Yoっち☆楽しくグテを綴る♡ -30ページ目

Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️



前回の物語
物語の続きが始まります✨✨✨


【甘美な二人】


テヒョンとジョングクはカフェの店主デニスを交えて、大公夫妻の思い出話で盛り上がり、更にテヒョン達の馴れ初めにまで発展して笑いが絶えなかった。
「ジョングク、もうこんな時間だ。そろそろ戻ろうか。」
「はい、そうですね。」
「お話があまりにも楽しいので、お時間に気付きませんで申し訳ありません。」
「いや、デニスさんのせいではありませんよ。私達もすっかり夢中になっていましたから。」
「しかし、殿下のようにチョン伯爵もこんなにもお笑いになるとは驚きました。お名残り惜しゅうございますなぁ。是非またお二人でお越し下さい。」
「ええ。そうさせて頂きます。」

テヒョンとジョングクは席を立って店の外へ出た。外はすっかり陽が落ちて暗くなっている。
「随分と暗くなっておりますな。どうぞお屋敷までの道中お気を付けて。」
「ありがとう。ワインをご馳走様でした。」
デニスはにっこり笑って頭を下げた。
「おそれながら、大公殿下にはどうぞよろしくお伝え下さいませ。」
「ええ、分かりました。では。」
「おやすみなさい。」
ジョングクもテヒョンに続いて声を掛けた。

二人が馬車に乗り込むと、ゆっくりと街の中を進んで行った。警護が後から付いて行くとデニスは馬車の灯りが見えなくなるまで見送った。
すると、見送りの様子を見ていた近所の店屋の男が話し掛けてきた。
「デニス、今の凄い綺麗な方達は貴族かい?」
「ああ、普段なら我々が滅多にお目にかかれないご身分の方々だよ。」
「そんなお偉い方々がどうしてお前さんの店に?」
「フィッシュとポテトチップスがお気に入りでいらっしゃるのだ。」
「え?俺達も食べるいつものアレだろう?貴族様のお口に合うのかい?」
男は不思議そうに訊ねた。

「あの方々は庶民の美味しい味もちゃんと分かっていらっしゃるよ。」
「へぇ〜貴族様にも変わった方がいらっしゃるもんだね。」
「おいおい、失礼なことを言うもんじゃない。御父上もそうであるが、あの方々は素晴らしく沢山の見識をお持ちでいらっしゃるのだ。」
「まぁ確かにお前さんの料理は、ここらでは一番の絶品ばかりだからな。あの方達の舌も間違いないってことだ。」
「こらこら、上から物を言うんじゃないよ。」
デニスは呆れて笑った。

しかし考えてもみれば、テヒョンとジョングクは貴族でもその頂点の位置に立つ立場。庶民の生活の中に入っても、ヒョイと自らその立ち位置まで降りてきてくれる気さくさがある。
決して驕り高ぶることなく近付いてくる姿は、恐れ多い上に驚きもするが、誰もが愛さずにはいられない人格の持ち主である事が伝わってくる。
デニスは、テヒョン達との楽しいおしゃべりを思い出して顔がほころんだ。

馬車の中ではまだ談笑が続いていた。
デニスのカフェで心から楽しめたと見えて、二人ともケラケラと笑いが止まらない。
「まさか下町で大公殿下の違った一面を知る事になるとは思ってもいませんでした。」
「そうだろ?初めて聞いた時は僕も同じ気持ちだったよ。」
二人はまた笑い出した。
「でも更に素敵なお方であるという事が分かって益々憧れます。」
「僕も更に父上を好きになったからね。」
「テヒョン様は大公殿下によく似ておられますよ。」
「そうか?」
「はい。初めてお会いした頃に、私が思っていたイメージとは違ったお人柄を見付けてびっくり致しましたからね。」

「え?君は僕に対してどんなイメージを持っていたのだ?」
ジョングクは意味ありげな笑みを浮かべながら、
「それは、、、温かいベッドの中でゆっくりお話してさしあげます。」
と言ってテヒョンの隣に移動すると、そっと手を取りその甲に唇を押し当てた。
その仕草に胸がトクンと弾む。
照れ隠しのようにふふっと笑うと、ジョングクの頬に唇を寄せて、そのまま押し当ててお返しをした。


テヒョン達が宮殿に戻るとデイビスが出迎えた。
「お帰りなさいませ。」
「ただいま。ジョングクとこのまま部屋に戻る。すぐにミネラルウォーターを持ってきてくれ。」
「かしこまりました。軽食などは宜しいでしょうか?」
「いや、いい。街で沢山食べてきたのだ。」
「今日は何をお召し上がりになりましたので?」

「フィッシュとポテトチップスだ。」
「え?本当でございますか!?」
「デイビスも食べるのか?」
「勿論でございます。街に出たら必ず食べる定番のメニューでございますから。」
デイビスはテヒョン達が庶民の料理を食している事に驚いた。
「今日は食べ過ぎた上に、ワインもよく飲んだな。」
「そうでございますね。」
「では早速ミネラルウォーターをお持ち致します。」
デイビスはお辞儀をすると直に厨房に向かった。

テヒョンとジョングクが大階段を上がり廊下を進むと、ちょうど大公が図書室から出てくるところだった。
「こちらにおいででございましたか父上、ただいま戻りました。」
「遅くなりました。」
ジョングクは頭を下げた。
「二人ともデニスの店に行ったのか?」
「はい、よくお分かりですね。」
「ではジョングクもあの料理を食べたのだな。」
「はい。とても美味しく頂きました。デニスさんが沢山お代わりを下さるのでついつい食べ過ぎてしまいまして・・」
大公はジョングクの話に笑った。
「私も無性にあれが食べたくなる時があるのだ。中毒性があるだろう?」

「庶民が食べている料理を色々調べなければなりませんね、父上。」
「そうだな。次に行く時には私にも声を掛けてくれ。」
「分かりました。あ、父上。デニスさんがくれぐれも宜しくと申しておりましたよ。」
「そうか。ではやはり近いうちに行かねばならぬな。」
「ところで父上は読書をなさっていたのですか?」
「ああ、調べたい事があってな。古い書物を色々見ておった。」
「そうでございましたか。では私達はこれで失礼致します。」
「うん。よく休めよ。」
「お休みなさいませ。」

テヒョンとジョングクは大公に挨拶をすると部屋に向かった。
二人が部屋に戻ると、中は既に就寝の灯りに落とされていた。しばらくしてデイビスがミネラルウォーターを持ってやってきた。テヒョンとジョングクはグラスを取るとグイグイと飲み干した。
「お着替えもお持ち致しました。」
「そこに置いてくれ。自分で着替えるよ。」
「かしこまりました。それではこれで失礼致します。お休みなさいませ。」
「うん、お休み。」

デイビスが部屋を出て扉を閉めたことを確認すると、テヒョンはジョングクに駆け寄り両手で頬を捕らえると、すぐさま唇を塞ぐように口づけた。
口づけたまま視線が合うと、ジョングクはテヒョンの身体を抱きしめ、そのまま抱き上げてベッドに倒した。そこからはもう二人は止められずにお互いを求め合う。
《戦争》の文字がずっと二人に緊張や不安を与えてきた。この日久しぶりに日常を離れ、沢山話し笑い飲食を思う存分楽しんだ。それが良かったのだろう。

緊張に強張る魂を癒せるのは、お互いしかいない。髪を撫で、唇で眉を愛撫し、瞼に口づけて頬を滑り落ちる。
唇をわざと通り過ぎ喉仏を舐めた。そのまま首筋を甘く噛じると、ジョングクの口から静かな長いため息が漏れる。
自分の愛撫に酔ってくれていることを嬉しく感じていると、今度はテヒョンが反対に仕留められた。二人の瞳が揺らぎ始めた。
「・・君の目、紅く揺れている・・」
「・・あなた様の目も、青く揺らいでいます・・」

二人は怒りによらなくても、求め合う情熱で瞳に色が顕われることを知った。
そしてまた、深く深くお互いを求め合った。外は真冬だということを忘れたように、二人の身体に薄っすらと汗が滲む。
昼間の行為の時よりも心が解放されていた。何があっても何が起きようとも、二人の絆は揺るぎないもので結ばれている。そう思える事が二人の全ての原動力になった。
テヒョンとジョングクの魂は融合しているようにお互いを感じた。

幾度となく大きく波打つ二人の影が浮かび上がる。それに呼応するかのように蝋燭の炎がゆらめいた。
ワインの酔いはすっかり覚めていたが、二人はお互いの甘い吐息に酔いしれていた。長い間それは続いた、、、、
抑えきれなくなったテヒョンの悦びの声が唇から漏れる。

ベッドに静寂が戻った____

「ねぇ、、だいぶベッドの中は温かいよ、、さっきの話を聞かせて。」
テヒョンがまどろんだ瞳で訊いた。
「馬車の中でのお話でございますか?」
ジョングクが絡めた指で繋いた手に口づけながら言った。
うん、と頷く顔に額を近付けると話を始めた。
「あなた様は美しく、聡明で毅然とされたお姿でございました。それはお変わりないのですが、、、」
テヒョンは黙ってジョングクを見つめていた。

「直接お会いするまでは、いつも遠くから拝見しておりましたが、あなた様は人を寄せ付けない崇高さがございました。」
「なるほど・・・」
「実際にお会いしたあの日、私はあなた様の瞳に見透かされているようで、どぎまぎした事を覚えております。」
テヒョンはニヤリと笑った。
「ですが、あの後、、あなた様から私の元に来て下さいました。」
「紅茶のお代わりを持って行った時だな。」
「はい。」

「独りで噴水に佇んでいる者を部屋の窓から見付けたのだ。よく見ると君だった。」
「公爵自らお越し頂いて、、それも紅茶が入った籐のバスケットを持たれて。」
「なぜだかそうしようと思ったのだ。初めて君を見た時、他の貴族達のような気位の高い態度が見受けられなかった。逆に言えば目立ちたくないといった様子だ。」
ジョングクは笑った。
「その通りでございます。流石でございます。」

「君の端正な見た目とは真逆な様子に僕は興味を持った。」
「私もあなた様と会話をする内に、王族でありながら本心を仰られる事に度肝を抜かれました。」
テヒョンも笑った。
「それは多分、、君だから話したのだ。僕に似ているところがあると分かったからね。」
「私はあなた様に見付けて頂けたと思っております。そのおかげで私の世界が広がりました。」
「それは僕も同じように思っていたよ。」

「何よりもこうして今、あなた様は私の一番大切な方となりました。」
「僕も君が一番大切だ。」
ジョングクがテヒョンの身体を引き寄せて抱きしめた。お互いの鼓動がお互いの胸で呼応する。生きている・・・確かに目の前に存在する・・・そんな当たり前で、いや、当たり前だと思ってはいけないほど奇跡なのではないかと、二人はお互いを見つめながら思うのだった。


【ジョンソン夫妻の新しい家族】


フランシスが産褥期を終えた頃、テヒョンとジョングクとスミスは、ジョンソン男爵家の新しい家族のお披露目会に出向いた。
昼前に馬車でジョンソン男爵家に向かう。
「私は今日の日を楽しみにしておりました。」
スミスが朝から上機嫌だった。
「スミス、まるで初孫を迎える祖父のようだな。」
「ええ、ええそうでございますよ。なんて呼んでもらいましょうか♪」
「駄目だ・・すっかり〔おじい様〕気分になってしまっている。」

テヒョンはウキウキ浮かれて舞い上がるスミスを笑って見ていた。ジョングクもクスクス笑っていた。
ジョンソン邸に到着すると、使用人たちがテヒョン達の到着を整列をして待っていた。
先頭で待っていたトーマスが馬車の扉を開ける。
「やぁ、トーマス。父親になった気分はどうだ?」
テヒョンは馬車を降りて握手をしながら言った。
「皆さま、今日は我が子のお披露目の為にお越し頂きありがとうございます。それはもう可愛くて可愛くて・・・」
くしゃくしゃの笑みを浮かべ、デレデレな喋り方で挨拶をする。

テヒョンとジョングクはトーマスの浮かれように若干引いてしまった。
「トーマス殿、それですぐにベビーには会えるのですか?」
スミスが待ち切れない様子でトーマスに訊ねた。
「はい!すぐにご案内致します!さぁ、どうぞどうぞ。」
「言葉は悪いが、親バカな父親と孫に甘い爺をそのまま絵に描いたようだな・・・」
「はい・・・なんだか圧倒されますね。」
「テヒョン様も、大佐もお早くお入り下さい。」
トーマスがなかなか入ろうとしない二人を手招いた。

三人が案内された部屋へ来ると衝立てが置いてあって中は見えない。トーマスが中に入ると声を掛ける。
「フランシス、テヒョン様と大佐とスミス様がいらして下さっているよ。今入って頂いてもいいかい?」
「まぁ!どうぞ是非お入り下さいませ。」
フランシスから返事があって三人は衝立ての奥に入った。
「やぁフランシス!おめでとう。君達の新しい家族になった天使はどこだ?」
「はい。こちらにおります。座ったままのご無礼をお許し下さいませ。」
ソファに座っていたフランシスは、にっこり笑って腕の中の我が子を見せた。

「この子はアンドリューと名付けました。アンディと呼んでやって下さいませ。」
アンディはお乳をもらった後のようで、スヤスヤとよく眠っている。
「おお、可愛らしい、よく眠っているではないか。」
テヒョンは起こさないように小声で言った。
「おめでとう、フランシス。わぁ・・・何もかもが小さくて愛らしい。」
ジョングクも安心して眠る姿に見入った。さっきまで一番興奮していたスミスは、感無量といった感じで今にも泣きそうだった。
「なんだ、、スミス。せっかく眠っているアンディの前で泣くなよ。」

「・・・言葉になりません、、、本当に、天使でございますなぁ。ジョンソン夫人おめでとうございます。」
スミスはアンディの頭にそっと触れた。
「ありがとうございます。皆様、どうぞこの子を抱いてやって下さい。」
「では、ほらスミスが一番最初に抱かせてもらえ。」
「テヒョン様を差し置いて、私が先で宜しいのですか?」
「構わないよ。一番楽しみにしていたであろう?」
「ではお願いします、スミスさん。」
フランシスはスミスの腕に我が子をそっと預けた。

アンディはスミスの腕の中で一瞬首を動かしたがそのまま寝続けた。
「懐かしい・・・テヒョン様を初めてこの腕にお預かりした日を思い出します。」
「流石に上手ですねスミス殿。」
ジョングクがサマになっている様子に感心した。
スミスはアンディを包みこんだ両腕を左右に静かに揺らす。
「愛らしい寝顔でございますな、、、爺と呼んで貰える日が待ち遠しいです。」
皆が笑った。
「本当に気が早いぞ。なんて呼んでもらおうかと言っておったのに〔爺〕でよいのか?」
テヒョンの言うことにまた笑いが起きる。

「さ、スミスもうそろそろ私にアンディを渡してくれ。」
テヒョンが両腕を出すと、スミスはアンディを注意深くそっと渡した。
「おお、おお、なんて可愛らしい、、本当によく眠っている。」
ジョングクがテヒョンの後ろに回って、包み込むようにして肩越しにアンディを見守った。
「この子の寝顔は癒しでございますな。」
慈しむように見つめながら言う。
「じゃあほらジョングク、君の番だよ。」
前に回ってテヒョンからアンディを渡されると、しっかりと腕の中に収めた。

「上手いではないか。抱き方がサマになっておる。」
テヒョンが今度はジョングクにピッタリくっついてアンディの寝顔を見守った。
「こんなにもこの子は軽いのに、不思議なことに命の重さがずっしりと腕に感じます。」
「分かって頂けますか、大佐!」
皆でアンディを可愛がる様子を今まで黙って見守っていたトーマスが口を開いた。
「うん。分かるぞ。」
ジョングクは頷いて応えた。
「誕生の日、初めて息子だと言われてこの子をこの腕に抱いた時、我が子の命に対する責任を感じました。」
「トーマスはアンディを抱いたまま泣いておりました、、、私もその姿を見てつられて泣いてしまいましたわ。」

「赤子というのは凄いな。我々大人に容赦なく命の存在を見せつけてくるのだから、、、」
テヒョンはそう言いながらアンディの頭を優しく撫でた。
「まぁ、まるでテヒョン様とジョングク様のご家族の絵のように見えますわ。」
フランシスがニコニコしながら言った。
テヒョンはジョングクと目を合わせて照れ笑いをした。
「本当に仲がおよろしいお二人ですこと。」
フランシスが微笑ましく言うと、スミスも頷きながら見ていた。

「さぁ、もうそろそろ父親のトーマスに返そうか。ほら、トーマス。」
ジョングクがトーマスの腕にアンディを託した。テヒョンはアンディがずっと微動だにしないので驚いた。
「本当によく眠っているなぁ、、これだけの人に代わるがわる抱かれたのに。
アンディは凄い大物になるかもしれないぞ。」
「そう仰って頂けて嬉しいです、テヒョン様。この子がいくつになっても、こうやって安心して眠れるように、私はしっかり守ってやりたいと思っております。」
いつになく真剣な面持ちのトーマスに、皆が父親の風格を感じて注目する。

「私が必ず、絶対に守り抜きます。」
真剣さが増すトーマスの言葉に、フランシスが何か言いたげな表情をしたのをテヒョンは見逃さなかった。
「テヒョン様、貴方様が初めて大公殿下や妃殿下に抱かれた時を思い出しました。」
スミスがテヒョンに話し掛けた。
「とても幸せな日々であったであろう?」
「勿論でございます。もう一度あの頃の貴方様をこの腕に抱きとうございます。」
スミスはわざと大袈裟に言ってみた。
「無理なことを、、勘弁してくれ、、、」
皆がどっと笑った。ここでアンディが驚いて目を覚まし泣き出した。

「あ〜あ、とうとう起こしてしまったではないか。」
テヒョンが呆れて言った。
「皆様が大きな声でお笑いになるからでございますよ。」
スミスは拗ねたように言い返した。
トーマスが笑いながらあやし始めると、ソファのフランシスの隣に座る。フランシスはトーマスの肩に寄り添いながらアンディに優しく宥めながら語り掛けた。
「良い夫婦だな。三人ともとても幸せそうだ。」
テヒョンがジョングクのそばに寄った。
「本当に、、、」
ジョングクは言いながら肩に手を回し、テヒョンと一緒に目の前の幸せな家族を見つめた。そしてスミスはこの二つのカップルを満足そうに眺めていた。

「旦那様、奥様、お客様がご到着でございます。」
従僕が知らせに来た。
「分かった。応接間に通してお待ち頂いてくれ。」
「かしこまりました。」
従僕と入れ替えにアンディの養育係が入ってきた。
「失礼致します。」
テヒョン達にお辞儀をすると、トーマスからアンディを預かった。
「皆様応接間にご案内致します。」
トーマスがテヒョン達に移動を促した。今居るのは日中のフランシスとアンディが過ごす部屋で、プライベート空間だったようだ。

応接間まで行くと招待された客が既に集まっていた。テヒョン、ジョングクとスミスが先に中へ通されると、皆が一斉にお辞儀をして迎えた。中には王族が来ていることに驚いている者もいた。
続いてトーマスがフランシスの手を取って入ってくる。応接間には『おめでとう。』の声が続いた。
養育係がその後に付いてアンディを抱いて入ってくると、可愛らしい姿にどよめきが起こった。初めて大勢の人の気を感じたのか、アンディはまた泣き出してしまった。すると、可愛らしい泣き声に皆の笑い声やあやす声がした。

泣き止んだアンディを応接間に準備されていたベビーベットに寝かすと、フランシスとトーマスがそのベッドを囲み、招待客が一人づつ面会をしていった。
テヒョン達三人はテーブル席で紅茶を振る舞われていた。アンディとの面会を果たした招待客達は、今度はテヒョンの所に挨拶にきた。
応接間の部屋には誕生祝いの品々が並び、《ベビー》に似合ったその優しい色合いの品々が、華やかさや可愛らしさで彩られていた。


応接間の隣の部屋に立食形式の昼食が用意された。お皿を片手に皆が思い思いの料理を乗せて談笑して楽しんだ。
トーマスもフランシスも友人達に囲まれて話に花を咲かせている。テヒョンやジョングク、スミスも誰かしらの話の輪に誘われて話し込んだりしていた。
トーマスがスッと話の輪から外れてジョングクの所にやってきた。
「大佐、応接間までお願い出来ますか。」
「ん?今か?ああ分かった。行こう。」
ジョングクも話の輪から外れた。

トーマスとジョングクは応接間に移動した。そこでアンディの世話をしていた養育係にトーマスは、
「私が居るから大丈夫、少し席を外してくれるか。」
と言って人払いをする。養育係はお辞儀をして部屋を出た。談笑をしながらテヒョンとフランシスは、二人が応接間に入って行ったのを横目で見ていた。
やがて応接間と立食の部屋を結ぶ扉が静かに閉められた。

「何かあったのか?トーマス。」
ジョングクは今まで見たこともない真剣な面持ちのトーマスに訊いた。
ベッドでスヤスヤと眠るアンディに向けていた視線をジョングクに向けると話し始めた。
「先日、連合軍の野戦部隊への二次募集に志願を致しました。」
「!?」
トーマスの口から想像もしていなかった言葉が出てジョングクは驚いた。
「なぜ近衛兵のお前が志願したのだ?アンディも生まれたばかりではないか。」
トーマスは暫く黙っていた。張り詰めた空気が流れる中重い口を開く。

「この子を守るため、志願致しました。」
ジョングクはその言葉にドキリとする。
「不穏な世界情勢の中から我が子を守るためには、人任せには出来ません。」
トーマスの言葉は、厳しくも熱意がこもっているのだが、その言葉とは裏腹に目元は温かく柔らかい眼差しだった。
ジョングクはトーマスの言っている事が痛いほどよく分かっていた。ジョングクもまた同じ思いを秘めているからだ。
「フランシスには、話したのか?」
「いいえ、、まだ、、」

トーマスは下を向いて唇を噛み締めた。
「君の思いを知ってしまった以上、私は止められない。止められるわけがない!私にも同じ心情があるのだ。」
「大佐、、」
「自身が軍内にいれば自然とそう思うものだ。《武力》を知る我々は大切なものを守る為に、それを他に委ねる事は出来ない。そうなんだよな?トーマス、、」
トーマスは強く頷いた。
ジョングクは感極まってトーマスの肩を掴んで引き寄せ、強く肩をぶつけ合うとそのまま抱きしめた。二人の瞳から涙がこぼれ落ちる。大切に思うものがいる軍人として、これ以上言葉で言い表せない想いがある。お互いにそれが痛いほど分かるのだ。

アンディが目を覚ましたようで、声を出していた。
「起きたのか、、ほらおいで。」
トーマスはアンディを抱き上げた。
「大佐、、私はこの子が、、本当に可愛くて可愛くて仕方がありません。」
トーマスは泣き笑いしながらアンディに頬を寄せた。命を懸けて我が子を溺愛する父親の姿をジョングクは黙っまま見つめた。
その時、ジョングクの頭の中にテヒョンの実父、ベリスフォード王太子が過る。目の前のトーマスとアンディの姿が、命を懸けて家族を持ちたいと望んだ、崇高な父と奇跡の息子と重なった。

「トーマス?」
ノックの音がするとフランシスが扉を開けて入ってきた。
ジョングクとトーマスは、慌てて顔を隠すと手で涙を拭いた。
「アンディのお乳の時間ですわ。」
「あ、そうか。・・・じゃあ頼むよフランシス。」
トーマスはアンディをフランシスに託す。
「私、乳母は雇わず私のお乳でこの子を育てていますの。」
フランシスは幸せそうにジョングクに話した。
「うん、アンディはとても幸せだな。じゃあトーマス部屋を出よう。」
トーマスの肩を叩いて促した。
「アンディまた後でな。沢山飲むのだぞ。」
トーマスはそう言って衝立を立ててやるとジョングクと共に部屋を出た。

部屋を出るとそこにテヒョンが立っていた。
「アンディはお乳の時間らしいな。」
「はい。」
出てきたジョングクとトーマスの目が赤く潤んでいる事に気付く。
だがテヒョンは敢えて何も訊こうとはしなかった。何かがあったのは分かる。
しかし、誤魔化されたくなかったのと《嘘》をつかせたくもなかった。
《何事もお互いに打ち明け合おう》とジョングクと約束し合った事が、時として心を苦しめることになるのは本望ではないのだ。

養育係がタオルや替えのおしめを持ってフランシス親子の元へ行く姿を見送っていると、
「こちらにおいででございましたか。」
スミスがやってきた。
「ジョンソン夫人手作りのお茶菓子を用意して下さっておりますよ。」
「はい、そうなのです。皆様も是非召し上がって下さい。」
トーマスが貴賓客用に設けた席に案内をした。
「フランシスは乳母に頼らず自分のお乳でアンディを育てているのだな。」
「はい。おむつ替えもなるべく自分でやりたいと、進んでやってくれております。」

「その上で来客用にお菓子を作っているのだろう?」
「産後は安静にして欲しいので、色々とやらないように頼みました。でもだいぶ落ち着いてきた今は好きなようにやってもらっています。」
「テヒョン様のお母様であられる大公妃殿下もそうでございました。」
スミスが懐かしそうに話す。
「特にテヒョン様に関わるお世話は殆どご自身でおやりになりたいと仰せでございましたし、実際に楽しまれていらっしゃいました。」
「あ、それでしたらフランシスも同じです。」

「お二人ともなんだか似ていらっしゃいますな、、、」
スミスが何か考え巡らせながら言う。
「「好奇心が旺盛!」」
スミスとトーマスが同時に声に出した。
あまりのタイミングの良さにテヒョンとジョングクは笑った。
「それと何よりも、、お二人共に真に愛情深い御母上でございます。」
「実際に大公妃殿下にお会いしたことがなくても、テヒョン様を拝見しておりますとそのことがよーく分かります。」
トーマスが実感を込めて言った。
テヒョンは笑って聞いていたが、先程からトーマスがいつもより大人びた物言いをするのが気になっていた。

大人なのだから[大人びた]という言い方も可笑しいのだが、そうではなくいつもの単純さがないのだ。
人の子の親になったから、自覚を持って変わったのだろうか、、、。いや、何かが違う。テヒョンはジョングクとトーマスが目を赤く潤ませていたいた事を思い出した。
「ところで、スミス様はテヒョン様のご幼少の頃の事をよく覚えていらっしゃいますね。」
トーマスが感心したように言った。 
スミスは懐かしむような目線で空を見つめた。

「大公ご夫妻が、本当に待ち望まれたお子様だったのですよ・・」
スミスは静かに、丁寧に言葉を選んで話した。
「テヒョン様の存在はご夫妻に希望をお与えになった。それはお側近くでお仕えさせて頂いている私達にもです。」
テヒョンを見て微笑む。
「トーマス殿とジョンソン夫人もアンディ坊やから受ける幸せをどうぞ存分に味わって頂きたい。」
トーマスは頷いて笑った。少し泣きそうな顔をしていた。


フランシスがアンディと眠ってしまった事を養育係が伝えに来た。
このままそっと二人で寝かせてあげようということになり、テヒョン達も他の来客達もこのまま帰ることにした。
「ではまたな、トーマス。」
「はい、ありがとうございました。」
トーマスはテヒョンとスミスに深々と頭を下げた。そしてジョングクに敬礼をした。二人は無言のままであったがジョングクも敬礼で返した。
テヒョンは二人を静かに見ていた。


※ 画像お借りしました




バムたんの写真🌈

これさ
ゆっくり離してみて見て☺️

バムたんの両前足が・・・びっくり


V

爆笑爆笑爆笑爆笑爆笑飛び出すハート



たまたまさ
手元からスマホ離れててさ
なんとなく観たら
Vって文字が浮いて見えたのよ

え❓グク大胆じゃん愛キューン

ってよく見たら、、、バムたんの前足だったってワケ🤣🤣

グテ脳だからさ〜〜〜😆😆😆😆

Vも なんとなく✔️ ぽいしね😁

ラストに✔️テテを置いていきます


アッコ(←コラ)なテテ❤️


アンニュイなテテ🩷

恋人待ちなテテ💜



私はこのテテに刺さりまくり❤️飛び出すハート



お待たせ致しました爆笑飛び出すハート

前回の物語のアップから
流石に今回は時間が掛かりました💦
でも絶対1月26日には間に合わせて上げたかったのよ💧🔥

年末から突如始まった、私の首の頸椎に関わる筋肉の痛みもそうですし、イベント等もあったので時間がカツカツだったことも理由ですけれど・・・

いや、本来私という人間は
時間があろうが無かろうが、物語がテテとグクから降りてくる限り、サラサラ書き進められるんです
しかし、「2」に突入したら更に試練があると予告した通り
重い話になっていくわけです
作者とはいえ辛くないわけがない😩💦

ましてやもう既に二人は私の心の中では架空の人物を越えている✨
大公子テヒョンジョングクとして、鼓動もあって、呼吸もしている活きた可愛い息子達だしキャラクターです✨😭✨

なんなら私の中では
バンタンのテテグク
群青と真紅のテヒョンジョングク4人が最推しになってますよ愛飛び出すハート

読者さんの中には私と同じように、テヒョンとジョングクを可愛がり、愛情をもってくれて、更には活力として下さる方もいらっしゃる🩷
だからこそ私は益々物語の二人が大切な存在になり、書きながらこの先の行く末を皆さんと同じ立場で案じているのです😭🙏

というわけで
長い前置きになってしまいました
どうぞ本編へお進み下さいませ✨

前回の物語

物語の続きが始まります✨✨✨



【戦いの足音】


早朝、まだ陽が昇る前の薄暗い中を
石畳の小石を蹴り上げながら、早馬がキム公爵家に向かって行った____


オルブライトが大公のベッド際までやってきた。
「失礼致します。
フィリップ様、ご起床下さいませ。」
「ん・・・どうした?」
大公は上体を起こしベッドカーテンを開けた。
「宮廷から、急ぎ参内するようにと使者が参っております。」
大公はしばらく何かを考えていたが次の瞬間、
「急ごう!」
と言ってベッドから起き上がった。
「お着替えの支度は出来ております。」

着替えを済ませた大公は、階下に降りると見送りの為に待っていたスミスに言付けた。
「テヒョンが起きたら、今日は出掛けずに待機しているように伝えてくれ。」
「はい、承知致しました。」
玄関口でマントコートを羽織り、オルブライトを伴って馬車に乗り込む。大公を乗せた馬車は急いで国王のいる宮殿へ走り出した。
この時、宮殿はまだ静寂の中に包まれていてテヒョンもベッドの中で眠っていた。


大公が出掛けた後、徐々に陽が昇り宮殿内は朝陽で目覚め始めていく。
テヒョンは時計の鐘の音で目が覚めると、同時に扉をノックする音が聞こえた。
「おはようございます。お目覚めでございますか?テヒョン様。」
スミスがデイビスと共に部屋に入ってきた。
「おはよう。今朝は二人揃って珍しいな。だが出掛ける支度にはまだ早くはないか?」
「本日、テヒョン様のご公務の予定は延期となりました。」
「延期?」
「はい。それと・・・」

スミスはデイビスがカップに注いだ温かいミルクティーを受け取って、テヒョンに手渡しながら続ける。
「大公殿下からのお言付けで、本日はお出掛けにならず、待機されるようにとの事でございます。」
「待機せよと?」
テヒョンは口元まで持って行ったカップをソーサーに戻した。
「何かあったのか?」
「詳細は存じ上げませんが、今朝早く宮廷から早馬で使者が参りまして、大公殿下に急ぎ参内の要請がございました。」
「では父上は宮殿に行かれたのだな。」
「はい。」
この時、暖炉に焚べられている薪がバチッと大きな音で弾けた。テヒョンに一抹の不安が過る。


国王の執務室には、参内を求めれた大公、セオドラ卿、ジョングクが集まっていた。
日頃の様子とは違い、それぞれの面持ちは真剣で静かな雰囲気だった。
「これで皆揃ったな。早速本題に入る。これまで懸念されてきた、王位継承権を巡る騒動で軍事侵攻にまで進んでしまったP国から、我が国とフランス、ドイツ、ナポリに連合軍の協力要請が正式に出された。」
静かな執務室に更に重い空気が漂った。
「既に首相と海軍の司令本部には、国会での審議に入る前に協力要請があった事を伝えている。審議で決定が出た時の為に準備を備えるよう併せて通達も出した。」
「陛下、海軍以外の出兵は特殊部隊になりましょうか?」
急くようにジョングクが訊ねた。

「我が国では海軍の他、陸軍の出兵は野戦部隊が派遣される。状況が変われば特殊部隊も検討はされるだろう。・・・だがジョングク、お前はまだ行かせるわけにはいかぬ。」
国王は自分に真っ直ぐ視線を向けてくる真剣な表情に、ただならぬ何かを感じて答えた。
「・・・はっ。」
国王の返答にジョングクは間を置いて応える。そばにいた大公が宥めるように背中を軽く叩いた。
「まだ話の続きがある。セオドラ卿、状況説明を」
「はい。」

セオドラ卿は立ち上がり出席者に資料を配った。
「今回のP国の王位継承権略奪の嫌疑につきまして重要な報告がございます。
お渡し致しました資料はその報告書でございます。
私共の私設査察隊に水面下でガヴェレナ系ヴァンティーダの調査をさせておりました。」
視線がセオドラ卿に集中した。
「報告によりますと、事の発端は以前反乱を起こした例の一族の、生き残りによる扇動である事が分かりました。」
「・・・なんと!確か捕らえられ幽閉された《長》以外は咎めは無しであったな。」
大公が驚きを隠せない様子で言った。
「はい。法規に則り一族は処刑が免れました。その残ったガヴェレナ系一族の者達はヴァンティーダとしての超霊力を血清により抜かれてはおりますので、その力を使った扇動ではないようです。どうやら中立の立場であった国で自分たちの正義を論じ、世論を味方につけたようなのです。」

張り詰めたような空気の中、セオドラ卿は更に続ける。
「彼等は裏であちこちに暴動の火種を起こさせ、国王に我等こそP国の正当な王位継承権があると訴え続けたようです。」
「ばかな、、、その昔に非道な独裁政権で民衆から追いやられたのはガヴェレナの皇帝ではないか!しかし、これで辻褄が合ったわけだな。元々王位継承の権利が無い国が、なぜ異議を唱えたのか不可解であったからな。」
大公がそう言うと国王と頷き合う。
「しかし、主君を説き伏せる事が出来たのはどういうわけだ?」
「軍が彼等の味方に付いたからでございます。」

「それだけで元々謀反を起こした一族に加担するなど、どうも解せぬな、、、」
大公は首を傾げた。
「とにかく、今はヨーロッパで起きている暴動を止めなければならぬ。すぐに議会招集をかけるぞ。」
国王は直に侍従長を呼ぶと議会招集の命令を出した。

「ジョングクはこちらに参れ。」
「はっ。」
国王はジョングクだけを呼ぶと別室へ連れて行った。
人通りの少ない廊下に進み使われていない部屋に着くと、国王の後について中に入り扉を閉める。
「何をそんなに焦っている?」
国王は窓辺に立つと外に視線を向けながら訊いた。ジョングクは黙っていた。
しかし国王はもう分かっていた。
「テヒョンの《血》が狙われるかもしれないという恐れであろう?」
「そんなことは決してさせません!!!」
大きな声を上げると一気に険しい表情に変わった。
「まぁそう激昂するな、落ち着け。」

「これはとんだご無礼を、、、お許しください・・・」
我に返ったように詫びる姿に国王は笑った。
「全く、お前はテヒョンの事となると尋常ではいられなくなるのだな。」
「あの方に、もしもの事などあれば私は生きてはいけません、、、」
「大丈夫だ。我々だとて勝手な逸脱した行為などさせぬし、決して許さぬ。ただな、、、」
国王はジョングク目の前まで近付くと肩に手を置いた。
「お前のその真っ直ぐな心が、私には危うく見えてしまうのだ。」

ジョングクは国王の言葉を否定するような笑みを浮かべた。
「私は兵士達の命を預かる立場にございます。無謀な事は致しません。」
『いや違う!命を大切に思うがゆえに、《自己犠牲》に走るのではないかと危惧しておるのだ!』国王は言葉に出さずに目で訴えた。そして静かに言い聞かせる。
「・・・そう思っているのであれば尚更だ。お前はテヒョンにもしもの事があれば生きてはいけないと申したが、テヒョンもお前と同じであろう。あれもお前自身に何かあれば、生きてはいけぬだろう。」

ジョングクは国王を見上げた。
「これは国王としてではなく、テヒョンの従兄、兄、親友としてまた、お前の兄として申す。お前達二人は宿命と運命を両方揃い持って生まれた奇跡の者同士だ。国王の私でも成し得なかった愛する者との契りの成就を必ず生きて成し遂げてくれ。決して《暴力》に負けてはならんぞ!」
「国王陛下・・・」
ジョングクは感激した。個人としての国王の言葉は真から自分達二人を尊いものとして見守ってくれているからこそのものなのだ。
「過去の行き過ぎた皇帝の利己的な国家思想の為に、誰の血も流させてはならぬのだ!」
「陛下・・・」
ジョングクは国王の並々ならぬ憤りを目の当たりにする。

「誇り高きヴァンティーダよ、、、私は英断を下したお前達の尊い祖先を尊敬しておる。」
国王はジョングクの前にしゃがむと、両手をその肩に乗せて優しく言葉を掛けた。


ヴァンティーダ族とニュウマリー族_

数百年も前の昔、人間社会にはニュウマリー族(素の人間)とヴァンティーダ族(豪血を持つ人間)という二つの人種があった。
他者が触れれば死に至らしめる、劇症性の強い血液と共に超霊力を持ったヴァンティーダ族も当時は国家を持ち、国王を置いた君主制で国を統治していた。
特殊な能力があるおかげで、高度な文化を持ちそれを生かした社会を形成していたのだ。
だが、思想が極端に分かれた時代を迎えると《アイゼナ系》と《ガヴェレナ系》に大きく二分され、台頭してきたガヴェレナは次々に国を広げ、皇帝が統治をするまでに大きくなった。

しかし、皇帝の統治は独裁的で、政治に異を唱える者を容赦なく排除した。そのうちに国民は監視下に置かれるまでになり、恐怖政治が支配する後退的な世の中になっていった。
そして、あろうことか相互に干渉することがなかった、ニュウマリー族の国々に野心を向けるまでになった。
何の力も持たない民族よりも、我々のような超霊力を持った、優れた民族がこの世の中を治めるのが相応しいのだ。力こそ正義ぞ!
当時の皇帝はそのように自身の思想を理想として掲げ、超霊力を使ってニュウマリー族の国々に侵略戦争を仕掛けていった。

非道なガヴェレナのやり方に業を煮やしたアイゼナは、ニュウマリー族の国々と手を組みガヴェレナの皇帝軍と戦った。
その時、恐怖政治下で不遇の暮らしを強いられていたガヴェレナの民達が、団結して皇帝側に反乱を起こす。暫くすると皇帝側に付いていた軍隊も反旗を翻し、とうとう皇帝は国を追われることになった。
皇帝は捕らえられるとニュウマリー族側で中立の立場をとっていた国に引き渡され処刑された。
この事件をきっかけに、アイゼナ系とガヴェレナ系は自分達の持つ超霊力によって、優位な立場に立ちたいという危険な野望に突き進むことが無いよう、独自の国家を持つことを辞めた。

今まで統治してきた国々は分散され、ニュウマリー族の各々の主君達に委ねられた。ヴァンティーダ族は王族であった者は貴族として爵位を与えられ、国の大きな有事には最高機密特殊部隊の《ヴァンティエスト》の高官として部隊を指揮した。
市民であったヴァンティーダの者達は自ら血清により超霊力を抜いて、特殊な力に頼らず普通の生活を送ることを選んだ。

しかし、近年になり皇帝の血を組む子孫であった、一部のガヴェレナ系ヴァンティーダが反乱を起こした。
だかそれもジョングクの祖父が率いるヴァンティエストの部隊によって鎮圧され《長》は幽閉の後に処刑された。
処刑を免れ生きながられた一族は血清により超霊力は抜かれたのだが、今回またその子孫が今度は王位継承権の略奪を企てたのである。

_________


午後に入り大公がジョングクを連れて宮殿に戻って来た。
昼食の為に食堂にいたテヒョンの元にスミスがやってきた。
「テヒョン様、大公殿下がジョングク様を伴われてお帰りでございます。」
テヒョンが立ち上がって出迎えようとすると、大公はもう食堂にやってきた。
「お帰りなさいませ、父上。」
「うん。急ぎ伝えることがある。ジョングクと一緒に食事を済ませたら、私の私室に来るように。」
「はい、、、」
「私の食事は部屋に頼む。」
大公はそのまま食堂を出て行った。

「さぁ、テヒョン様もジョングク様もお席に着いて下さいませ。すぐお食事に致しますよ。」
スミスが二人をテーブルに促した。
「ジョングク・・・」
不安な瞳で振り返る顔にジョングクは静かに笑いテヒョンの肩に手を置いた。


【お忍びで・・・】

昼食を終えてテヒョンとジョングクは大公の私室に向かう。
食事の間もなんとなく口数が少ない二人だった。
これから知ることになる、多分良くないであろう話の予感が、テヒョンの表情を緊張させた。
「今日のテヒョン様は静かでございますね。」
「君もだろ?」
ジョングクはテヒョンの腰に腕を回すとしっかりと掴んで支え、大切な愛しい人がまだ何も知らずに不安な気持ちでいる事を察して寄り添った。
二人は大公の部屋までまた黙ったまま歩いて行った。

「入りなさい。」
大公自らが二人を部屋に入れた。
三人が椅子に座ると話を始める。
「今朝、陛下に呼ばれて私とセオドラ卿とジョングクが宮殿に参内した。」
時計の鐘が鳴り一瞬間が空く。
「我が国に正式に連合軍としての協力要請が出た。明日朝から臨時の議会が開かれる。テヒョン、お前も出席だ。」
「我が国はどうするのですか?もう陛下は決めておいでですよね?」
「参戦することになろう。」
「ジョングクは?・・まさかジョングクの部隊が派遣されるのですか?」
「落ち着きなさい。ジョングクは行かせぬと、陛下は仰っている。」
テヒョンはジョングクの顔を見た。

何も言わずただ笑ってテヒョンに応えた。先程からただ笑って返してくる、いやに落ち着いた様子がテヒョンの不安を更に煽った。
「明日の議会でも正式に発表となるだろうが、今回の派遣は海軍と陸軍の野戦部隊だけだ。だが、事態は既に戦争になっているのは間違いない。我々はいつ何時も冷静に対応せねばならない。国民の不安を煽ってはならぬのだ。それだけは二人とも心しておいて欲しい。」
「はい。」
テヒョンは王族としての心構えを自分に言い聞かせるように返事をした。

いよいよ火種は我が国にも降ってきてしまった。事の重大さを改めて噛み締めた。半世紀以上も平和な世の中が続いていたこのヨーロッパに《戦争》という二文字が暗く立ち込めている。
この先どうなってしまうのか、誰も知る由もなかった。
さっきからずっとテヒョンはジョングクの手を掴んだまま離さなかった。
大公はその様子を見て目を伏せた。幸せな未来を夢見ていた二人に戦争の影が落ちる。運命のいたずらなのだろうか、、、本来ならば穏やかで幸せな人生を二人で歩んで欲しいというのが、親としての願いである。父親としての大公の心も痛いのだ。

ジョングクは議会出席の為に伯爵邸に帰った。
その日の晩はテヒョンも早目に眠りに就いた。眠れそうもないので大公から秘蔵のコニャックを少し貰い、酔いと共にベッドに入っていた。
明日からこの国も戦争の影響が出てくるのだろう。国王も大公もセオドラ卿もジョングクも、そして勿論テヒョンも未知数になる世の中の変化に、どう対峙していかなければならないのか其々に思いあぐねていた。

次の日に臨時で開かれた議会は、終始重い空気の中で進められた。
派遣される兵士達については、公平性を持たす為に一部志願兵を募る事に決まった。軍事費については戦況に応じて、柔軟に歳出の増減を計る事になった。
細かい計画等は数日掛けて協議が行われた。
全ての審議が終了したのは1週間も経った頃だった。急ぎ国民にP国の王位継承権を巡る戦争が勃発している事と、連合軍の派遣について布告された。

更に1週間の時が過ぎ、連合軍として第一陣の派遣が行われた。その出征兵士の見送りには国王、大公、テヒョンの他軍関係者と首相が参列した。
テヒョンは見送りに来ている兵士達の、家族縁者の涙する姿をじっと見つめていた。
先程まで危険な戦地に赴く夫や兄や弟や友人を各々抱き合って別れを惜しんでいた人々だ。本来であれば普通に穏やかな生活を送れたはずだ。
テヒョンはその者達から目が離せなかった。



激動の日々を経て、久しぶりにジョングクがテヒョンを訪ねていた___
ソファに二人で座ってテヒョンが詩集を朗読してジョングクに聞かせていた。

「どうした?」
テヒョンが途中で声を掛けた。
いつもよりもずっと寄り添うように、心身ともに甘えてくるジョングクに優しく声を掛けた。
「・・・ずっと、軍事に関わる事ばかりでしたので、こうしてあなた様の懐にいて、その深くて優しいお声を聞いていられることが今の私には格別な癒しです。」
「そうか・・・」
ふふっと笑うとジョングクの髪を優しく手で梳いてやりながら朗読を続けた。
ジョングクは暫くその優しい愛撫に委ねていたが、徐ろに顔を上げて頬に手を伸ばし唇を寄せると深い口づけをした。
「あなた様は私の平和の象徴そのものです。」
「もう、、、朗読が進まぬ・・」
テヒョンは笑いながら詩集を手放すと口づけを返した。それから二人は離れられなくなった。

甘く荒い息遣いがベッドの中で果てると、腕枕をする手が可愛く乱れた毛先を摘んだ。
「君が、、、戦地に行くようなことがないことを僕は祈っている。」
テヒョンはジョングクの腕から離れると、目の前の上気した頬に口づけをして言った。
「テヒョン様・・・」
「行かせたくない!」
テヒョンはジョングクの身体を力を込めて抱きしめた。
「さぁ、二人っきりの時は楽しい事だけを考えないと。」
心配顔のテヒョンの顔を両手で包むと、額に口づけた。そして素肌の肩にブランケットを掛ける。
ジョングクの落ち着いた態度はテヒョンに安らぎをくれるのだが、その裏で何か秘めているような怖さも感じた。

「君を連れて行きたい所があるんだ。」
テヒョンは起き上がると服を着始める。
「テヒョン様、、?」
「さぁ君も急いで。今夜の夕飯はそこで食べるぞ。」
あっという間に着替えを終わらせたテヒョンは、早々にデイビスに馬車の用意をさせた。
「あ、それから今夜の私達の夕飯は要らないぞ。」
ジョングクはとりあえず何も訊かないことにして、テヒョンに従って支度を始めた。

玄関口にはスミスとデイビスが見送りの為に待っていた。
「お二人共お気を付けて行ってらっしゃいませ。」
「うん、行ってくる。」
ジョングクはテヒョンの後に続きながらスミスに頷いた。
二人が馬車に乗り込むと直に出発した。勿論、馬車の後には馬に乗った二人の警護が付いてきた。
「スミス様、殿下は大丈夫でございましょうか。」
デイビスが馬車を見送りながら訊いた。
「ジョングク様が派遣されることはないようだが、こればかりは分からぬからな、、、。私達はおそばに寄り添って差し上げるしか出来ぬ。」
「はい、、、」

「テヒョン達が出掛けるようだな。
お、植物園がある方の門へ向かうぞ、、、」
大公は窓からテヒョンとジョングクを乗せた馬車を見ていた。正門ではなく西側の門へ向かうのを見てフッと笑った。
「軍もこれから忙しくなりますな。今以上悪い状況にならないとよいのですが、、、」
オルブライトも大公の少し後ろで馬車を眺めながら言った。

「今から君を案内する所は、久しぶりに父上と遠乗りをした時に連れて行って下さった場所なんだ。」
馬車に乗った後、暫く黙っていたテヒョンが静かに話した。
「もしかして、、、一昨年のお誕生日前日に行かれた所でございますか?」
「うん、そうだよ。なぜ知っているのだ?」
「実は大公殿下から私もお誘い頂いたのですが、辞退させて頂いたのです。」
「なんだ、一緒に来たらよかったではないか。」
「親子水入らずをお邪魔したくはなかったのですよ。」
「ふふ・・君らしいな。だけどよく覚えていたな。」

それは、あなた様に距離を置かれていた時だから、、、とは言えなかった。
誕生日のサプライズの為にテヒョンに対して疎外感を与えてしまったあの時をジョングクは懐かしく思い出していた。
「もうじき着くぞ。」
馬車は赤レンガのカフェの前で停まった。御者が扉を開けて二人を降ろす。
「君達も中で好きな物を食べてくれ。」
あの日の大公と同じように、二人の警護に声を掛ける。
「さ、中に入るぞ。」

店の扉を開けると店主が迎えた。
「いらっし・・・これは!大公子殿下ではございませんか!」
「シー・・お忍びで来たのだ。」
テヒョンはあの日の大公のように指を唇の前に立てた。
「お久しぶりですね、デニスさん。」
「失礼致しました。いやぁ、、驚きました。どうぞこちらへ。」
店主のデニスはあの席に二人を案内した。
「もしや・・・こちらのお方はチョン伯爵でいらっしゃいますか?」
「うん。要望通り大切な人と一緒に来ましたよ。」

「嬉しゅうございます!、、遅ればせながら、ご婚約おめでとうございます!」
デニスは涙ぐんでいた。
「初めまして。チョン・ジョングクと申します。」
「よくおいで下さいました、、、大公ご夫妻に続き、2代に渡りいらして下さるとは感激にございます。さ、どうぞどうぞお座り下さい。」
テヒョンとジョングクは向かい合って席に座った。
「デニスさん、あの料理をお願いしますよ。」
「はい。かしこまりました。お飲み物はいかが致しますか?」

「ジョングクは何にする?」
「はい、では珈琲を頼みます。」
「私は紅茶を」
「はい。暫くお待ち下さいませ。」
デニスはニコニコ顔で席を離れて行った。ジョングクはゆっくりと店内を眺めていた。
「ここはね、父上と母上が出会った場所なんだよ。」
「そうでございましたか。」
「二人で会う場所もここだったそうなんだ。」
「大公ご夫妻の思い出のカフェなのですね。」
「うん。だから僕も君を連れて来たいとずっと思っていたのだ。」
テヒョンの言葉にジョングクは嬉しそうに笑った。

「お待たせ致しました。珈琲と紅茶にフィッシュとポテトチップスでございます。」
デニスはお皿にてんこ盛りの料理を持って来た。
「以前もそうでしたが、今日も随分大盛りですね。」
「お代わりもございますよ。」
テヒョンとジョングクは笑った。
「ではどうぞごゆっくりお召し上がり下さいませ。」
「ありがとう。」

テヒョンは早速フィッシュとポテトチップスを一緒にフォークに刺すと口の中に頬張った。
「うん、美味しい。」
幸せそうな笑顔で食べる姿をジョングクは見守っていたが、自分も同じようにして食べてみた。
「美味しい!」
「だろう?僕も初めて食べた時にはあまりの美味しさに驚いたよ。」
「ああ、テヒョン様のご領地で領民の皆さんと食べた料理を思い出します。」
「庶民の日常の料理は楽しくて美味しいな。」
「本当でございますね!」

「はい、お代わりをお持ち致しましたよ。」
デニスが嬉しそうに追加の分を持って来た。
「デニスさんも一緒に食べませんか?」
テヒョンがデニスに同席するよう誘った。
「・・・お二人のお邪魔にはなりませんか?」
デニスは遠慮がちに訊いた。二人は顔を見合わせて笑った。
「とんでもない。ジョングクにも父上達の思い出話を聞かせてやって下さい。」
「そういうことでございましたら遠慮なく・・・」
デニスは嬉しそうに一旦裏へ戻ると、ワインとグラスを持って戻って来た。

「これは私からお二人へのご婚約のお祝いでございます。」
「ありがとう!嬉しいです。」
デニスはワインの封を切ってコルクを抜くと、テヒョンとジョングクにワインを注いだ。そしてテヒョンがボトルを取ると、恐縮するデニスのグラスにもワインを注いだ。
「お二人の末永いお幸せを願いまして、、、」
「「「乾杯!」」」
身分の垣根を取り払い、三人で乾杯をするとグイっとグラスを空けた。



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