「女には、見えない身分制度がある」(by 小倉千加子)


(以下青字は引用)
P48 結婚した女には、三つの身分がある。
夫の稼ぎで十分食べられる女、妻も働かなければ食べられない女、妻が夫を養う女である。 結婚の勝ち組は、言うまでもなく、夫の稼ぎにおんぶする女であるが、最後の「夫」を養う女が、必ずしも負け組とは単純に言えないところに三つの身分の不思議なバランスがある。

中略

女性問題は、階層問題に取って代わられ、高階層にいるフェミニストが、全ての女に「結婚しても働き続けよ」と叱咤激励する資格は何もない。 誰もが、意味のある、自己実現のできる仕事なら、したいのだ。そうではなくただの「お金のための労働」なら、そんな労働はしたくない。 普通の女子学生たちはそう考える。

「結婚後お金のための労働はしたくない。自己実現のできる仕事ならしたいけど」(by 女子学生)

「自分の母親のような家事とパート労働の両立なんてしたくない。夫の収入だけで食べていける相手を探したい」(by 女子学生)

わかるぅ。わかりすぎるぅ。

P51(以下は概要) 
結婚したいという未婚女性には四つのコースが待ち受けている。
① 夫婦共働き 「両立コース」

② 子育てが終わった後にまた働き始める「 夫に家族の扶養を一時的に任せるコース」

③ 最初から最後まで夫に依存的な専業主婦「永久就職コース」

最近ではこれらの他に、子育ての後は家庭の補助のためではなく「自己実現」のための仕事をする「依存+自己実現コース」ができた

この自己実現コースは、「 保育園や学童に子供を入れるのは可哀想だから家にいてあげたい」が、「 いつまでも家庭にいて社会と繋がらな生き方は嫌」「 常に女性として輝いていたい」「 自分の才能を活かして社会に認められたい」という欲求を全て 満たしてくれるミラクルコースなのである。(by 小倉千加子)

( 雑誌STORY最新号より)

今こそ"お母さんじゃない私"を追求。「子育て中は子育てに専念しながら お母さんじゃない私も楽しみつつ、子育てが一段落した後は 自己実現に向かって羽ばたきたい」

( 雑誌STORY最新号より)

Q.子供の手が離れたあと、何がしたいですか?

「 子供の手が離れたら仕事をしたい。今まで勉強してきたことを実際に行動に移してキャリアアップしたい」

↑これが現代のSTORY最新号でのテーマですが、20年前の雑誌STORYにも、そんな夢を実現したインストラクターたちが登場しています。 フラワーアレンジメント( 月収10万)、 エアロビインストラクター( 月収14万)、 カラーアナリスト(年収100万)、 紅茶アドバイザー(月収3万)。 皆さん スクールでの勉強に何百万円もの投資をし、生徒さんに満足して頂けるようにと自腹を切り続けています。

P99
ここから、そんな割の合わない仕事なら、インストラクターをやめればいいのにと考えるのは、貧乏人いや普通人の発想だ。 そういう人には「STORY」を読み解く資格がない。彼女たちは実はこう言っているのだ。「収支を度外視できる主婦だけが人にものを教えられるの」「 私の境遇だから、やればやるだけお金が出ていくような仕事を続けられるのよ」

働いて家計費を稼がなければならない二等主婦の上に、 働かなくても青山でお洋服を買って消費できる一等主婦がいる。さらにその上に、働くことにお金を消費することが許される特等専業主婦がいるのである。消費としての労働の登場だ。専業主婦の階層化ここに極まれりである。

(雑誌STORY 最新号表紙)


「お母さんじゃない私」としての自己実現への最上階層には、「 働くことにお金をつぎ込める」 特等専業主婦の存在があった。現代も20年前も変わらずに「夢を実現する」キラキラ主婦達。

どっしぇぇぇ!!


たしかに そんな人おるわ。茶道の先生とか。生徒さんのわずかなお月謝で、毎回あれだけのお道具を用意してみせることは不可能だもの。 私が習いに行っていた紅茶教室の先生だって、高級食器を博物館で展示したり、一等地に土地を買い新しく買って紅茶屋さんをオープンさせたりしてたもの。あんなこと、月謝ではまかないきれない。


彼女達は趣味の仕事にお金をつぎ込める、最強カーストの主婦達なのね。



今月のSTORY最新号では、「ありのまま」を求めて第二の新しい人生を切り開いている女性達の特集が組まれています。「捨て活」なるものをテーマにして。

雑誌STORY最新号より
~ 元 NHK キャスター 梶浦明日香さん。 NHK キャスターの 仕事を捨てて 伝統工芸の世界へ ~

P271 何歳とかこだわらず挑戦して欲しいです。 できないこととかやれないことがたくさんあるけどそれは年齢のせいではないと思います。お子さんが小さい時はセーブして、ある程度手が離れたら頑張って、など自分のペースでやって欲しいです。そのような夢中になれるものを皆さんも見つけてもらいたいと思います。そのままの、ありのままの自分で暮らせる幸せを感じています。

拝啓、小倉千加子さま。

15年前に貴方が言い当てたSTORY的世界観は、今も時代の先端にありました。 「専業主婦としての保証された年収、労働からの解放、 豊富な余暇時間」を利用して「ありのまま」の自己実現を 勝ち取った「 生活の心配などいらない」特等主婦たち。彼女たちは 子育てを終えた後に、生活の心配なくして「 好きな仕事」に打ち込んでいきます。

私もそんな生活を夢見ています。一生懸命に仕事をして 生涯安心な年金額を手に入れたならば、その後はお金にならない仕事をしてみたい。人の役に立つような、自分の心が喜ぶ仕事をしてみたい。私が彼女たちのような特権階級になるには あと30年もかかるけれど、これが悲しいかな彼女達と庶民である私とのタイムラグでありましょう。

主婦としての子育てが一段落した後に「やればやるだけお金が出ていくような仕事」にすぐに携われる主婦たちがいるということ。そんな 特権階級層がSTORYにはいたなんて。「必死に働いてじっと手を見るしかない」労働者階級としての我が身との差に、あっけにとられて言葉がありません。敬具