「考えながら車を運転するのはだめよ」

「脇見をするのはなおいけない」

かって、この道を通りながら

笑顔であなたはそういった

 

花が咲いていた

朝陽のまぶしい渚を手をつないで歩きながら

あなたははまごうの紫の花束を右手にかざし

軽くハミングしていた

 

「キスしてもいいかい?」

「いいわよ」

あなたは目を閉じ両手を下げて

僕を待った

 

「ねえ、すっごく美味しいのね」

「なにが?」

「ふふ、あなたよ」

あの夜、僕たちは朝まで抱きあっていたっけ

 

フィジカル・プラトニック・フィジカル・・・・・・

一枝の葉を

そう唱えながらむしっていくと

最後にはどっちの葉が残るか僕とあなたは

相反する主張をし続けてきた

最後に残った一枚の葉っぱには

裏と表があったのに

 

つらい出来事は消えてしまって

ただ、楽しかった思い出だけが残り

今はなぜ別れてしまったのか定かではない

ついこの間の事だけど

 

かってあなたと来た時

はまごうの花が咲いていた渚近くには

今はコスモスが限りなく咲いている

渚に佇めば夏の煌めきはなく

かげろうの様に揺れては消えた

男と女のささやかな記憶を

四色の花弁のひとひら、ひとひらにこめて

思い出の夏は去り

冷たい秋の大気が

ものみなすべてを

包み始めていた

 

(下の花は浜ヒルガオではまごうではありません)

(下2枚ははまごうです)