この前、職場の方からとある相談を受けました。

その方は、定年退職された後もわれわれ後進の指導のために、週に3回、職場に来て下さっている方です。(*以下 "Jさん"と記載させていただきます)


そのJさんには娘さんがおられ、その娘さんには2才になったばかりの息子さんがおられるそうです。
発達には何の問題もない、元気いっぱいのやんちゃなお孫さんだそうです。

 


その男の子が、とにかく寝なくて、とても困っている のだとか・・・滝汗滝汗滝汗

 



具体的には、

・夜になるといったんは眠るけれど、しばらくしたら目を覚まして泣く
・ひとしきり泣いた後は、遊び始める
・すると今度はなかなか眠ってくれない
・そんなことが一晩に1~数回続く
・朝は普通に起きてきていると思う(*同居されていないので不確かと思われます)
・保育園でのお昼寝などに問題はないと思う(*こちらも同上かも)

・こんな状態がずっと続き、お母さんは精神的にも肉体的にも疲弊してしまい、
 今はお父さんが夜中に付き合って起きている。
・困って近くの小児科医院に通い、漢方薬を飲むようになってしばらく経つが、

 まったく効いていない。

という感じのようです。



―― 少し症状は違いますが、寝ない点は娘とよく似ていませんかはてなマークはてなマークはてなマーク不安あせるあせる

 

 


とはいえ、私は娘が赤ちゃんの時はそれが異常だとは気が付かなかったダメ母ですし、時代も違っていますので、何も役に立てそうにはありません。



そこで思い出しましたのは、以前こちらで紹介させていただいたことのあります "Mちゃん" のことでした。

 


Mちゃんは発達障害と睡眠障害で治療などを受けている、5才の女の子です。

 

 

そのMちゃんのママにもう一度詳しく話を伺って、それをJさんにお伝えできたら、何かの参考になるのでは・・・と考えて、Mちゃんママにお願いして話を聞かせていただきました。


すると。
以前Mちゃんママから話を伺った時は睡眠障害より発達障害のことが中心だったためか、あらためて睡眠障害にフォーカスしてお話を伺うと、↑の記事で書かせていただきましたいきさつとは少々異なっていることが判明いたしましたあせる


ですので今回は、新たに分かりましたより正確ないきさつを記載させていただきたいと思います。


・Mちゃんは現在5才の女の子(年中さん)。
・赤ちゃんの時から夜中まで眠らないし、夜中何度も起きるし、保育園での昼寝も
 しにくくて、両親は困り果てていた。
・1才半の時、保育園の保母さんから「こんなに寝ないのはおかしい」と勧められ、
 某病院小児科の睡眠外来を受診した。
・電話で予約を取ると、自宅に 『睡眠表』 が送られて来た。これに日頃の睡眠の

 状況を記録し、初診時に持ってくるようにとのことだった。
・それを持参した初診時、医師からはっきりと「これは病気ですから」と告げられた。
 すると、それまでは育て方や接し方が悪いせいだと自分たちを責めてきていたので、

 とても気持ちが楽になり、救われた気持ちになれた。
・他に 「大きくなるにつれて普通に眠れるようになる子もいる」 「発達障害と関係してい

 る場合もある」 「このくらい(1才半)から治療を始める子が多いが、早い方ほうがいい」

 とも教えてもらった。
・初診時に 『アタラックスP』 という薬を出してもらい服用したが、全く効かなかった。

 その後いくつか薬を試したが、どれもあまり効かず、最終的には2才頃から
 『メラトニン』 という薬を飲むようになった。
・これはもともと脳内にある睡眠ホルモンなので、副作用はほとんどなく、海外では

 子どもの睡眠障害に広く使われてきた歴史があり、小児でも安全だと言われた。

・メラトニン製剤は海外ではドラッグストアで簡単に入手できるが、日本で 『メラトベル』

   という名前で保険適応になったのは2020年3月からであり、適応は6~15才のみ。

 そのため2020年2月以前や、現在も6才未満の子では個人輸入して入手しなければ

 ならないのが現状。
 (*『メラトベル』につきましてはこちらなどでも触れさせていただいています)

   ↓

 

 

・そのためMちゃんも主治医の指導のもと、2才の時から個人輸入で服用を開始した。
 (*とても簡単で、日本で買うより安いそうです←あくまでもMちゃんママ談です)
・するととてもよく眠るようになった!(*個人差があるそうです)
・その後、睡眠障害は発達障害との合併率が高いと言われて、3才になった時に初めて

 発達障害の検査を受けた

 (*Mちゃんママは「3才にならないと検査ができない」と言われたそうです)

・その結果発達に凸凹があり、"グレーゾーン"と診断された。
 (*発達障害の兆候は、0-2才では「何か違うな」と感じる程度のことが多いものの、

  3-4才頃には気になる部分が目立ち始め、5-6才になると集団生活の中で特性が

  よりはっきりしてくることが一般的には多いそうです。右差し参考記事はこちらです)

・それ以来、1~2週間に1回、『療育』に通っている。医師からは「もう少し成長して

 発達障害とまでは言えないことがはっきりするまで、お子さんとお母さんのために

 通った方がいい」と勧められた。
 (*厚労省のHPにも 「ADHD児やPDD(広汎性発達障害)児によく見られる行動は、

  一般の3歳児にも高率に認められる」と記載されています。その一方で、5歳児健診

  で軽度発達障害を指摘された子の半数以上が、3歳児健診で異常を指摘されて

  いなかったそうです。)
・療育では2時間くらい子どもと専門の先生が遊んでいる間、お母さんは別室で相談に

 のってもらえたり、その子の特性に合わせた接し方などを教えてもらえて、とても

 助かっている。
・5才になって活動量が増えたためか、最近はメラトベルを飲まなくても眠れるように

 なった。
・小学校の先生をしている友人から「同じ発達障害やグレーゾーンの子でも、療育を

 受けてきた子と受けていない子では、入学してからの問題行動や困り度が全然違う」

 と教えてもらったこともあって、1年後の小学校入学に向け今も療育通いを続けている。




かなり詳しく教えていただくことができましたので、この内容を早速Jさんにお伝えしました。

「私の場合、娘の睡眠障害が病気だと気付かなくて長年放置してしまったために、発達障害の症状がひどくなったりナルコレプシーにまで至ってしまった可能性があることを、とても後悔している。だから一度は早めに専門の先生に診てもらって、適切な診断なり治療を受けた方が良いと思う」

という(余計なあせる)ひとことを添えて。

 




――しかし驚きましたのは、今は小児の睡眠障害の専門外来がある時代だということです。

 

そのおかげでどんなにたくさんの子どもたちが救われていることか・・・飛び出すハートオーナメント
 

 


しかも、いろいろな病院のホームページを拝見しますと、対象年齢は

「6ヶ月~15才(中学三年生)まで」

となっています。


ろっ、6ヶ月 ポーンハッ!?!?!?


(*ようやく「1才半くらいから治療を始める子が多い」とおっしゃったMちゃんの主治医の先生の言葉が正しいことが理解できました驚き

 


 

 


これまで、記事の中で何度か子どもの健やかな発達にいかに睡眠が重要であるかについて触れさせていただきました。

 


ここで新たに記載さていただきますと・・・:

・1日の40~50%を占める睡眠は、ただ脳を休めているだけではない。

 60億個ある脳細胞と脳細胞をつなげるシナプスを形成したり、記憶を強化して

 定着させたり、日中にたまった老廃物を除去するなど、健康な脳の発達には

 十分な睡眠が欠かせない。
・持続する子どもの睡眠障害は、脳機能を低下させ、記憶力・判断力・注意力・意欲を

 低下させる。
・自律神経機能も乱れて、体調不良になり、体力も低下する。

・睡眠障害が続くと昼間の「疲れ」や「だるさ」が増し、「生あくび」や「授業中の居眠り」

 などの症状が出てくる。さらに進行すると、微熱や頭痛、腹痛を引き起こし、ついには

 「成績不良や学習障害」「抑うつ傾向」が出はじめて、最終的には昼夜逆転などにより

 「不登校」につながってしまう。
・体の中では、炎症性サイトカインの上昇、メラトニン合成酵素活性の低下などが

 観察される。
・これらの結果、他の子に比べて“出来ないこと”が増えるなど、子どもの発育・発達に

 大きなマイナスの影響を及ぼしうる。“出来ないこと”が増えてしまった子どもでは、

 自己評価が下がり、自信を失ってしまうこともある。

・睡眠障害は発達障害児(広汎性発達障害:PDD、注意欠陥/多動性障害:ADHD、

 学習障害:LD)に合併しやすいことが知られている。

・逆に睡眠障害が、これらに類似した症状を出現させたり、これらの症状をより悪化

 させたりもする。
・実際、 睡眠障害を治療することによって情動行動が減少し、コミュニケーション、

 注意の問題、知覚過敏が改善したり、言語発達に繋がった症例も報告されている。

 


つまり、睡眠障害が発達段階の子どもの心身に及ぼす影響があまりにも大きいだけに、漫然と

「うちの子はあまり寝ない子なんだよね」

と見過ごすのではなく、なるべく早く専門外来を受診して睡眠障害を改善させることが、その子のこれからの人生のためにいかに重要か・・・ということなのですね。




ちなみにJさんのお孫さんは、あれからすぐに睡眠外来を受診され、初診でアタラックスPを処方していただき、少し眠れるようになっているそうです。


良かったです!!