精神科医でおられる岡田尊司の「シック・マザー」より、愛着障害について綴ります。

シック・マザーにより、成長過程期において充分な愛情を受けることができなかった子供は、情緒障害や行動障害を起こしやすくなります。
~ 発達障害と愛着障害の違い~
「発達障害」・・ 遺伝的な要因を含む生物学的な基盤による神経発達の障害(親からの遺伝要因が7~9割)
「愛着障害」・・ 養育環境の要因が非常に大きい( 愛着障害の遺伝関与は25%、環境要因の関与は75%)
P47引用
症状や検査で見分けがつきにくい以上、あえて愛着障害だと診断するよりも、発達障害と診断した方が、弱っている親をさらに苦しめないで済む。その結果、発達障害という診断が、実態以上に量産されることにもなり、子供は事実を正確に反映していない診断名をつけられることにもなった。
「親の愛情」に起因する子供の問題行動が、「子供の発達障害」と誤診されているケースがあります。
例えば養護施設の子供の半数近くに「発達・知的障害」の診断がなされ、3割の子供が ADHD の薬を飲んでいるそうですが、親からの十分な愛情を受けることができなかった子供が 精神的な SOS を出しているのに、発達障害と誤診し、薬を処方して大人しくさせてしまう施設の現状が浮かび上がってきます。
子どもの困った問題行動の原因が「大人からの愛情不足」であるケースにおいても、「発達障害が原因」とされてしまうということです。
P55
愛着が障害されると、基本的安心感や信頼感がもてないため、常にオドオドしたり、相手を信じられなかったり、 対人関係が不安定になったりしやすい。また、認知、行動、情緒、社会性の発達においても様々な困難を生じやすい
母親が鬱や統合失調症などのシック・マザー状態になると、子供の求めているものを敏感に感じ取る「感受性」や、子供の言葉や動作に対して素早く愛情豊かに応える「応答性」が低下してしまいます。
母親との愛着システムが安定せず、愛情タンクの不足を補うために、子供は大人になっても何らかの依存状態に陥ってしまうのだそうです。
各種の依存症は、子供時代の「寂しさ」から来るのですね。
また、セロトニン・トランスポーター遺伝子の配列により、生まれつきネガティブな扁桃体の活動が活発で、ストレスホルモンの放出が多いタイプの人がいて、そのような遺伝子を持つ人は鬱病になりやすいのだそうです。(魚にも、天敵から身を守るための扁桃体による防衛システムがあるそうです)
鬱になりやすい母親は、否定的な認知や感情的になりやすい傾向があり、その子供もその気質を共有することが多く、環境的な要因と遺伝的な要因の両方で不利な条件が揃いやすくなるリスクがあります。
とかく否定されがちな「不安感」の高い鬱病気質タイプですが、「恐怖や不安を感じやすい」というメリットがあったからこそ、人類は発展してきたのだし、これらの条件は決して 排除されるべき条件ではないのですが。
「恐怖の感知」は、600万年ともいわれる人類の狩猟民族時代においては一番重要なファクターであったと思われますが、何かとストレスの多い現代においては、「不安の過剰過ぎる感知」が鬱病を招きやすいのだと思います(私見です)。
人間があまりにも恐怖に晒され、常にストレスを受け続けると、未来に対する期待値が低くなり、世界を恐ろしいものと認識してしまい、自分から助けを求めることもできなくなるそうです。自分の意思や願望すらも価値のないものとなります。(昨日読了した「引きこもりの方々」もこのパターンでした)
P167
自分の傷つきや苦しさゆえに、子供を愛せない母親、それがシックマザーの本質的な病理なのかもしれない。
次回は 本書に書かれていたことで、とても共感した部分があったので綴ってみたいと思います。





