「この顔と生きるということ」を読みました。



朝日新聞記者の岩井建樹さんの長男、択都くんは顔面右側に表情筋の不形成があります。岩井さんは NPO法人「マイフェイス・マイスタイル」( 普通とは違う外見の人たちが生きづらさを感じたり、差別を受けたりすることを「見た目問題」と名付け、解決に向けて活動する団体)で取材をし、本を書きました。

本書で紹介されたアルビノの方々↓
「 生きづらさの海に溺れてしまいそうだよ」
アルビノ 神原由佳さんの Twitter より。

神原さんは就職活動において、「お客様にアルビノについて毎回説明するわけにはいかない」という理由で 就業が叶わなかったそうです。しかし、髪を黒く染めるという選択は自分自身を否定してしまうようで出来なかったそうです。

P4引用
見た目に疾患を抱える人たちが、学校でいじめにあったり、恋愛に踏み出せなかったり、就職で差別を受けたりしている実情を伺いました。そして、生命の危機も治療の緊急性もないことから問題が過小評価され、社会的に放置されている現実を知りました。

岩井建樹さんと本書登場の方々。

P6引用
当事者たちは具体的にどんな困難に直面し、そしてその現実にどのように対処しているのか、 そして彼ら・彼女らは幸せを掴むことができているのか、知りたい。

「今は男性でも化粧水をしたりメイクをする時代だそうです。就職の面接でも外見が重視されるそうですから」 これはつい先日、お店の男性メンバーから聞いた話です。

 現代は「外見で選別される時代であり、 見た目が一定の水準でないと人として低い評価しか受けられない恐れがある」と、 駒沢女子大学の石田かおり教授が指摘しています。

P35引用
それまで、私の生きづらさの原因は私に髪の毛がないことだと考えていました。つまり、問題は自分自身にあると思い込んでいたのです。でも、障害学の視点から考えると、 脱毛症の女性の生きづらさの原因は、髪の毛がないことそのものではなく、女性に髪の毛がないことをタブー視し、 隠すべきだと求める社会の側にあることを知りました。

P43
必要な地獄だったと、学校生活を振り返る男性がいます。 千葉県の三橋雅史さん。「お前みたいな顔のやつは自殺するでしょ、普通」 と言われました。思春期に、こんなことを言われたら精神的に潰れてしまいますよね。早稲田大学入学後のボランティアサークルで、 仲間が親しく接してくれたおかげで、自分は「おはよう」と言われるのに値する人間なんだと肯定できるようになりました。

三橋さんは現在、公務員として福祉の仕事に携わっています。

「見た目の困難」を抱え、生きづらさを余儀なくされる人々がいます。外見への差別を跳ね返して生きていく人々もいれば、差別に押しつぶされて 家から出られなくなってしまう人もいます。 作者の岩井建樹さんは 息子さんの外見をきっかけとして この問題と向き合ってこられました。当事者(当人や家族)でない限りは、自分事として真剣に向き合うことは難しいかもしれませんが、そのような差別と闘っておられる方々がいるということ。

普段「美しさ」を提供する仕事につき、営業職採用の際にも見た目は重視されていると思います。(実際、売れるお店には美男美女を配置する傾向があると感じています)

私たちは日常において障害や困難がある方々と、あまりに「住みわけ」された世界にいるのではないか。だって私のまわりには、恵まれた人々(経済力やコミュニケーション能力、美しい外見など)が大半なのだから。(高額な呉服を誂えることが出来るという時点で、恵まれた人々の世界であると思います)

もしかして世界は、分断されていやしないだろうか。

作者の岩井建樹さんも、朝日新聞記者という恵まれた立場から、いきなり「当事者の親」としての「生きる困難」を見つめざるを得なくなったことへの動揺が描かれています。

「見た目の困難」を抱える当事者の方々と実際にお話をする機会がほとんどない日常において、本書より当事者の方々のお声を聞くチャンスを いただけたことを感謝します。本書が当事者の方々に希望を与え、当事者以外の方々の気付きとなることを祈ります。

つづく