野外の行動訓練は、灯りがこうこうと照っている明るい場所を歩くわけではないので、半分どこを歩いているか分かりません。疲れてくるし、眠くなるし腹は減ってくるわで、歩きながら段々腹を立てる隊員も現れます。一番思い出に残っているのは、一晩休まずに歩いて気が付いたら「最初の出発点から、いくらも離れていない場所にいた」という体験です。

よく、山の中で迷ったら「同じところをぐるぐる回っていた」と言うような話を聞きますが、それは事実です。その原因は、平坦な地形なら真っ直ぐに歩けますが、地形に偏りがあると自然と「偏った方向に自然と進んでいる」ということで、「一晩歩いても、最初の出発地点とさほど違わない場所にいた」ということはあり得るという訳です。

そう考えたら、(例えば登山などで)山中で迷ったら「じっと待つ」ということが大事です。・・・そして明るくなったら高いところに登る。そして、そこで待つようにしたら(状況により)救援のヘリコプターが飛んで来てくれるかも知れません。

過去に、北海道のある高い山で登山者が行方不明になりました。彼は単独で山登りを行っていましたが、途中で道に迷ったのです。・・・そこで、余計な動きを止めて、その日はゆっくり休み、次の日に高台にいたところをヘリコプターに救援されるということが、実際に起こったことです。
不安になって、うろうろすると体力は消耗するし、ますます道に迷います。私の場合、山の怖さを知っているので、山登りは一切しませんが山を軽く見て行動すると、とんだひっぺ返しを受けることになるのです。

最初の地図判読に失敗すると、目的地から段々離れて行くことになります。それでも、教官・助教はすぐには教えてくれません。
何時間も歩いてから、停止させられ指導を受けることになります。大体休憩は、1時間に一回約10分程度です。・・・そこで気をつけなければいけないのは、身につけている装具を落とすとか忘れてくる事です。

訓練中のレンジャー隊員は、持ち物全てに脱落防止を付けます。装具を落としたり忘れたりしたら、取りに帰らなければいけません。懐中電灯を照らして捜索するわけにもいかないので、兎に角落としそうなものには脱落防止ということで、紐などで落ちないように縛っておきます。

道なき山道を、何時間も歩いたら眠くなるし休憩したくなります。1時間に一度休憩したり、進路が本当に正しいか確認のために休憩したりします。
そんな時、思わず寝てしまう隊員がいます。その隊員を起こして、上に立つ班長は自分の手を使って部下の隊員の装具があるかどうかを点検します。全ての隊員の、装具点検が終わった時点で出発になるのです。
(つづく)