群青と真紅㉗【プチ・パレスの夜】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

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アラフィフの生活や周辺で起きたことを書いています☆
そしてときどき
終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

ソジンの家、日本でも始まりましたね😊
私はまだ1・2話しか観ていませんが(群青と真紅の執筆が優先💕)

皆さんは何話まで観ましたか😉❓
テテが相変わらず可愛いよ〜😘


前回の物語


本文注記

【冠水瓶(かんすいびん)】

ガラス製の水差し。寝室で夜中に水を飲む時に使用したり、日本の国会でも使われています



ここから物語のつづきが始まります✨



【落馬後の夜】

プチ・パレスも消灯になり
廊下の燭台も間引きで消されていく

テヒョンの部屋では、窓は全て二重にカーテンが閉められ、防寒に備えた

「失礼致します。寝具はこれだけで宜しいのでしょうか?」
宮廷職員の一人が、ジョングク用の寝具をテヒョンの部屋に持って来た
「ありがとうございます。それで大丈夫です」
ジョングクが受け取りに行くと
「私がお支度致しましょうか?」
と言うので、ジョングクは
「大丈夫です。自分で致します」
と言って寝具の一式を受け取った
「それでは館内で何かございましたら、お呼びつけ下さい。それでは皆様方、お休みなさいませ」
宮廷職員は挨拶をすると扉を閉めた

「チョン伯爵、本当にお一人で宜しいのですか?」
スミスが訊いた
「大丈夫ですよ。何かあればすぐにスミス殿を呼びますから」
「是非そうして下さい。私は隣の部屋におりますので。それではテヒョン様、チョン伯爵、お休みなさいませ」
「おやすみ」
「おやすみなさい」
スミスが部屋を出ていった

ジョングクはソファをテヒョンのベッドに寄せると、寝具を広げ寝る場所を整え始めた
「ジョングク、本当にそこで寝るの?」
「はい」
「君だって疲れているだろう?僕の隣で寝たらいいじゃないか」
ジョングクはテヒョンの方を振り返って
「有り難いお言葉なのですが・・・大丈夫ですよ。このソファは寝る事も出来る広さがありますし。それに、お隣に寝て万一、寝返りでテヒョン様のお身体の患部に危害が及んだりしたら本末転倒ですから」
と言うと、ソファのベッドを仕上げ、次に部屋の灯りを順番に間引きをしながら落としていく
テヒョンは少し寂しげな表情でジョングクの後ろ姿を目で追った。しかしジョングクは気付いていない


ジョングクがテヒョンのベッドまで戻って来ると
「ピローやクッションの寝心地は大丈夫ですか?」
と使い心地を訊ねる。
「君の整え方が上手いから、ずっと居心地がいいよ」
テヒョンが頷きながら応えた
「そうですか、よかった。もしズレてきたりしましたら、これを引っ張って遠慮なく私を起こして下さい。繋いでおきますので」
と言って、テヒョンの手首とジョングクの手首に長いリボン状の麻布を巻いて繋いだ
そして、テヒョンのブランケットを肩まで掛け直してやる
「どうぞお休みくださいませ」
「うん、お休み」

そして、ジョングクが隣のソファに行くと、テヒョンが礼を言った
「ジョングク、ありがとう」
ジョングクはテヒョンの方を見て
「いいえ、どういたしまして」
とにこやかに応えた。
薄暗いオレンジ色の灯りの中で、テヒョンの笑顔が揺れた

疲れが出ていたせいか、テヒョンもジョングクもすぐに深い眠りに入っていった。
静まり返った部屋の中は、テヒョンとジョングクの寝息だけが、反復して聞こえるだけになった

どれ位時間が経っただろうか、眠りの中のジョングクの耳に、テヒョンの声が飛び込んでくる
その声は段々大きくなり、ジョングクはハッとして起き上がった
起きてすぐにテヒョンのベッドを見ると、テヒョンがうなされているようだった
ソファから飛び出したジョングクは、すぐにベッドのテヒョンの手を握ると
「テヒョン様、テヒョン様」
と声を掛けた。するとテヒョンは
「うわぁ!」
と叫んで起き上がろうとしたので、瞬時にジョングクが抱き止めた
「大丈夫でございますよ、ここにおります。ジョングクが側におりますよ」
怪我をしているテヒョンが、無理に身体を起こさないように、ジョングクは覆い被さるようにして、優しく声を掛けながらテヒョンを包み込んだ

テヒョンは寝汗をかき、荒い呼吸をしている
まだ眠りから覚醒していないようだったが、身体は縮こまるようにして、小刻みに震えていた
ジョングクはテヒョンの頭を抱えて、髪を撫でながら落ち着かせようとした
「大丈夫でございますよ。ジョングクがこうして側におります」
ジョングクは、ゆっくりと静かに繰り返し、繰り返し、テヒョンに声を掛け続けた
テヒョンは震える手で、しがみつくようにして、ジョングクの腕を掴んだ

しばらくすると、テヒョンの身体の震えが収まってきて
「・・・ジョン、、グク・・?」
と、ジョングクの名前を口にした。やっと覚醒してきたようだ
「はい、ずっと側におりますよ、テヒョン様」
「ああ、、ごめん、、起こしてしまったな」
いつものテヒョンの口調に戻った
「そんなことは構いません。それより、どこか痛む所がございますか?」
「いや、ない、、僕は昼間の夢を見ていたんだ・・・」
「テヒョン様、今お水を持って参りますので、待っていて下さい」
ジョングクは繋いでいた手首の麻布を外して、テヒョンから離れると、まずタオルを取りに行き、そしてベッドまで戻ると、サイドテーブルに置いてある、冠水瓶の水をグラスに注いで、テヒョンの所まで持って来た
「よろしいですか、後ろに手を回しますよ」
ジョングクは怪我をした背中に直に触れないように、テヒョンが直接寄りかかるクッションの後ろに手を入れて、ゆっくり起こした
「はいどうぞ、テヒョン様」
ジョングクは水を入れたグラスをテヒョンの口に運ぶ
テヒョンは1口、2口水を飲んだ
「寝汗が凄いですね、、今拭きますね」
ジョングクはグラスをサイドテーブルに置くと、持って来たタオルでテヒョンの額の汗を拭い、顎の下から襟足、首の後ろと、何度もタオルの拭く面を裏返して替えながら、丁寧に拭いていった
最後はタオルで髪を撫でるようにして拭き上げた

テヒョンは拭いてもらいながら、ジョングクをじっと見ていた



【悪夢】


「・・落馬をする夢を・・見たのだ。僕は空高く飛ばされて、、青空が見えた瞬間、駄目かもしれないと思った。そして吸い込まれるようにして地面に叩きつけられた・・・」
テヒョンが天井の一点を凝視しながら話した
ジョングクは胸に迫るものを感じて、テヒョンの後ろ首を掴むと、自分の首元で抱きしめた
テヒョンはジョングクの肩越しで、天井を見つめたまま泣き出した

実際にテヒョンは、馬から放り投げられるようにして落馬した
馬が驚いて、後ろ脚で立ち上がった後、前脚が地面に戻って、更に後ろ脚で空を蹴り上げた瞬間に、その反動でテヒョンが空高く放り出されたのだ。そして、そのまま勢いよく地面に叩きつけられた

ジョングクは気付いた
あまりの衝撃で、ジョングク自身がテヒョンが落馬した後の事が、上手く思い出せなかったのは心が自衛したからだ
だから、テヒョンも馬から落ちてあまり記憶がないと言っていたのも、同じ理由だったはずだ
昼間、目覚めてから気丈に振る舞っていたのも、気を張らせ心でテヒョン自身を守っていたのだ
しかし、逆に事故の恐怖を無理矢理心に閉じ込めた反動で、夢の中で恐ろしかった記憶が蘇ってしまった


ジョングクは、テヒョンが隣で眠ることを勧めてきた時、素直に応じれば良かったと後悔した

普段、自分を律することで弱音を吐かないテヒョンの性格を分かっていた筈なのに・・・
それでもジョングクに対しては、少しづつ本音を垣間見せてくれるようになっていたのに・・・

何のために今夜テヒョンの介添えを買って出たのか
傷を負ったのは、身体だけじゃない
心も同じように傷を負っていたのだ
『もっと早く気付いて差し上げるべきだった』ジョングクは更に猛省した
「申し訳ありません、気付くのが遅くて・・・」
ジョングクの言葉に、テヒョンは応えなかったが、ジョングクが言いたい事は伝わっていた
テヒョンの瞳から更に次々と涙が零れ落ちる。
こうして何も言わずとも分かってもらえる事で、テヒョンの心は癒やされていった

「さぁ、またお休みになって下さい。私はこうしてずっと、お側におりますから」
そう言いながら、テヒョンの涙の跡を優しく拭いて、満面の笑みを向けた
テヒョンは安心したように笑うと、ジョングクの手を取り、その手の甲を自分の頬につけて瞳を閉じた
テヒョンのその仕草は、まるで小さい子どものようだった

なんと可愛らしく、愛らしいことをなさる方なのだろう・・・

ジョングクはなんとも言えない幸福感に包まれた。身内以外の人間では、きっと自分にしか向けられていないであろう、テヒョンからの信頼感に、父性なのか母性なのか本能がくすぐられた
こんな幸せな気持ちに浸ったのは初めてだった

気が付くとテヒョンは再び深い眠りに入っていた
ジョングクの手はまだテヒョンに握られたままだった
そして、ジョングクはテヒョンにまだ繋いだままだった麻布を外した
そうしてから、もっとずっと近くテヒョンに近付いて
『次の夢は是非楽しい夢を・・・』と願ってそのままテヒョンに添い寝した


テヒョンとジョングクが、一緒に迎える何度目かの朝 ____
今朝はジョングクが先に目覚めた
目が覚めてすぐにテヒョンの様子を確認する
まだまだずっと深い眠りの中にいるようで、穏やかな寝顔に安心した
ジョングクはそっと起き上がり、ずぅっと繋いだままだった、テヒョンの手をそっと離すと、ブランケットの中に入れた

ジョングクは、名残惜しそうにテヒョンの寝顔を見ていたが、思い切ってベッドから出ると、窓辺に向かいカーテンを開けた
明るい朝の陽の光に一瞬目を細めながら窓を開ける
もう朝はすっかり冬の空気になっていて、ジョングクの吐く息が真っ白になった
そして次に暖炉に向かうと、既に小さくなっていた暖炉の火に、新しいい薪を焚べた
ここまでやってベッドの方を見たが、テヒョンはまだ眠っているようだった
テヒョンが目覚める前に、部屋を整える準備が出来た

ジョングクは空気の入れ替えを終わらせ、窓を閉めて部屋を暖める
次に冠水瓶の水を取り替えようと、サイドテーブルからトレーごと取ると、ここでノックをする音がした

扉を開けると、スミスが冠水瓶を持って立っていた
「おはようございます、チョン伯爵」
「おはようございます、スミス殿。ちょうどよかったみたいですね」
ジョングクがそう言うと、スミスがお互いの冠水瓶を見て笑った
「どうぞ中へ、テヒョン様はまだお休みです」
ジョングクがスミスを中へ入れた
「チョン伯爵、そちらの冠水瓶は朝食が運ばれて来た時に、一緒に持って行ってもらいましょう」
「分かりました」
ジョングクは扉の近くにある棚の上に冠水瓶を置いた

「テヒョン様はよくお眠りになられていますね。安心致しました」
「あ、、でもスミス殿・・・」
「はい」
ジョングクが、なんだか話しづらそうにしているのを見て、スミスは
「チョン伯爵、ではお手伝いをお願いしても宜しいでしょうか?どうぞ隣のクローゼットのお部屋へ」
と、言って場所を移してくれた

ジョングクとスミスは、クローゼットの部屋の扉を開けてそこに入った。そしてスミスがジョングクに話を促す
「いかが致しました?」
「実は、昨夜テヒョン様がご就寝中にうなされて、、、」
「・・・そうでいらっしゃいましたか・・」
「私が自ら介添えを申し出ていながら、申し訳なくて・・・」
「いいえ、チョン伯爵が謝られることではございませんよ」
「しかし、、昼間は毅然とされていましたが、それは恐怖心を我慢なさっていただけだと、すぐに気付いて差し上げるべきでした。私はテヒョン様の事故のショックに動揺するばかりで、気付くのが遅すぎました」
スミスは黙って聞いていたが、笑い出して言った
「・・・笑ったりなどして失礼致しました。いや、流石でございますな、チョン伯爵。よくテヒョン様を見て下さっていらっしゃる」
「・・・え?私がですか?」
「そうでございますよ。お二人が親交を始めてまだ日が浅い中、なかなかそこまで気付かれるというのは、本来なら難しいと思います。・・・実はテヒョン様は、今までにもよくうなされる事がございました」
「そうなのですね・・・」
「チョン伯爵もそうでいらっしゃいますが、テヒョン様も若くして家督を継がれました。その為人一倍責任感を持たれますし、あまり感情を出されません。そうでなくても早く大人になられてしまいましたので、どなたかに頼るということもなさいませんでした」
「全てお一人で抱えてしまわれるのですね」
「はい。私などテヒョン様から、お子様らしいわがままも言われたことがありませんから、寂しく思ったりも致しました」
ジョングクとスミスは笑った

「ですが、チョン伯爵が昨夜ご覧になったように、気を張り詰めていらっしゃる分、その反動が無意識の時に出てしまわれるようなのです・・・」
「スミス殿・・私はテヒョン様に《側近》にまでして頂いているのに、、ここぞという時にお力になれていない気がします」
「チョン伯爵、それは違いますよ。貴方様と親交をもたれるようになってからのテヒョン様は、よくお笑いになりますし、以前より沢山お召し上がりにもなり、最近はぐっすりお眠りにもなって、これが本来のテヒョン様なのだと、我々お仕えする者達は感じています」
スミスはにこやかに話す
「チョン伯爵には感謝しかございません。貴方様とご一緒の時のテヒョン様は、とてもはつらつとして、年相応の青年としての輝きがございます。・・・貴方様も今まで、随分ご自身を抑えてこられたのではありませんか?」
「スミス殿・・・」
「この間、宮殿でハンス殿にお会いした時に、仰っていましたよ。『殿下とご一緒の時のジョングク様は、重圧から開放された元々のジョングク様になられる』と。テヒョン様に可愛がって頂けてとても有り難いとも仰ってましたね・・・」
「ハンスがそんな事をスミス殿に?」
「はい。私やハンス殿から拝見致しますと、テヒョン様もチョン伯爵もお互いに補い合い、支え合い、更にご成長されていらっしゃるように見えますよ」
「本当に?そう見えていますか?」
スミスは微笑みながら大きく頷いた
「ですからチョン伯爵、テヒョン様とは自然体で大丈夫でございます」
「ありがとうございます。・・・そうしたら、スミス殿も私の事は、自然体で今後は名前で呼んでもらえますか」
「え!よろしいのでございますか?実は、、ずっと許可を頂けるのを待っておりました」
「早く言ってくだされば・・」
「そういう訳には参りませんよ。貴方様は当主の大事なご友人である上に、私の身分より格上のお方ですからね」
「スミス殿はそういう所は、きっちりされていますよね」
「王族のご家庭に仕えておりますれば、でございますよ、はい」
「なるほど」
ジョングクの反応を見て、スミスは笑っていたが、急に深々とお辞儀をすると
「それでは、遠慮なく貴方様をジョングク様とお呼び致したいと存じます」
と言った
ジョングクは笑いながら頷いた
「さ、そろそろお部屋に戻りましょう。テヒョン様がお目覚めになる頃です」
と言って、スミスがテヒョンの着替えを揃えて持ち、ジョングクはタオルを持ってクローゼットを出た




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