昨今、皇位継承権について女性でも天皇になれるのか、という議論が高まってきている。自民党の二階俊博幹事長は8月25日、BS朝日の番組収録で女性天皇に関し「女性尊重の時代に天皇陛下だけそうはならないというのはおかしい。時代遅れだ」として容認する見解を示した。


 また二階氏は記者団に「諸外国でもトップが女性である国もいくつかある。何の問題も生じてない。日本にもそういうことがあってもいいのではないか」と語った。


 二階氏の主張は女系天皇と女性天皇の違いをまったく理解しておらず、天皇という日本の真柱を根底から覆してしまい、将来的には天皇と皇室を排除する突端となりうる危険で浅はかな考えである。


 憲法には皇位継承に関する規定があり、この規定を受けて1889年に定めらえた皇室典範を引き継いで戦後新たに制定された「皇室典範」によって、その第1条「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と定められている。


 その規定に照らし合わせれば、現在の皇室においては、皇太子殿下ならびに秋篠宮殿下は皇位を継承できるが、敬宮愛子内親王には継承ができないことになっている。さらに、敬宮愛子内親王が男子をご出産なされても「女系の男子」となり、その子は皇位継承権を持たない。

 

 この様な女性を排除しようとする考えは、明治憲法における「万世一系」という考え方からでてきたと言われている。しかし、この事が女性排除の理由となるには、無理があるような気がする。


また、女性天皇は例外だという方もいるが、歴代天皇の系図をみると、今までに10代8名の女性天皇が誕生している。女性天皇は、さらに「男系」「女系」に分けられるが、8名の女性天皇はすべて「男系」である。


  最初が33代の推古天皇、順を追って35代皇極天皇、37代斉明天皇(皇極天皇)、41代持統天皇、43代元明天皇、44代元正天皇、46代孝謙天皇、48代称徳天皇(孝謙天皇)、109代明正天皇、117代後桜町天皇、と絶対数としては多くはないが、かなりの例が存在している。


 男女平等という現行憲法の趣旨を重んじるなら、女性天皇の排除の理由とはなりにくいと考える。また、憲法第九十九条に、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」と規定されている。憲法の精神を率先して堅守していくためにも、皇室典範の改正か、憲法の皇位継承者の記述を「男子または女子」と改訂明記すべきと考える。


諸外国の状況はどうであろうか。各国の王室のうち、アジア、アラブ各国の王室の大部分は、たしかに男子のみの継承である。一方でヨーロッパ各国の王室は、男女双方の継承を認めている。男女双方とも王位につける各国のうち、継承順位が「男子優先」なのは、イギリス、スペイン、デンマークとなっている。男子が生まれても、女子が先に生まれていれば女子が王位につく「年長優先」なのが、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、ベルギーである。


  女性天皇を容認するにしても女系まで認めるのか、皇位継承順位は年長優先で男女平等にするのか、など課題も少なくない。また、女性天皇の配偶者を見つけるのも難しい課題となる。


天皇の正統性は歴史と伝統によってのみ保証される。もし女系天皇が即位すれば神武天皇以来男系で連綿と継承されてきた男系による皇統は断絶し、全く別の家系による天皇が誕生することになる。


  女系による皇室の相続は、皇室の伝統を否定してしまい正統性がなく、実質的な天皇制度の否定であるのではないだろうか。


 この様なことも踏まえたうえで私個人的な意見は、「女性天皇は容認するが男系を基本とする」と考える。様々な意見があろうかと思うが、天皇という存在が日本という国を一つにまとめ上げる重要な立場にあることは厳然たる事実であり、この皇室を存続させるために知恵を絞っていくべきと考える。