こちらの本を読了いたしました。照れ
著者はルポライターの大下英治さんです。

ベッキーが復帰後初めて臨んだCM撮影のお仕事は、「かぼちゃの馬車 」というシェアハウスを運営する会社でしたが、その会社の不動産担保ローンが焦げ付き、1000人を超える被害者オーナーが莫大な借金を抱えることになりました。

被害者のほとんどは40代の働き盛り(普通のサラリーマン)で、30年ローンを組み、シェアハウス1棟を1億5000万円ほどで購入しています。被害者の年収から見て、それほどのローンは組めないはずなのに、販売会社や運営会社、スルガ銀行がグルで文書偽造をしてローンを組ませたのです。(ローン契約の際に、スルガ銀行が被害者の年収を勝手に改ざんして多額のローン契約を可能にさせた)

返済不能に陥った被害者の弁護士には日本トップクラスの凄腕「河合弘之弁護士」がつきました。(なぜ彼がこの事件を引き受けたのかといえば、彼の娘婿も"かぼちゃの馬車"に騙されて シェアハウスを2棟も買ってしまっていたのです)


被害者オーナーたちは、シェアハウスから毎月安定した賃料が入ってくるといわれ、毎月70万円ぐらいの返済を組むも、蓋を開けてみたら賃料は1円も入らなかったそうです。

本書p179引用(スルガ銀行元行員の言葉)

「スルガは反社と繋がってて、パワハラも当たり前の環境でした。そんなところで優秀な社員と言うと・・要するに、法律違反を平気でできて業績を上げられる奴です」


被害者がシェアハウスを建てるためにスルガ銀行から融資を受けたお金が、建設会社(サブリース会社)からの接待やキックバックという形で銀行員の手にわたり、彼らスルガ行員のポケットマネーとなっていたのです。( この手口で1億円以上のキックバックを受け取っていた銀行員もいたそうです)


本書 P 203 引用

スルガ銀行の融資担当者は、詐欺に加担しているにもかかわらず、胸を張ってこう言っていた。

「我々 スルガ銀行は、このシェアハウス事業に自信を持っている」


騙された被害者たちは大手企業の管理職、大学教授、教師、医師、看護師などの優秀な人たちばかりでしたが、 まさか銀行までがグルだなんて夢にも思わなかったそうです。


そしてスルガ銀行の行員にとっても、不正融資を黙認した理由は「ガチガチの営業ノルマのため」であり、組織全体が業績至上主義に飲み込まれていたのです。

河合弁護士や被害者は「購入した不動産も銀行に返すことにより銀行の債権を全部ゼロにする」という代物弁済によっての解決を目指しました。

スルガ銀行の事件において、第三者委員会がスルガ銀行員を対象にしたアンケートでは、驚きの回答が寄せられました。

P247より引用

「 数字ができないなら ビルから飛び降りろ」と言われた。


過度な営業目標があり、目標は必達であり、達成できていない社員には恫喝しても良いという文化がある。


物を投げつけられ、パソコンにパンチされ、「お前の家族皆殺しにしてやる」と言われた。

( 以下 ずっとこの調子で綴られていきます)


銀行員って大変なんですね。ショボーン せっかく一生懸命勉強をして花形の銀行員になっても、これだけの恫喝を毎日上司から受けなければならないのだとしたら、鬱になっても仕方がない気もします。(勿論2018年当時の話ですが)

まるで現代のビッグモーター事件のようです。営業利益が全てであり、営業利益のためであれば部下を恫喝するのは当たり前、お客様に対して不正を働き、お客様に不利益を招くことは厭わない社風。

「かぼちゃの馬車」(サブリース)事件の被害者たちは、約一年間にわたり毎週のように スルガ銀行前でデモを行いました。マスコミも味方につけたこの事件は、100%の代物弁済を勝ち取ることになりました。(被害者にローンは残らない)

多額のローン返済を背負い、自己破産者や自殺者まで出した「かぼちゃの馬車事件」は、こうして幕を閉じました。

社員を恫喝して、無理やりにでも営業数字を追いかける社風の会社は、お客様を騙してでも数字を作り出す社員を作り出します。お客様の幸せよりも自分たちの数字を優先してしまうと、結局最後には自分たちの首を絞めることになります。

そこには働く喜びや誇りはあるのでしょうか。うーん(私もお客様を騙すことはないにしろ、数字へのプレッシャーは常につきまといます)

家族を養うために、どのような恫喝や叱責も我慢し、最後にはお客様を騙すことも厭わない人間へと陥ってしまうのだとすれば、日本の営業サラリーマンは本当に悲しい姿だなと思います。

そのような歯車の中に組み込まれてしまった日本のサラリーマンたちの姿が、いみじくもうつしだされた事件だったなあと思いました。