こちらの本は2023年の11月に刊行された、ファイナンシャルプランナーの加藤梨里さんによる新刊です。

 

「世帯年収1000万円」は、ひとむかし前であれば「高収入」とみなされ、憧れの対象でありました。今でもハイスペック狙いの婚活女子が虎視眈々と狙う高収入男子の年収でもあります。


さてそんな「世帯年収1000万円」とはどのような暮らしなのでしょうか。「年収1000万円の男性」と結婚が出来たならば、「専業主婦・子供は私立・タワマン・年1の海外旅行」は本当に可能なのでしょうか。


額面年収が1000万円ということは、手取りにすると700~750万円ほどです。ファイナンシャルプランナーの加藤さんが「世帯年収1000万円」で、実際にはどのような暮らしができるのかを検証してみせた一冊となります。


①東京の住居費用の相場

住宅の不動産価格の全国平均はこの10年余りで4割上昇し、マンションにおいては約2倍にも達したそうです。 中でも 東京は高騰が激しく、東京都心6区の中古マンションの平均価格は70平方メートル(3LDK)あたり平均1億円を超えているそうです。(首都圏の新築マンションの平均価格は1億4360万円・2023年)



10年前であれば 年収2000万円ないと買えなかった「億ション」も 今は年収1200~1300万円あればローンを組むことができるそうです。とはいえ1億円レベルの物件を購入するのは世帯年収が2000万円以上のケースが中心なことは間違いありません。

世帯年収1000万円における手取り月収は月額約63万円です。住宅購入における借入額が5000万円だった場合の返済額は、固定金利で毎月16万5000円ほどとなります。都心から離れる、築古にする、広さを妥協するなどの工夫を凝らし、借入額を5000万円ほどに抑えるのが堅実なラインだそうです。

ちなみに 賃貸においても、都心近くの家族4人で住める物件だと賃料20万円を切ることはなかなかないそうです。


②教育費用
日本の子どもの出生数は、1974年頃の第二次ベビーブーム期に210万人だったのに対し(現在の50才)、2022年には80万人弱となりました。(当時の60%以上のダウン)

このような中において、東京23区では私立中学に進学する子供の割合は19.4%です。

私立中高一貫校の子供1人につきかかる年間費用の合計平均額は132万円となり、月々11万円となるそうです。(2人なら22万円)

大学生が一人暮らしをした際の1ヶ月にかかる費用は平均約12万円となり、国公立大学だとしても 一人暮らしであれば平均で16万円ほどかかります(生活費+学費)。これは親元から通う私立大学生にかかるお金と変わり有りません。


よって学費のピークである大学生の子供が2人いる状態では、平均で32万円/月ほどかかる計算となります。


世帯年収1000万円(手取り月収63万円)の中から毎月の家賃の20万円を払い、中高一貫校の学費2人分22万円を払えば、残るお金は11万円です。ここから光熱費や保険代、車の費用に食費までを賄おうとすれば、世帯収入 1000万円の生活でも、かなり窮してしまう現実がみえてきます。


以下は年収が1000万円の会社員夫と専業主婦、子供2人(ふたりとも中高大と私立)、 夫の退職金2000万円(企業年金年間+60万円)、マンションローン 5000万円、マイカー有りとした際のシュミレーションです。


以下の図表は本書p149より



夫1馬力における世帯年収1000万円では、子供2人を中学校から私立に進学させると、子供2人の大学進学資金も夫婦の老後資金も不足し、ライフプランの実現がほぼ不可能であるという結果になりました。

よって 早い段階でマイカーを手放す、塾代や生活費を削減し、奥様が25才から65歳まで年収103万円をキープする(アルバイトをする)などの対策をとれば、実現は可能となってくるようです。


あなどれし、妻のパート代金。

更に妻が正社員で働けば、同じ「世帯年収1000万円」であっても退職金がダブル、厚生年金もダブルとなりさらに安定感がでます。

著者の加藤さんは現代の「年収1000万円」は、税と社会保証料の負担増、不動産価格の高騰、物価の上昇、教育費の高騰などから、ごく基本的な生活には事欠かないレベルであっても、「勝ち組」というイメージは虚像に過ぎないと述べています。

「夫の年収が1000万円の奥様たちは、私立中学や住宅ローン、老後資金までを考えれば、パートに出て働くほうが賢明です」という、加藤さんのアドバイスとなりました。

よって婚活女子たちが抱く「アッパーな暮らし」には、たとえ年収1000万円あろうとも手が届かないという結論となります。豪華な生活にはお金がかかりますね。地に足をつけた生活を心がけたいものです。ネガティブ