こちらの本を読了致しました。照れ


著書は発達障害の臨床研究などを主な研究分野としておられる、医学博士の岩波明教授です。


「天才と発達障害」・・ 天才たちの能力は何らかの発達障害や精神疾患と結びついていることが珍しくない。

P5引用

真の天才とは優等生ではなく、不穏分子である。彼らは一般的な社会生活に馴染めずに、孤立しやすい。


天才たちの言動は常識からかけ離れていることが多く、常人の理解が及ばない危険なものに見える。


〈通常からかけ離れた 天才たちの行動〉

フレディマーキュリー・・ 過剰集中と途方もない浪費癖

エリッククランプトン・・薬物中毒

ダーウィン(種の起源)・・ 社会性の欠如とこだわりの強さ。生活のリズムが少し狂うだけで彼の体調は悪化した。


テネシーウィリアムズ・・ うつ病や精神病院への入院

野口英世・・ 過剰集中と途方もない浪費癖

モーツァルト・・傲慢、過剰集中、浪費癖(ギャンブル)

マークトウェイン(トム・ソーヤの冒険作者)・・ 株の失敗による破産、浪費癖

黒柳徹子・・担任から「おたくのお嬢さんがいるとクラス中の迷惑になります。よその学校にお連れください」と言われ、小学校を1年生で退学となった。

さくらももこ・・ 不注意・ 授業中の物思い・ 片付けが苦手

水木しげる・・ 幼児期の言葉の遅れのため、知的障害者と思われ小学校は1年遅れで退学。就職先では何をするかわからない危険人物として扱われた。

アインシュタイン・・ 7歳頃まで言葉をスムーズに話せずにオウム返しをすることから、先生達からは知的障害者と考えられていた

江戸川乱歩・・ 一人で思索する傾向が強く、いじめられっ子で不登校であった。社会人になっても孤立癖、放浪癖は変わらず10以上の職業を転々とし40回以上の転居を繰り返した。

ちなみに知能テストの原型を作成した米国のターマン氏の研究によると、知能テストにおける「高い知能を持つ子供たち」は、大人になると健康で経済的にも社会的にも成功したものの、目覚ましい「創造性」を示した例はごくわずかであったそうです。( 長期追跡が可能であった高IQ児童757例の中で、創造的な分野で成功した人物は 3人のみ)


米国精神科医であるアンドレアセンの研究によると、 創造性と強く関係のあった項目は精神疾患であったそうです。(画像本書より)

これまでの医学的な研究においては、うつ病、躁うつ病、 統合失調症と創造性に一定の関連があることが示されています。


〈精神疾患と天才〉
ケイト・スペード(ファッションデザイナー)・・ うつ病と不安障害

英国首相チャーチル・・ 躁うつ病
アメリカ大統領 フランクリン・ルーズベルト・・うつ病

ヘミングウェイ・・ 被害妄想、うつ病により自宅で猟銃自殺

テネシーウィリアムズ(欲望という名の電車)・・ 対人恐怖症、パニック障害、酒や薬の過剰摂取、うつ病

ヴィヴィアンリー(女優)・・ 不安障害、攻撃性、うつ病

夏目漱石・・ うつ病、 精神疾患
芥川龍之介・・ 母親は統合失調症。本人不眠症、精神疾患、睡眠薬による自殺。
中島らも・・ 躁鬱病。
中原中也・・ 幻覚と被害妄想( 統合失調症)
サリンジャー(ライ麦畑でつかまえて)統合失調症
ドストエフスキー・・ギャンブル依存症

アンドレアセンが作家を対象にした研究で示したように、 創造的な仕事と躁うつ病との関連が大きいことが指摘されています。


P220

天才は一般社会において「異物」と認識されやすい。なぜなら彼らの言動は常識からかけ離れているため、「普通」の人々にとっては理解の及ばない危険なものに移るからである。


日本は「常識から外れた人」は、 どれだけの優れた能力を持っていたとしても 非難されやすい国だと思います。天才とは「不合理で非倫理的で自己破壊的な行動を取りうる存在」であるのだとすれば、周りの人間は相当の忍耐と理解と犠牲を差し出さなければなりません。



例えば日本でも天才「玉置浩二」さんは統合失調症を患っていたことを告白しています。奥様である 青田典子さんが語る玉置氏の「とんでも エピソード」(金銭感覚のなさ、こだわり、衝動姓、周りの目を気にしない、繊細さ)などは上記の天才たちに通じるものがあり、夫の天才性と狂気を理解した上で支え続けている典子さんには愛を感じます。


「天才」とは本人も周りも本当に大変なことなのだなあと 感じた一冊でした。