはじめとするニューウェーブの影響が強いと言われていますよね。幾つか曲を挙げるならば、よく言われているTHE CUREのようなゴシック・ポジティブパンクの影響。1998年の「DIVE TO BLUE」はキュアの「Just Like Heaven」に似通う部分がある点や、「Caress of Venus」のディスコなサウンドはDead or Aliveのようなエレクトロ色の強いニューウェーブの音を辿っているように思えます。そして、hydeはしばしばJapanのボーカルDavid Sylvianの影響を口にしていますが、「And She Said」なんかはJapanのようなサウンドメイキングが見て取れるように思えます。耽美で退廃的で、軽快なシンセサイザーを絡ませている点はそれを思わせます。残念なことにバンドのJapanからの影響はないと本人が言うので、私の主観が大きく入ることにはなりますが、言われえないことではないと思います。80年代イギリスにおける電子音楽の台頭によって氾濫したあらゆるバンドたちを、独自の音色で、この日本で、新たに解釈してくれたのがこのL’Arc~en~Cielであると、私は信じて止みません。その他、ボッサ・シャンソンのようなラテンワールドの匂いや、ジャズ、もちろん王道のロックや、yukihiro加入後にはインダストリアルなサウンドも持ち込んでくれました。ここまで音のバリエーションを持つ音楽団体はなかなかないのではないでしょうか。
というのはサワリでして、ここからが本題。これだけ語っても私の中でボキャがなくならないのは、彼らが後の世代に与えた影響もまた絶大なものであるからです。私の知っているものだけでも、有名なのからインディーズまで含め数えれば100はいてもおかしくはないでしょう。しかし、それだけいれば、その影響に程度も生じてくるのは当然。キッズの頃にシーンの中心にいたのがラルクで、少なからず影響があるという程度の方々もいれば、噛み締めて噛み締めた先にさらなる旨味に巡り会えたというような、敬虔なフォロワーもいらっしゃいます。今回はこの後者のフォロワーたちを更にふるいにかけて、私の個人的趣向もありますが残った2組のバンドを紹介したいと思います。
○amber gris
このバンドは、初めて聴いた時にメジャ-2作目アルバム『heavenly』を思い出しました。そもそも『heavenly』はラルクのアルバムの中でも、ビギナーの方が最後に手を伸ばすようなアルバムであるように思われるのです。というのも、シングル曲は「Vivid Colors」のみ(「夏の憂鬱」はその後形を変えてシングルになりました)。なんとも言えぬ過渡期感も相まって、事実現在も支持はそこまでされていません。しかし、amber grisはこの時代の世界観を再建しようとする試みが観れたのです。ボーカルの手鞠さんもRuvieの頃とは打って変わって、95年の頃の(「Still I’m with you」を歌う)hydeさながら、爽快な声色を意識するようになったように思われますし、クラシック映画に出てきそうな異国の旧市街地でのシチュエーションが垣間見られるのです。「ファラウェイ、ファラウェイ。」は私的に、「Vivid Colors」の復刻です。「モノクロな街並みに佇む僕と無情に過ぎ行く時間と人の波」みたいな切なくも儚い映像を映そうと試みているような気がするんですよね。しかしあの時代のラルクが見せてくれた風景画にもとれる音の世界は、なかなか価値を見出すことが昨今ではしにくくなっているんですよね。というのも、EDMを駆使した最近テイストの曲だったり、HRに傾倒しまくったVAMPSの活動だったりというのがメディアに出るあまり、かつての美し儚いラルクのイメージを新世代のフォロワーが得にくくなっていると感じるからです。今の音楽を支持することも大事なのはわかっていますが、やっぱり自分の一番お気に入りの空間と比較してしまうのは否めないです。そんな中でamber grisはそのかつての良さを受け継いでくれています。ラルク1stの『Tierra』に見られる白系サウンド(ポストロック的なV系のサウンド)も、強く影響しているのがわかります。
○THE NOVEMBERS
ラルクのフォロワーといえば7割はヴィジュアル系のアーティストであることは周知の事実。hydeの歌唱法や、サウンドメイキングは多くのV系バンドに影響を与えましたが、その多くのV系バンドにおいては、正直ラルクの解釈を同じ方向に固めていると思わざるをえません。その多くは、ラルクを浅くしか知らない人でも、「なんというかラルクっぽいよね」と感想をあてがうことができるようなバンドです。なので、私的にロキノンやJポップのジャンルからラルクの影響を見つけ出す方が面白いのです。THE NOVEMBERSとの出会いは衝撃的でした。まず彼らのラルクに関するツイートを見つけたところから、彼らの音源を探るに至ったんですよね。しかし、初めて聴いた時ラルクのサウンドだったり同じ匂いを感じ取ることはできませんでした。ですがフォロワーでありしかも、鬱陶しいまでに吐き出す彼らのラルクツイートを見る限り、彼らの作品の奥深くにL’Arc~en~Cielが眠っているに違いないと私は信じ彼らの音を追ったのです。ノーベンバーズのサウンドは二言で言えばシューゲイザー・ポストロックです。wikiさんを引用しておきましょう。
・シューゲイザー
フィードバック・ノイズやエフェクターなどを複雑に用いた深いディストーションをかけたギターサウンド、ミニマルなリフの繰り返し、ポップで甘いメロディーを際立たせた浮遊感のあるサウンド、囁くように歌い上げるボーカルなどがシューゲイザーの一般的特徴として挙げられる。
・ポストロック
サイモン・レイノルズは『ワイアー』(The Wire)誌1994年5月号でこのポストロックという考えを拡張している。レイノルズの「ポストロック」という言葉は、「ロックの楽器をロックとは 違う目的に使用し、ギターをリフやパワーコードのためでなく、音色や響きをつくるために使う」音楽を指している。
つまり空間系のホワホワ、シュワシュワしたサウンドが特徴です。先ほど白系サウンドにも触れ、ポストロック的なV系のサウンドと説明を加えましたが、ヴィジュアル系の中でも攻撃的なパンクとは対極に位置する音色をそれと私はしています。もちろんノーベンバーズはヴィジュアル系ではありません。ヴィジュアル界では黒に対する「白」と表現される空間系の音を、彼らはシューゲイザーのようなサイケデリックな音に置き換えラルクの美しさを忍ばせたのではにかと思われます。そして、ボーカル小林氏の異常なまでの美への執着心も見逃してはならない点です。彼は同様に、キュアのロバート・スミスやSiouxie & the Bansheesのスージー・スー、そしてDavid Bowieの美しさを称賛するツイートをしていたのを覚えています。もちろんファッションアイコン的な美しさでもありますが、音楽的な美しいロックとして彼らを愛聴していたのです。SuedeやThe Smithsなんかの耽美的なニューウェーブの名前もあげていました。つまり、ノーベンバーズがラルクの延長上にニューウェーブの世界を見据えていたからこそ、私たちにとっては彼らの中に直接的なラルクっぽさを見つけるのが難しかったのではないでしょうか。彼らは根っこの部分からラルクを理解し、80年代UKというラルクと同じ型の血液を流しいいれたのです。
結局、2バンド共ラルクの「美しさ」を直感的に感じ取ったのではないかというまとめをさせていただきます。あの時代の映像的な美を現代に復刻させたamber grisと、ラルクと同種の血液型というのを糧に美しい音を貪欲に求めたTHE NOVEMBERS。似て非なる2社ですが、向いている方向は、どうやら同じようです。