この本は國学院大学経済学部教授(元全国スーパーマーケット協会理事) 、本田和成氏の2010年の著作となります。


この著書の中で本田氏は「主婦パートの高学歴化と低年齢化」を指摘していました。女性の大学進学率が上がり主婦パートは高学歴化しているのですが、高齢化をしていないと指摘しています。(若い女性のパート化が進んでいる)


女性の大学進学率が上がったことで女性の就職時期も遅くなり、それに伴い女性の結婚年齢や初産年齢も上がっています。

参照(2022年における女性の平均初産年齢は30.9才)

女性の平均初産が25才であれば、初孫をみるのは50才です。それが初産31才となれば初孫の誕生は62才。それが日本のスタンダードとなりました。

女性の晩婚化が少子化につながっていると考えれば、昔で言うところの「クリスマスケーキ論」はあながち間違いではなかったような・・。

話を戻します。本田氏は主婦パートが高齢化していない理由は、昔のように子育てが一段落した後でパートに戻るのではなく、家計維持のために子供が小さいうちからパートで働くようになったからだと指摘しています。そして正社員としての待遇を経験している女性たちは、非正規社員パートの待遇の悪さに愕然とするようです。

参照(青・専業主婦世帯/オレンジ・パー主婦世帯/紫・フルタイム正社員世帯 )

上記の図表を見ても、昨今は専業主婦世帯が激減するとともにフルタイム世帯数は変わらず、専業主婦たちがパートに流れていることがわかります。

出典( 女性は年代を重ねるごとに正社員率が低まっていく)

昔のスーパーでは精肉や鮮魚といった生成部門を職人が支配していて、彼らの加工技術がなければスーパーが成り立ちませんでした。しかしながらスーパー 各社は職人たちに生鮮食品の加工技術を頼らなくても済むように、その作業を細かくマニュアル化しパート社員にまで伝えました。それにより、パート社員を職人にかわるスーパーの戦力に仕立てあげたのです。

このようなパート社員の戦力化は他の分野にも行き渡り、 パート社員の能力や仕事内容を正社員に限りなく近づけました。このようにして企業は、パート社員に正社員並みの仕事内容を要求しつつ、低賃金& 社会保険料の負担なしという"うまみ"を拡大させています。

私の会社も契約社員は正社員との仕事内容はかわりませんが、時給はまるで違います 。

著者はこれを「アリ地獄型雇用」と名付けていました。

またキャリアワイフの夫は家事育児を6割強の男性が手伝っているのに対し、パート主婦世帯の夫は3割程しか手伝う男性がいなかったそうです。(2005年調査)キャリアワイフを持つ夫は、パート主婦の夫よりも家事手伝いをする時間的な余裕があるとは思えず、妻の稼ぎによって夫の家事育児参加への意識が変わるという事実。

「学歴もあり、正社員経験もある」パート主婦たちは職場で戦力として期待され、家庭でも家事育児の主戦力として期待されています。

著者はこのように、パート主婦がパート先からも家庭からも主戦力として期待されることにより疲弊し、「2人目は産まない」 という選択をしはじめていると指摘しています。→少子化の加速

(これに対して独身研究者の荒川氏は、結婚した女性が生む子供の人数は変わっていないと指摘していますが・・)

確かに現代社会では、正社員女性の仕事と家事と育児の両立の困難さはよく議題にのぼりますが、パート主婦の疲弊についてはあまり話題にのぼりませんね。

「パート主婦は正社員と同じような仕事を要求されながらもお給料が安く、旦那からはワンオペを期待され、その疲弊が少子化社会を作り上げているのだから、もっと主婦パートの待遇改善(時短勤務社員制度の確立)を真剣に考えた方が良い」というのが本書の要約でした。

きちんと学歴を積んで正社員となり、キャリアウーマンを謳歌していた女性たちが、家庭と育児のためにパート主婦となり、高くないお給料で会社からは正社員並みの能力を期待され、家庭ではワンオペを強いられる。

そんな現状があることを知り「パート主婦も楽じゃないよね」と意識を改めたママさんでした。