群青と真紅 2【《㉘》国王主催の晩餐会】 | Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

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テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️

クリスマスイヴ🎄
皆さんはどう過ごされるのかしら😊✨

グクが素敵なJAZZの Christmas Song
早々とプレゼント🎁してくれましたね💖


JAZZっていえば
テテだけど、、、、きっと二人で

どの曲にする❓この曲セクシーでいいよ
一緒に練習しようか

なーんて
やり取りあったんじゃないかしら😍
はい、妄想ですよ


さて
2025年中に完結する予定だった
群青真紅ですが

次々とストーリーが降りてきて
年内完結は出来なくなりました😅

まぁ、、、でも書いてる本人が
完結させる事を寂しく感じでいたので
先延ばしになってもいいかな〜〜ニヒヒ
なんて思ってます😁


では❗さっそく19世紀のテヒョンとジョングクの世界をお楽しみ下さいませ爆笑飛び出すハート

前回の物語

物語の続きが始まります✨✨✨


【お忍びの場所から】


外はすっかり暗くなり、ガス燈の灯りが柔らかく道を照らしていた。
「予定の時間を大幅に越えてしまいましたね。今夜の営業は大丈夫ですか?」
「ご心配頂き恐縮でございます。しかし今日は大公子殿下の為に、店を開店させましたので大丈夫でございますよ」
「なら良かった」
テヒョンは帰りの支度を終えると、母の肖像画に向かって一礼をした。ジョングクも続いてお辞儀をする。大公はそんな二人の肩に手を置いて、無言で妻に言葉を掛けていた。
アンジェロとデニスは目の前の《家族》の姿を見守った。

「デニスさん、帰国前に父を連れて来ますよ。是非今日の料理を食べさせて下さい」
「本当でございますか!ありがとうございます。楽しみにお待ち致しております」
店の外までテヒョン達を送りながら、デニスは嬉しそうに応えた。
アンジェロはデニスの料理がすっかり気に入ったようだ。

「良かったな、デニス。海外にまでこの店の愛好家が出来たではないか」
「はい!嬉しいことでございます。大公殿下と妃殿下からご縁を頂き、皆様にお目に掛かれて更にご縁を結べる事は、本当に幸せでございます」
「全てはお前の人徳でもあるのだぞ。貴族であろうが、平民であろうがデニスの店の良さを感じる感性は、共通しておるのだからな」
デニスは言葉にならない笑顔で頭を下げた。

「また来ます。今日は貸切りありがとうございました」
「今日も美味しかったです。テヒョン様との婚礼の後、また寄らせて頂きます」
「ああ!そうでございますよ!御婚礼の儀式もパレードも楽しみにしております。私の店でも当日は、来店のお客さん達に、お祝いのサービスを致しますよ」
「わあ、いいですね」
「来られないのが残念です」
「当事者が何を言ってるんだ」
アンジェロが呆れながら、ジョングクを窘めたのでドッと笑いが起きた。

「さあ、皆様方お風邪を召してしまいますから、お早く馬車にお乗り下さい」
デニスに促され、四人はようやく馬車に乗り込んだ。
扉が閉められ、近衛兵が馬丁の位置に乗ると、馬車は静かに動き出した。
デニスは馬車に向かってお辞儀をすると、車体の灯りが見えなくなるまで、その場を動かなかった。
見送りながら、テヒョンとジョングクが二人揃って、元気な姿で戻って来てくれたことを改めて、喜びとして噛み締めていた。
「何度泣いても、涙は枯れんわ」
デニスは濡れた頬に、真冬の空気を感じながら夜空を仰いだ。

「今日は楽しかったな」
「料理の美味しさは勿論ですが、ついつい長居をしてしまう、居心地の良さがあそこにはありますね。
大公殿下やテヒョン様が、庶民が集まるカフェの常連でいらっしゃるとは、思いもよりませんでしたが、今ならそれがよく分かります」
「そうであろう?貴族に見つかることがないからな、それが穴場なのだ」
「なるほど、、、私も参考にさせて頂きます」
「しかし、アンジェロも故郷では行きつけの店は持っているであろう?」
「ああ・・・はい。しかし、私の場合は軍隊に入っている者達の溜まり場というか、行きつけの店でございますよ」

「日頃の訓練の、緊張感を緩める事が出来る場所が、あるというのは大事な事だな。な?ジョングク」
テヒョンがチラリと上目遣いで言う。
「はい。私にとってのその場所は、テヒョン様のおそばですけれど」
「おーおー!ジョン、この狭い馬車の中では止めてくれ!こっちの逃げ場がないのだからな」
テヒョンを抱き寄せるジョングクに、アンジェロは即座に制止を掛けた。
「あーっはっはっはっ、、、!」
大公が思わず笑い出した。
「テヒョンよ、ジョングクの答えがお前だと言わせたくてわさと申したな」

テヒョンは父の言葉に対して、意に介せずといった表情をして、ジョングクにもたれ掛かっていた。
「ジョン、テヒョン様ならいざ知らず、大公殿下の御前でよく出来るな」
「アンジェロ、気にせずとも大丈夫だ。いつものことだからな。それに今日は無礼講だ、二人に構うな」
大公はそう言って、ニコニコしながらくっついている二人を眺めた。
アンジェロは、儀礼を重んじる王室の中であっても、砕けた雰囲気を許す英国の王族に改めて驚いた。だが、テヒョンとジョングクの場合は、人前で憚らずくっついていても、それが許される特別な事情があるからだと分かっていた。

「ところで、アンジェのおめでたい話題は?」
テヒョンは、すっかりジョングクにもたれ掛かかったままで訊いた。
「おっと、、次はそうきますか」
これは油断したと笑った。
「パリを立った後、兄さんは大切な方を迎えに行ったのですよね?」
「うん」
「うん ___ って、それだけではないですよね?」
「なんだ、全部言わせる気か?」
「はい、勿論」
ジョングクが言いながら、テヒョンの顔を覗き見て『当然ですよね?』と言う様に同意を求めた。

アンジェロは、観念したように話し出した。
「戦争中に彼女が世話になっていた所に行って、、、」
「再会を果たしたのですね!」
身を乗り出すテヒョンに、満面の笑みで応えると続けた。
「彼女が、玄関に現れた時に、結婚の申し込みをしました」
「え?・・・いきなり?」
「はは、、アンジェ兄さんらしい」
テヒョンとジョングクが『流石!』等と言って手を叩いた。アンジェロは気恥ずかしくなって、窓枠に肘をついて顎を乗せ、外を向いてしまった。

「祝い事が増えるのは良い事だ」
大公がアンジェロの肩を叩いた。
「本当にこれからは、皆が幸せになるのです。世の中が必ずそうならなければ、ジョングクやアンジェやトーマス、それに、沢山の戦士達が命を張って守ってくれた意味がありません」
テヒョンは、夜の街中を歩いている人々を車窓に見ながら呟いた。
そこには家族や仲間達と、それぞれ楽しそうに、笑い合いながら行き交う姿があった。ジョングクや大公とアンジェロも車窓の外を見ると、テヒョンの言葉に心を寄せた。


馬車はアンジェロが滞在している宿泊先に着いた。
「送って頂きまして、ありがとうございます」
「しばらくはまだ滞在するのだろう?」
「はい。国王陛下主催の晩餐会がございますので」
「そうだったな」
「アンジェ、先に言っておきますよ。早急に正式な婚約の知らせを待ってます」
「どうしてでございますか?」
「我々の結婚式に、貴方の大切な方をアンジェの婚約者として、共に招待するからですよ」
テヒョンはそう言ってニヤッと笑った。
アンジェロは眉をクイッと上げると、目を細め、
「はい、早急に致します」
と応えた。ジョングクはテヒョンの横で親指を立てウィンクしてみせた。

アンジェロを送った後、馬車はチョン伯爵邸に到着した。
玄関前にはセオドラ卿とハンスに、従僕や女中達が既に並んで待っていた。
馬車が定位置に停まると、ハンスが扉を開けた。
「大公殿下、キム公爵、ジョングク様をお送り頂きまして、誠にありがとうございます」
「遅くなったな。待ちわびたであろう」
審議会が終わるまでは、自宅に居る事が出来なかったのだから、久しぶりの当主のお出迎えに、職員達がそわそわしていたのが分かった。
「ただいま」
「「お帰りなさいませ!」」
馬車から降り立つと、皆が一斉に出迎えた。

「父上、今日はありがとうございました」
セオドラ卿は、ジョングクの肩を叩きながら大きく頷いた。そして馬車の中にいる、大公とテヒョンに挨拶をした。
「審議会では息子がお世話になりました。ありがとうございます」
「今回は私は何もしてはいませんよ。しかし、もう既にジョングクは我々の息子ですぞ。これからは何をするにしても、テヒョンと同様に親として接しますよ」
「ありがたき御言葉にございます」
ジョングクも、セオドラ卿と一緒に頭を下げた。

「またな、ジョングク。今夜は待っていた者達から沢山世話をして貰え」
テヒョンが笑顔で言って送った。
「はい。そのように致します」
ジョングクはテヒョンの手を取ってキスをすると、二人は見つめ合い頷いた。
ジョングクは、名残惜しく握った手を離すと、馬車の扉を閉めた。
ジョングクとセオドラ卿、そしてチョン家の者達が一斉にお辞儀をすると、馬車はゆっくり走り出した。

「ジョングク、あの馬車は一般の馬車であったな」
「ええ。大公殿下が若い頃からお忍びで、足繁く通われた《隠れ家》に行きましたので」
「なるほど、そういうことか」
「御子息がお忍びで突然来られるのも、御父上譲りというわけでございますね」
ハンスが話を聞いていて、納得したように言ったので二人は笑った。
「殿下が初めて我が家にいらした時、確かにお一人で突然であったな。既に懐かしい思い出だな」
ジョングクは乗馬服に身を包んだ、テヒョンの眩しい姿を思い出していた。

「ところで、父上にも《隠れ家》はおありですか?」
「ん?」
セオドラ卿は目だけで振り返り、
「まあな」
とだけ答えた。
「いつかそこへ、私も連れて行って下さいますか?」
「ん____考えておこう」
「父上~~~」
チョン伯爵家に、賑やかな親子の声が響き渡った。


キム公爵家の宮殿に向かう馬車の中では、大公がテヒョンをからかっていた。
「本当はジョングクと、一緒にいたかったのではないのか?」
「いいえ。多少離れる時があったとしても、私達は固く結ばれておりますから」
大公から何かしら言われるのではないかと、予想していたテヒョンは、軽くしかし大胆にやり過ごした。
「随分と惚気をハッキリ言う様になったものだな」
大公は、からかいがいが無くなって、つまらなそうに言い返した。
だが、フランスから帰ってきてからのテヒョンには、何やら自信に満ちて、以前のような寂し気な影が見られなくなったと感じていた。本人が言う通り、ジョングクとの絆が強く結ばれたのだろう。


【戦士を労う晩餐会】


審議会から2週間程経った頃、国王主催で非公式な晩餐会が開かれた。
これは戦時中の非常事態で、ヴァンティエストが出動した事への、慰労する会だった。
出動要請を受けて出軍した、ヨーロッパ中のヴァンティエスト達が招待された。
会場は国王の宮殿に隣接する、舞踏会などに使用されるホールで行われた。
入口付近には第44特殊部隊の軍旗が、英国国旗と共に、フラッグスタンドに掲げられている。招待されたヴァンティエスト達は、会場に入るとそれらに敬礼をした。

「おい、あれはジョンソン大尉ではないか?」
アンジェロが、会場をキョロキョロしながら歩いてくる、トーマスの姿を見付けた。
「トーマス!」
テヒョンも、その姿を見付けて呼んだ。
「テヒョン様!大佐!中佐!」
トーマスは、テヒョン達の姿を見て、小走りでやって来た。
「審議会の証人役では、ご苦労だったな。ありがとう」
「いいえ。私の証言が大佐のお役に立てたのかどうか、、、」
「ありのまま、正確な証言で充分役に立った」
ジョングクが有り難かったと、肩を叩いたので、トーマスは安心して頷いた。

「ところで、部下達も連れて来ているのか?」
ジョングクが会場を見回しながら訊いた。
「はい。会場の入り口で待機させております」
「なぜ待機などさせているのだ?」
「・・・あの、本当に我々連合軍も、お席を頂いて宜しいのでしょうか」
「陛下からの招待状が届いたであろう?」
「はい、ですが、、、ヴァンティエストの方々の労いの催しと聞いておりますので」
トーマスが場違いなのではないかと、気にしているようだった。

「何を言っているんだ!我々の進軍に一緒に立ち合い、援護で沢山助けてくれたのは、トーマス率いる連合軍だったではないか。一緒に労われて当然だ。さぁ早く部下達を呼んでやれ」
「はい。ありがたき幸せ!皆を呼んで参ります」
トーマスは敬礼をすると、すぐさま部下達がいる入り口まで戻って行った。
「ヴァンティエストと共に戦った、彼等連合軍の功績も称えられているのに、決して驕り高ぶる事がないのがトーマスらしいな」
テヒョンが、走っていく後ろ姿を見ながら笑った。
「戦場での戦いぶりとは、全く印象が異なる男ですね」
アンジェロも親しみを込めて笑った。

トーマスが、連合軍の部下達と会場に入ってくると、気付いたヴァンティエスト達が、彼等の肩を叩いたり、抱きしめたり、手を叩きながら迎えた。誰もが連合軍の功績をよく分かっていた。
「あははは、トーマスは称えられて照れているぞ」
連合軍の隊員達は、テヒョン達のいる所にやって来ると、敬礼で挨拶をした。
「本日はご招待ありがとうございます。あの、陛下にも直接御礼を申し上げられますでしょうか?」
「うん、陛下は皆の席を回られる筈だから、その時に申し上げたらいいぞ」
隊員達はそれを聞いて、嬉しそうに仲間同士で喜んだ。

「皆元気でいたか?」
ジョングクは一人一人の顔を見て訊ねた。
「「はい!」」
「大佐もお元気そうで安心致しました」
アルテミエフから最後の一撃を受け、一命を取り留めたジョングクが、自身の足でしっかり立っている姿を改めて見た海外の隊員達は、感動に震えていた。
「ジョンがどれだけ戦地でリーダーシップを取れていたか、分かりますでしょう?」
「うん。よく分かりますよ」
テヒョンは、慕われているジョングクを嬉しそうに見ていた。


「皆様方、国王陛下のおなりでございます」
声が掛かると、入り口に注目してお出ましを待った。そして姿が見えると拍手が起こる。国王は大公とセオドラ卿、ソレンティーノ伯爵を伴って、何度も皆に頷きながら席まで歩く。テヒョンは、ジョングクとアンジェロに『また後で』と合図をして国王の席に向かった。
国王と大公、テヒョンが席まで着くと、ジョングクが整列を呼び掛け、一斉に敬礼で挨拶をした。国王もそれに応えて敬礼をする。
「今日こうして、また皆と再会が出来て嬉しく思う。皆の尽力無くして、長引く戦争の終結は成し得なかった。これが現実だ。ヨーロッパ各地の戦場で、尊い命を落とした仲間や市民に、今一度哀悼の意を表したい」

国王が胸に手を充てると、会場に居合わせた全員が、同じようにして黙祷を捧げた。
「今後一切、このような馬鹿げた争いで、落とさなくてもよい命が出てしまわないよう、君達の主君の方々と連携を取り、平和なヨーロッパ、平和な世界を築いていきたいと私は切望している」
国王はそう言うと、改めて会場に居る者達の顔をゆっくりと眺めた。
「今日は私の呼び掛けに、遠路遥々沢山顔を見せに来てくれた事を嬉しく思う。ありがとう。今日は無礼講だ、楽しんでいってくれ」

国王の言葉と共に、あちこちからシャンパンの栓が抜かれる音がした。
次々とグラスにお酒が注がれていった。
「どうだ?皆のグラスにシャンパンがあるか?」
会場の者達がグラスを挙げて、あることを見せた。
「では、皆の尊い働きと再会を祝して乾杯!」
「乾杯!」
国王の乾杯の音頭と共に、あちらこちらてグラスを鳴らす音がした。
テヒョンは、国王と大公、セオドラ卿とソレンティーノ伯爵に、それぞれグラスを向けた後、ジョングクとアンジェロ、トーマスに向けて高くグラスを挙げた。

会場は一気に賑やかになる。
この日の晩餐会はビュッフェ形式となっていて、皆が皆好きな物を食べ、仲間達と行き来して、談笑出来るようになっていた。
国王も早速シャンパンの瓶を握り、皆の輪の中に入っていく。大公やセオドラ卿、ソレンティーノ伯爵も同じように、輪の中へ入っていった。

テヒョンは____
直接挨拶に来たヴァンティエストの者達に、誘導されながらジョングクがいる輪に連れて来られた。
そして、是非大佐との馴れ初めを聞かせて欲しいとせがまれた。
アンジェロがそれに賛同し《無礼講》に悪乗りして二人を囃し立てた。

『いやいや、待て、待て、今日の主役は君達だぞ』とはぐらかそうとするテヒョンを差し置いて、ジョングクが話し出した。
意外な展開に、テヒョンは驚いて彼の顔を見た。恥ずかしがる様子もなく、スラスラと話が進んでいく。
おとぎ話のようなロマンチックな出会い方に、オーーーという歓声が上がる。
次第に輪に加わる人数が増え、会場は一気にテヒョンとジョングクの恋の話で盛り上がる。
「やれやれ、あの二人の人気には敵わぬ」
国王がため息をつきながらこぼした。

「果て、我が息子ではありますが、人前で自身に関わる事をあの様に話す程、饒舌でございましたかな」
セオドラ卿が、息子の大胆さに驚いて笑った。
「余程、今の幸せが有り難く、また大切にしているからでしょう」
「そうそう、困難を乗り越えた分、喜びを分かち合いたいと思うものですな」
ソレンティーノ伯爵も大公もジョングクの素直な性格を好ましく感じていた。

テヒョンとジョングクを囲む輪の中から、ヒューーヒューーと囃し立てる声が上がる。テヒョンが真っ赤な顔をして、ジョングクの肩をバシッと叩いた。
どうやら思いも寄らない惚気話をしたようだ。続いてドッと笑いが起きた。
そして、『Duke of Venus!』『Duke of Venus!』『Duke of Venus!』と、誰からともなくジョングクの部隊名をコールする声が上がる。テヒョンを表すその尊い名を連呼する後に続いて、第44特殊部隊のヴァンティエスト達と、連合軍の隊員達が、互いに肩を組み軍歌を歌い始めた。

英国側の軍歌であるが、戦場で士気を上げる為に、何度も何度も歌われたので、海外のヴァンティエストも連合軍の隊員も、皆が歌えるようになっていた。
歌声は徐々に増え合唱になり、会場は一気に熱気に包まれた。
誰かがいつの間にか、フラッグスタンドからテヒョンの紋章がついた軍旗を取って、両手で掲げている。

テヒョンは戦士達の輪の中で、皆の顔を一人一人見回した。
笑いながら歌う者、泣きながら歌う者それぞれの思いが伝わってくるようだった。
厳しかった戦場から、チョン大佐の生還も含め、こうして生きて帰って来れたのだ。再会を果たせた喜びを《太公子と大佐》の祝い事に乗せて享受した。
テヒョンはジョングクを見た。ジョングクもテヒョンを見ていた。二人は笑うと顔を近づけて口づけをした。すると大きな歓声が上がった。

国王と太公、セオドラ卿やソレンティーノ伯爵は、黙って目の前の光景を見守っていた。
「新しい時代の始まりだな」
国王が何か安堵したように言った。太公はその横顔を見た。
「叔父上、私は《私の役割》を果たしたと思うのですが」
「陛下、、、」
国王は清々しいような笑みで、輪の中にいるテヒョンとジョングクに見入っていた。
「まだまだ、陛下のお力は必要なのではないでしょうか。私は陛下の治める今の世が好きでございますよ」
大公の言葉にフッと素の顔が覗く。

テヒョン達と戦士達の交流は続いていた。すると、目の前の輪の中からトーマスが飛び出してくる。
国王の前まで来ると、敬礼をして手を差し出した。
「陛下、是非我々の所へいらして下さい!」
「なんだあの輪に私が入ってもよいのか?」
「何を仰っていらっしゃるのですか。皆、陛下のお話を待っております」
視線を前に向けると、あんなに騒いでいた戦士達が、国王の方を向いていた。

「無礼講でございましょう?」
「分かった、分かった」
国王はトーマスに促され、輪の中へ入って行った。大公はうんうんと頷いて見送っていた。
若くして王位に就いた人である。テヒョンと負けず劣らず好奇心が旺盛で、職務には妥協せずに突き進む、真っ直ぐな意志の持ち主。
本来であれば、現場重視で行動を取りたい現場派。しかし、最高位の身分である為に、国王としての身の振り方に制限がある。随分葛藤したのではないかと、大公は察していた。

「若者があのように活気づいている国は、安泰でございますな」
セオドラ卿が大公に話し掛けた。
「ええ、その通りです」
「陛下や大公殿下始め、大公子殿下も統治者としての手腕やセンスがおありですから、先々の世も楽しみでございますよ」
「ははは、、そうありたいと私は思っております」

戦士達の輪の中に入った国王は、テヒョンやジョングクと共に戦士達と談笑を始めていた。警護をそばに付けず、同じ立ち位置で、更に近い距離で肩や腕に触れたり、親しく会話をしたり、何より無礼講を呼び掛けるなど、なかなか出来ない事である。
しかし、何度も言うように国民に開けた王室である。この王族達の国民への愛情は誰の心にも届いていた。




つづく _______



※ サムネイルの画像は Chat GPT コーデリアの作品です