【日経】衆院選での与党大敗を受け、西九州新幹線の博多駅(福岡市)までの延伸を巡る国と佐賀県の協議継続に黄信号が点滅している。県内の延伸区間について、東海道新幹線のように専用軌道を走る「フル規格」化を訴えていた自民党議員や候補の引退・落選が相次いだためだ。石破茂政権の取り組みも未知数で、先行きに不透明感が強まっている。

「西九州新幹線を国の大動脈である整備新幹線網につなげなければ意味はない。佐賀県西部の観光資源の活用も含め、県経済の活性化にはフル規格での新幹線延伸が不可欠だ」

国鉄(現JR)出身で、新幹線の整備方針を議論する与党検討委員会(PT)のメンバーを務めた自民党の今村雅弘・前衆院議員(比例九州)はこう強調する。定年制などの党の内規により今回の比例名簿に載らなかったことから10月9日の解散に伴い、28年間つけていた議員バッジを外した。

 

自民党は小選挙区でも岩田和親、古川康の両氏が敗れた。2人とも辛くも比例復活を果たしたものの、鹿島市出身の今村氏の引退により佐賀の衆院議員は3人から2人に減った。

 

今村氏は、フル規格推進派議員の筆頭だった。自身の後継者について「本来であれば(前県知事で)経緯を熟知する古川議員のはずだが、国会議員になってからは積極的に関わろうとしない」と嘆く。

長崎でも、推進派だった自民の谷川弥一氏が派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題を受けて辞職。「新幹線の全線フル規格化」を掲げて総選挙に挑んだ自民の新人候補も落選するなど、両県の推進派に勢いはない。

西九州新幹線は長崎市と博多を結ぶ計画で、このうち長崎駅―武雄温泉駅(佐賀県武雄市)間が22年9月に開業した。そこから先の博多方面へとつながる佐賀県内の整備方針やルートは今もなお定まっていない。

古川県政時代、国と佐賀県は武雄温泉―新鳥栖(同県鳥栖市)間について、車輪の幅を変えて新幹線と在来線の両方の軌道を走行できるフリーゲージトレイン(FGT)による整備を進める方針で合意していた。

だが、14年の衆院選に出馬するために古川氏が知事職を辞した後、国は耐久性などの理由でFGTの導入を断念。全線フル規格で整備する方針にかじを切った。

フル規格となれば、既に長崎県境から武雄温泉駅までの整備費として200億円を負担している佐賀県に、その何倍もの財政負担が降りかかることになる。佐賀県の山口祥義知事は「FGTでの整備を前提としていた合意内容と異なる。約束にない追加負担は到底、受け入れられない」と反発。18年以降、延伸に向けた協議は膠着したままだ。

今回の衆院選の小選挙区で勝利した立憲民主党の原口一博、大串博志両氏はいずれも、国やJR九州が推すフル規格による整備には反対の姿勢だ。両氏とも、新幹線整備に伴う並行在来線沿線の問題や佐賀県の財政負担問題について、国が責任を持って方針を示すべきだとしている。

比例復活を果たした自民の2議員も、選挙戦ではフル規格化実現への積極姿勢は見られなかった。岩田氏は「全線フル規格での整備を目指すべきだ」と主張するが、街頭演説などで最重点課題として訴えたのはエネルギーの安定供給と食料安全保障の実現だった。

国土交通政務官を務めた経験もある古川氏は「県と国の協議の進展を望みつつ、複合的課題に結論を出す必要がある」とし、具体的に踏み込む様子はない。関心事はもっぱら防災や地方創生だ。

9月の党総裁選後、「鉄道好き」で知られる石破首相と、与党PTの委員長を務めるなど西九州新幹線問題にも精通する森山裕幹事長のコンビが誕生。膠着していた協議の進展を期待する見方もあった。

その後の総選挙の大敗によって政権の枠組みも含め、重点政策の位置づけや取り組みなど先行きは不透明となっている。次回の佐賀県と国の協議も開催時期の見通しが立っていない。

「フル規格化どころか、西九州新幹線問題がこのまま忘れ去られてしまうのではないか」。県内の自民党関係者からは、そんな不安の声が聞こえてくる。

選挙コンサルタント・政治アナリスト 大濱崎卓真さん

共同通信も、終盤情勢で与党の過半数割れを予想するなど、徐々に与党の劣勢が伝わってきました。これらの数字は、自民党が非公認候補の支部に2000万円を「活動費」と説明して渡していた報道について反映されていませんから、投票日に向けて更に厳しい形になると思われます。 今回の期日前投票は出足が遅いことから、有権者が選挙戦全体の情勢や内容を見極めて、選挙戦最終盤や投票日当日に投票に傾向となることが予想されます。これらの情勢報道が若い世代には影響を与えるとみられ、与党が更に崩れるような厳しい展開も十分あり得るでしょう。

 

 【毎日調査】推定獲得議席は自民が171~225。立憲は126~177。日本維新の会(公示前43議席)は29~40、公明(公示前32議席)は23~29、共産党(公示前10議席)は7~9、国民民主党(公示前7議席)は23~29、れいわ新選組(公示前3議席)は6~7、社民党(公示前1議席)は1、参政党(公示前1議席)は0~1、諸派は1~6、無所属(公示前14議席)は10~17。