旅の基本をないがしろにしたばかりに… | 鹿児島のイチロー85歳 最後にして最大の挑戦へ

鹿児島のイチロー85歳 最後にして最大の挑戦へ

糖尿病の為に始めたバッティングセンター人生が二十数年を越えた。
81歳で「130km/hを打って7本のホームラン」という若者達でもやれないことが出来た。その後前立腺ガンや白内障を克服したので、バッティング人生の最後の挑戦を…

ようやくにして福駅について愕然とした。

駅の両側に細い通路があるだけで、イメージしていたタクシー乗り場など影も形も無いのだ。


私が出発前に教えられたのは“福駅で降りたらタクシーでPUG(ピーユージー)バッティングセンターに来て下さい”と、これだけ。


タクシーに乗れば全てはコトが済むと思っていたのだ。

だから住所も電話番号も聞いていなかった。


これはまずいことになった、せめて電話番号を聞いておくべきだったと後悔したが後の祭り。

駅員さんに聞いたが駅付近の地図には出ていない。

やはりタクシーに頼るほかは無いということで大きな通りへ出る道を教えて下さった。


ところが頼みのタクシーがなかなか通らないのだ。

“いや、これは参った”と途方に暮れたところで、ようやくディレクターの人に聞けばいいのだと気付いた。

しかし、留守電になっていて通じない。


あたりは薄暗くなりはじめるし、通る人も少ない。

人を見かけては聞いたが誰も知らないと言う。

ようやくにして“たしか向こうの方にあった気がします”と言う人に巡り合って“歩いて行けるはずです”と言われたので“ああ、ついに助かった”と思って結構歩いたのだが、見つからない。


これはいかんと又タクシーを探していたら、“地元じゃないので判らないが、この道を向こうへ渡ってからづーっと後戻りすれば、たしか交番があったようなので、そこでたずねてみたら”と教えて下さった。


しかし、歩いても歩いても交番は出て来ないし、約束の時間もとうに過ぎてしまったので、“出来たら来て欲しい”と言われたのだから、もう無理して行く必要も無いかも知れないとあきらめかけたところで交番を発見。


二人とも凄く優しいお巡りさんで地図で探してくれたあと、入るのに間違うといけないからと、一人が外へ出てその細い道を教えて下さった。


新幹線を降りたのが三時半頃。地元の人が聞いたら“エーッ”と驚くほどの僅かな距離を4時間もさまよい歩き廻ったお粗末劇だ。


電話番号さえ打ち込めば全国各地、どこだろうと玄関口まで連れて行ってくれるカーナビ生活の為に、住所、電話番号などの基本情報をキチンとメモして持ち歩くという旅の基本を忘れたが為に、自業自得の難儀極まりない旅となったわけだ。