5年前の10月10日、知り合いのお嬢様が「胞巣状軟部肉腫」という病気にて、19才で亡くなられた。この知り合いの方は音楽教室の先生で、自分の家族全員がお世話になっている。自分と息子達は奥様にピアノを教わっていた。ご主人はバイオリニストとして一流の方であり、家内の先生でもある。地域への音楽活動もボランティア的にやられている。

 このご夫妻は結婚後なかなか子宝に恵まれず、様々な治療などの末に10年目にしてようやく女の子が誕生した。小さい頃からピアノの才能に恵まれ、その演奏などを聴くとまさに天才的でもあった。類い希な才能と環境にも恵まれ、当然の事ながら音楽関係の学校へと進学した。

 高校三年の時に足の変調に気が付き、病院へ行ったが当時の診断では判らず、大学入学後に病名が判明したが、治療法も様々な手を尽くし回復を祈ったが手遅れであった。最後は25kg位まで体重が落ち、自発呼吸さえ困難な状態になっていた。

 そのなかで、亡くなる少し前に奥様の誕生日があった。このお嬢様は苦しい中、病院のベットにて、母親に一通の手紙をしっかりとした字で書き、母親への感謝を記した。その内容の一部分ではあるが、ご紹介したいと思う。


 「ママ、お誕生日おめでとう。由佳はママが由佳を愛してくれてる以上に、ママとパパを愛しています。ママとパパの子供に生まれて本当に良かった。ありがとう。」


 若干の記憶違いはあろうかと思うが、自分の家内が実際にこの手紙を見せて頂いた。これを家内から聞いたが、涙が止まらなかった。自分の次男と同い年で発表会なども一緒に出ている写真や、ビデオをみると何とも言えない悲しみがこみ上げてくる。

 生きたくとも生きられない無念さ、子供ながらに両親に対する愛情あふれる言葉。人の命には絶対に無駄な命などはなく、生きている意義や目的が必ずあるはずだと思う。