こちらの本を読了いたしました。

 

2023年の7月、刑法の一部改正により強制性交罪が不同意性交罪へと変更になりました。本書は長らく実父からの性加害を受け続けてきた潤さんが、自らの経験を告白し戦い続け、刑法改正の大きな足がかりとなった一冊です。


改正前に無理やりの性行為を犯罪として処罰するためには、加害者による暴行や脅迫があったことの証明をしなければなりませんでした。たとえ実父や通りすがりの強姦であっても、加害者が「相手が同意していたと誤解した」といえば、 故意がないとされ無罪になることが多かったのです。

しかしながら被害者は、明らかなる暴行や脅迫を受けなくても恐怖のあまり動けなかったり、相手との関係性で抵抗できなかったりすることがあります。

今回の刑法改正にあたり新法では、被害者が「同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態であった」と言えば不同意性交罪が成立となります。

 刑法改正前までは被害者が勇気を出して警察に行き、性被害を相談しても、加害者が無罪となるケースが後を絶ちませんでした。(裁判で有罪に持ち込める確証がなければ被害届の受理すらもしてもらえない)

しかしこれからは刑法改正により、性加害者には厳罰が下ることを祈ります。(最新ニュース)


この本の中で強く印象に残ったのは「トラウマ」という現象です。トラウマになるほどの「死ぬかもしれない」という危険な状況に遭遇した時に、人間も野生動物と同じように3つの防衛本能が起こるそうです。


1つ目は戦うこと。(勝てそうな時)


2つ目は逃げること。(負けそうな時)


そして3つ目がフリーズ(凍りつき)です。


この「フリーズ」は攻撃から生き残るための基本的な行為なのだそうです。


例えばサバンナでインパラ がチーターに襲われてしまった時には硬直して倒れ込むそうです。チーターに襲われ 引き裂かれている間に苦しまずにいられるように、痛覚や知覚などのすべての感覚を下げることにより、意識を氷つけるのです。

怖い気持ちが強すぎると人間は抵抗することもできずに凍りつきます。→ 改正前の刑法では、この状態に陥ってしまった被害者に対しても、暴行中に激しく抵抗したことの証明をしなければならなりませんでした。

凍りついた記憶や意識は「トラウマ」となり、被害者を長期間苦しめ続けることになります。

性暴力被害者が、その後性的な行動を繰り返すことがあるそうですが、 それはトラウマ的な状況を「再演」することにより、その時のことを乗り越えたいとする無意識の試みであるとも言えるそうです。

レイプ加害者の5~7割は、被害者の知り合いであり、性暴力を受けた人は受けてない人の10倍も自死する確率が高まるそうです。加害者が求めているものは優越や支配の感覚、甘えや依存、接触要求があるそうです。

人間はあまりに恐怖を感じると「心と身体がフリーズ」してしまい、痛みすら感じなくなってしまうという事実があることに大変驚きました。