
本書のなかで「精神障害のある親を持つ子供」の実態にふれた記事がありました。私も日々 家事や育児をするなかで、毎日の家事労働(食材の買い物やご飯作り、洗濯に部屋の掃除、子育て)を、母親として充分に こなしていくには、かなりの気力や体力が 必要となるなぁと感じています。
そのような中で精神的に大変な状況( 統合失調症・うつ病・双極性障害・強迫性障害・パーソナリティ障害など)に陥ってしまい、満足な家事や子育てに 気力や時間を割けないお母様達が沢山おられるのではないかと思いました。
本書P117引用
精神障がいの症状は、独り言を言いながら徘徊したり、 一日中寝てばかりいたり、子供の目から見ても何かおかしいと感じることが多いです。それなのに誰も何も説明してくれない。中略
親に精神障害がある場合、子供の要求を敏感に感じ取る感受性や、要求に対して素早く愛情豊かに応える応答性が低下するため、子供は親から受け入れられたという感覚を保ちにくくなります。そうした子供は「私が悪い子だから」と自分を責めてみたり、親の期待に添うような「よい子」になろうとして、親の顔色を伺いながら自分の希望や感情を押し込めたりして生活することになります。そうした生活がずっと続くと、子供は自分が何をしたいのか、どうありたいのかがわからない状態になってしまいます。
母親が精神障害に陥ってしまった時、家庭という密室の中で「家族の困難」が蓋をされている現状が浮かび上がります。子育てや家事のケアをしてくれる大人がいない中で、子供が母親に変わり 母親のフォローや家事を担わなければならなくなります。
母親が精神疾患に陥ったがために「母親の愛情を十分に感じることができない」 環境にある子どもたちが、「更に心の問題を抱えてしまう」という環境連鎖の恐ろしさを感じました。そういうお母さん達に向けて何か支援があればいいのだけれど。「お母さんにとっては精一杯」な対応であっても、子供には不安を与えてしまう状況が「家庭の責任」として放置されています。(母親が自分の状況を子供たちに的確に伝えたり、支援と繋がっている場合には子供が 抱える不安はかなり軽減されるそうです)
また、著者の坂爪氏が発起人となって始めた「風テラス」( 性風俗で働く女性たちを対象にした無料の生活法律相談サービス)には、風俗の激安店(数千円で遊べる超低価格の風俗店) で働く女性たちについても紹介されていました。
P195引用
激安店に集まる女性達は、年齢や体型、性格などに問題があるため、他の店の面接で不採用になった人たちが大半を占めています。そしてその中には、精神障害や発達障がい、軽度知的障害を抱えた女性たちが少なからず存在しています。
様々な本を読ませていただくたびに思うのですが、「なぜ 彼女たちは障がいがあっても福祉サービスに頼らず、過酷な性風俗を選ぶのか」ということです。それに対し作家の岩井志麻子さんは こう答えています。
( YouTube より抜粋)
岩井志麻子「 我々は通常 真面目に仕事をして暮らすことが幸せだと思っているけれど、そういう暮らしこそ彼女はしたくないんじゃないかなと。 パッと稼いでパッとホストクラブへ行って、 "可愛い可愛い"と言われて、刹那な快楽に生きるほうが 彼女は幸せなんだろうなと。むしろ彼女にとっては 地味に地道に生きるなんて生き地獄なんじゃない?と。彼女はその生き方を道として選んでいるわけですから、きっと" 私はすっごいイケてます後悔ナシ"って 言うんだろうなと」
著者の坂爪真吾さんは「性産業で働く女性障害者」の問題は、生活保護や障害年金といった制度との繋がりだけではなく、「人とのつながり」が 困難であるケースが多いと指摘していました。( 他者とのコミュニケーションをとることが困難で、支援者を攻撃してしまうため、 他者や社会と繋がりにくい 存在となってしまう)
障がいのために一般企業に就職することが困難な女性が、 障がいを抱えながら最低賃金以上のお金を稼ぐことができる、ほぼ唯一の仕事が性風俗である(p197)とした時に、「福祉につながること」よりも「 自分で稼いで自由にお金を使いたい・自立したい」という道を選ぶ女性たちがいるということを踏まえ、性風俗と同等に稼げる仕事の選択肢が社会に用意されていない現状が指摘されています。