この度の農林中金の巨額損失は、(可能性として)米国債など世界の信用市場に大きな影響を与えるのではと懸念されていることは間違いありません。
何より、額が大きいからです。

農林中金は、これまで「農協の打ち出の小槌」と言われてきた金融機関です。・・・農林水産業者の協同組織等の資金を一手に引き受けるヘッジファンドとして、国際金融の場で活躍してきたからです。

因みに、ヘッジファンドとは「さまざまな取引手法を駆使して市場が上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンドです。ヘッジ(hedge)は直訳すると「避ける」という意味で、相場が下がったときの資産の目減りを避けるといったところから用いられています。」(この項、SMBC日興證券「初めてでもわかりやすい用語集」から引用)

それが今期、欧米国債を10兆円規模で売却し、赤字1.5兆円を補填しようとする動きを見せているとは、どういう意味を持つのでしょうか?
簡単に言えば、「儲けるどころか、損失を拡大させている」と言うことで、農林中金の経営に黄色信号が灯っている状況にあると判断出来るのです。

私の素人考えから述べると、健全な国債の購入だけで10兆円も売却しなければいけないということ自体が、「何で??」という疑問です。
アメリカでもヨーロッパでも、その国の国債は一番健全性の高い債権な訳です。確かに、FRBの急激な利上げで多額の損失を被ったと言えど(本来なら)たかが知れた額の損失である筈なのです。

それが、10兆円分売却となると桁が違い過ぎます。大体、金融の世界は「嘘が多いですから」欺されないようにしなければいけません。農林中金は、2008年のリーマンショックの時にも「1兆5000億円」ほど損失を被ったということで有名な銀行です。
日本に、数ある金融機関の中で断トツ1位の損害額だったのです。・・・リーマンショックで、運用の失敗には懲りている筈なのに、また同じ轍を踏んで大損したように見えます。

ここで、「国債の金利」について、常識的なことを書きます。金利というのは、利息のことです。多分誰でも経験があると思いますが、日本の銀行は「ほとんど金利がつかない」のに、新興国の外国債券では、平気で8%とか10%の金利を付けている国債を見かけることがあります。

「こんなに金利が高いから購入しよう」と誰もが考えると思いますが、ちょっと待って下さい。まず、「なぜこんなに金利が高いのか」を考えなければいけないのです。
金利というのは、ある意味「国の信用度」です。ここで言う、10%以上の金利がついていると言うことは、国の信用格付けが(極端に)低いことを意味しているのです。

国が消滅まではいかなくても、ディフォルト(債務不履行)になる位の可能性があるのです。すなわち、元本すら帰ってこなくなる怖れがあると言うことです。
金利がつかない日本の銀行を避けて、高金利の外国債券を購入したまでは良かったけど、国債の価値がどんどん下がって、大きな損害を出すと言うことは十分に考えられるのです。
(つづく)