経済学者の安冨歩さんの本を読了致しました。


安冨さんには元東京大学教授という華々しい経歴があります。性別は男性ですが14年前の50歳から女性装を始めています。(女性装前のお写真)
(女性装後)

本書のなかで安冨さんは「自立とは依存先を沢山作ることだ」と説いていました。我々は自立とは他者への依存からの脱却であると考えがちです。しかしながら人は、なるべく人に依存しないようにしようと思えば思うほど、依存先が減ってしまい、どうしても最後に残ってしまった唯一の 依存先に頼らざるを得なくなります。これが絶対的な他者への従属になってしまうというのです。

DV男性から離れられなくなってしまった女性や危険な宗教、洗脳、各種の依存症、毒親への執着、ホスト依存など、依存先がひとつしかない人々が、唯一の他者に圧倒的に支配されてしまい、その従属支配から抜け出せなくなる構造とはこのことなのだなあと思いました。



ちなみに安冨氏はこんな風に述べておられます。

本文p31引用

私が簡単に支配された理由は、私が母親に対して 抱いている無意識の恐怖心を、配偶者によって徹底的に利用され、同じような恐怖心を抱くように操作されていたからです。母親に対する恐怖心が生じたのは基本的には愛されていなかったからです。


安冨氏は「母親や配偶者が愛したのは彼の優秀な頭脳や名声であり、私の全人格を受け入れることを拒絶され、常に何かを達成して初めて与えられる、条件付きの愛ばかりであった」と言っています。


そんな彼女たちに対して、他には依存先のなかった安冨氏は従属し囚われてしまったのです。(奥様とは離婚)


安冨氏は「親からの自立を果たすためには、 親以外の人への依存を獲得しなければなりません。自分より上に立つ人への依存ではなく、自分と対等に付き合ってくれる友達が何よりも大切です」と述べています。

しかしながら誰とでも仲良くしようとすればするほど、 自分を利用しようとする人と付き合う頻度が高くなるため、自分を本当に尊重をしてくれる人とだけ付き合うべきだとも言っています。


人から受け入れられた経験を持たない人は、出会った人の実像をありのままに捉えることができず、自分勝手な分類表に適当に当てはめ、(よくも悪くも )自分に都合の良い像を他人に押し付けてしまうそうです。

人の一部分だけをみて全体をみた気になり、「貴方は○○だよね」と勝手なる自分の尺度で批判する方は、人から受け入れられた経験がないということなのですね。そして こういうタイプの人々の特徴は、自分より弱い人を躊躇なく 攻撃し、自分より権力を持つものには 躊躇なく媚びへつらうのだそうです。


このような人に気に入られてしまうと、ひどく執着されてしまい、とことん利用されてしまいます。

拝み屋に執着されて、5億円をギャンブルに使い込まれてしまった辺見マリさんの YouTube は 衝撃でした。

東大の教授になるほどの明晰な頭脳を持ちながらも、母親にありのままを愛してもらえなかったという環境のせいで、母親と同じようにゆがんだ執着を持つ女性と結婚してしまった安冨さん。

「親から ありのままに愛される」ということが、その人の人生においてどれだけの大事な基盤となるのかを感じた、恐ろしい告白でした。