こちらの本を読了致しました。

 

「語りかける中学数学」の著者高橋和夫氏と、元群馬大学教育学部教授の瀬山士郎氏、元少年院長の村尾博司氏の共著となります。


犯罪を犯し少年院に入院した少年たちの社会復帰を、少年院がどのように支えていくのか。少年院は罰を受ける場所ではなく、矯正教育を通して社会復帰への生きる力を与えていく場所であるそうです。


( 少年院は非行を行った少年に対しての更生のための矯正施設であり、これに対して少年刑務所は刑罰を執行することが第一の目的の刑事施設です。今回は少年院でのお話です)




今までの少年院では職業指導に力を入れていましたが、日本人の高校進学率が98%の今日においては、最低でも高卒の資格がないと職業の選択が大変限られたものになってしまうため、少年院での矯正教育によって高認資格を取らせる試みが始まっています。(2007年からは少年施設内にての高認試験に向けた対策講座のスタート、施設内での高認試験受験を可能に、2021年度からは通信制高校利用のモデル事業も始まりました)


少年院では職業指導をするとともに、矯正教育における教科指導へと重点を置き始めています。(少年院での教育期間は 11ヶ月が基本)


職業指導

教科指導


著者の高橋和夫先生と瀬山士郎先生は「学力は生きる力である」との信念のもと、少年院で数学を教えておられます。格差社会において学歴がないと、どんなに一生懸命働いてもワーキングプアーとして、お給料が生活保護より低くなってしまう現状があり、社会に彼らを受け入れてもらうためにも、少年院での矯正教育に意義を感じておられます。


少年院に入院時の少年たちの学力は(12才~20才まで)、 小学2年生以下が約28%、小学4年生以下が70%強、そして90%が小学6年生以下の学力です。少年院入院者の最終学歴は中学卒業である割合が高いのです。

犯罪を犯した未成年に懲罰を与えるのではなく、矯正教育により更生させ、もう一度社会へと送り出していくということ。彼らたちが失った自己効力感や自尊感情を取り戻させ、自分の犯した罪に向き合い、もう一度社会の一員としての自立を促していくということ。

少年院の院長先生だった村尾氏は、「性格」とは生まれつきの遺伝的なものなのに対し、「人格」は 環境に影響を 受けるとともに教育によって形作られると述べています。

本書P233引用

矯正教育の目的は、歪んでしまった人格を修正するとともに、共感性や受容性を含んだ人間性を回復することにあるともいえ、端的には、全人格教育なのです。


村尾氏は少年院では「親に代わって厳しく育て直しをする」と表現しています。少年院は非行少年たちの人格教育を行う場所なのです。


重罪を犯した少年に対しての処遇は「厳罰と教育」のどちらを与えるべきなのか。「矯正教育」により、少年は本当に更生できるのか。


もう少し、少年法についての他の書物も読み進めていきたいと思っています。