こちらの3冊を読了いたしました。

本日は日本リハビリテーション医学会博士の近藤克典さんの著書「健康格差社会を生き抜く」をレビューさせていただきます。

 

本書p231引用


所得や教育年数、職業階層などでみた社会階層が高い者に比べ、低い者では死亡率が2から3倍高い などの健康格差がある。


薄々と感じるところではありましたが、所得と健康の格差は非情にも事実でありました。


この本なかでは貧困層と富裕層において、その健康度数や寿命がどれだけ違うのかという驚きのデータが示されていました。近藤氏は貧富の差が生み出す「健康格差」をどのように縮めていくのかという政策までを打ち出しておられましたが、その点については割愛させていただきます。


医学博士であられる近藤氏は、要介護認定を受けていない高齢者 3万2891 人を対象に調査をしたところ、所得と健康格差の関係は隅々にまで及んだそうです。


低所得の人に比べると高所得の人の方が骨折が2割少なく、無職の人に比べると就労している人の骨折は2割少なかったそうです。結婚している人に比べて結婚していない人は4割も骨折しやすく、集合住宅に住んでいる人よりも一戸建てに住んでいる人の方が骨折が1割ほど少なかったのです。


P18本書引用

これらを組み合わせると、仕事をしていて、一戸建てに住んでいて結婚している人は、無職で集合住宅に住んでいて、結婚していない人に比べると 骨折が6割も少ないのである。


また不眠経験も、 所得が低く教育年数も短い人のほうが高くなっています。(画像本書より)


所得が低くなるほどうつ状態が多く、男性では400万円以上の人のうつは2.3%なのに対して、100万円未満の低所得の人では15.8%と6.9倍も多い。


高齢者はどの年齢階層でも、要介護者は高所得者層に比べ低所得者では5倍も多いという調査結果となりました。


本書p97引用


社会階層が低い人たちほど、ストレスにさらされる機会は多い。中略


ストレスにさらされた生き物は免疫能力が低下し、疾患への抵抗力が低下することが、精神免疫学の研究で明らかとなってきている。ストレスで引き起こされた、不安、抗うつ、悲しみ、怒りなどの情動が、内分泌系・神経系を経て、抗体産生や細胞性免疫機能の抑制などの免疫系に影響する。


しかしながらこのストレス社会は、中間層や「勝ち組」の人々にも及んでいて、「うつによる休職」も増えているそうです。


参照(実に8割もの労働者は仕事にストレスを感じている)

「一億総ストレス社会」と言われて久しい昨今ですが、ストレスが病気を生み出し、貧富の差が健康や寿命の格差にまで及んでいるという現実があります。

こちら↓のYouTubeの高須医師によると、境界知能と認知能力や所得には影響があり、病院には境界知能が原因で健康的な生活習慣が身に付けられず、体調に不良をきたす患者さんが沢山いると語っています。(歯を磨く習慣がなかったり、菓子パンやカップラーメンばかりを食べてしまったり)


境界知能は7人にひとり存在すると言われていますが、所得が低くなりがちだったり、食生活や生活リズムが乱れがちな境界知能も健康格差の原因となっています。


「健康で長生き」する要因は様々にあると思いますが、所得や知能格差が、寿命や健康格差にまで及んでしまう社会の不公平性は、個人の責任なのか、社会全体で改善していくべき問題なのか。

我々は自分が生き抜くことで精一杯ではありますが、その過酷な競争の陰で個人ではどうしようもない、大きな不公平が横たわっていることは間違いありません。