今日は、1/20~21に1泊2日の入院をして受けた検査:nPSGとMSLTの詳しい結果について分析してみたいと思います。(あくまでも素人なりに・・・ですが)
補足:
実際の検査入院時の記事はこちらになります:
1/21 ルポその1:娘が検査に行ってきた・PSG検査
1/22 ルポその2:娘が検査に行ってきた・MSLT
具体的な検査方法についての記事はこちらになります:
1/19 明日いよいよ検査入院・・・PSG検査とMSLTとは
2/4 『正常な睡眠と脳波』って?
…検査結果を理解するための予習・その1
2/5 『ナルコレプシーの睡眠と脳波』って?
…検査結果を理解するための予習・その2
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意味がよく分からない上、特に睡眠経過表は小さくて薄くて見にくいのですが、一応いただいた解析結果をすべて載せておきたいと思います。
ただA4で6枚もあって場所をとること、またこの記事を読みながらでも見やすいように(私はいちいちスクロールして戻るのが面倒な人・・・)、これとは別の記事にして結果だけをあげてみたいと思います。
(余計に見にくいかも…? ←私ってこのへんの気遣いがいつも空回りというか逆効果というか・・・お許し下さい🙏)
★2/9 これが睡眠障害の検査結果です(nPSGとMSLT)【画像編】
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まずは2枚目にあります『④睡眠効率』『⑤無呼吸低呼吸指数』『⑥PLM指数』の値が正常であることから、大前提として、夜間の睡眠を妨害して日中の眠気を引き起こすような(つまり睡眠不足から二次性の過眠症を引き起こすような)閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)やレム睡眠行動障害、むずむず脚症候群などの疾患は娘にはなさそう、ということが分かりました。
(ちなみに先生からは「むしろ良く眠れている方」だと仰っていただきました)
そして。
何度も転記して申し訳ありませんが、DSM-5におけるナルコレプシーの診断基準のうち、nPSGとMSLTに関係する部分は以下です。
『B3.
①夜間のポリソムノグラフィ(nPSG)でレム睡眠潜時が15分以下、
②睡眠潜時反復検査(MSLT)で平均睡眠潜時が8分以下、および
③同MSLTで入眠時レム睡眠期が2回以上認められる。』
これらについての娘の検査結果は、
①のレム睡眠潜時は「40.5分」(→2枚目参照)
②の平均入眠潜時は「6.00分」(→6枚目参照)
③の入眠時レム睡眠期(SOREMP)は「0回」(→1枚目参照)
という値でした。
(ただし②については検査中に工事の騒音があって眠りづらかったので、本来ならもう少し短いのでは!?)
つまり今回の結果から分かったのは、
「娘の検査結果は、診断基準のB3を満たしていない」
ということでした。
ということは、娘はナルコレプシーではないってことですね!🎉
――あれ?
では、どうして先生は「グレー」だと仰ったのでしょう??
①と③は当てはまらないものの、②が当てはまっているので、”半分満たしている”という意味で「グレー」なのでしょうか?
そこで、少しだけ調べてみました。
実は『ナルコレプシー』にはもう1つの診断基準があるそうです。
2014年に発行されたICSD-3(睡眠障害国際分類第3版)によるものが、それです。
(ICSDといえば睡眠障害に特化してて、ちょっとマニアックなので避けたやつですね )
ちなみにICSD-3では、ナルコレプシーは以下の2つのタイプに分けられています。
・タイプ1:情動脱力発作を伴う睡眠発作
・タイプ2:情動脱力発作を伴わない睡眠発作
そしてこれらのそれぞれに、別の診断基準があります。
【ナルコレプシー1型の診断基準】
以下の基準AとBを満たさねばならない:
A. 患者は、少なくとも3ヵ月にわたって、日中に耐えられない眠気や日中の居眠りがある。○
B. 以下のうち一つまたは両方がある。
1. 情動脱力発作(”本質的な特徴”のもとで定義されたもの)×と、標準的な方法によって実施されたMSLTにて、睡眠潜時の平均が8分以下○で、2回以上のSOREMPs(睡眠時レム睡眠期)が認められる×。前夜のnPSGで認められたSOREMP×は、MSLTにおけるSORENPsの1回分に置き換えてもよい。
2. 免疫反応性によって測定された髄液オレキシン濃度が110pg/ml以下、あるいは同じ標準的な測定方法による正常コントロール群の平均値の1/ 3未満であること。なお情動脱力発作がない場合でもこの2.を満たせばタイプ1と診断可。△(→検査未実施)
娘の場合、「情動脱力発作」は一度も起こったことがありません。
なので必然的に『タイプ2』の可能性が高い、ということになるのでしょうか。
(B2の髄液検査は行っていませんが、以前も書きましたように侵襲性が大きいため、現在この検査をわざわざ行う病院はほとんどないそうです。)
次に、『タイプ2』の診断基準を見てみたいと思います。
【ナルコレプシー2型の診断基準】
以下の基準A-Eを満たさねばならない:
A. 患者は、少なくとも3ヵ月にわたって、日中に耐えられない眠気や日中の居眠りがある。○
B. 情動脱力発作はない。○
C. 標準的な方法で実施されたMLSTが2回未満のSOREMPsを示す○。あるいはMSLT前夜のnPSGでSOREMPが認められた場合、MSLTではSOREMPが1回もない○。
D. 以下のうち、少なくとも一つを満たす
1. MLSTが平均8分以下の睡眠潜時を示す。○
2. 24時間ポリグラフ睡眠検査(慢性的睡眠遮断を修正を修正後の)で24時間睡眠時間の総時間が660分以上
(12-14時間が典型)、あるいは、患者の手首アクチグラフによって、少なくとも3回の睡眠記録
(平均して無制限の睡眠を伴う少なくとも7日以上)に関連している日中の耐えられない眠気や日中の居眠りがある。?(→24時間PSGは未実施)
E. 睡眠不足症候群は除外される(夜寝る時間を増やす適切な対処の後でも眠気の改善が見られず、必要と考えられる場合、少なくとも1週間の手首アクチグラフによって確認されることが好ましい。)△・・・睡眠不足による二次性過眠症の可能性は否定はできない。
F. 過眠または/かつMSLT所見が、他の睡眠障害、他の医学的・精神科的障害、あるいは薬物や治療薬の使用によって、より明快に説明できない。△・・・E.に同じ
・・・なんか、『タイプ2』のD1まではほぼ完璧に当てはまっているとはいえ、何となく決め手に欠ける気が💦
ただ、さらに調べてみますと、下記のようなことが分かりました。
●ナルコレプシーのタイプ1において、sPSGにおけるSOREMPは特異度が高い(99.2%)反面、感度は低い(50.2%)。
つまり診断基準には含まれているものの、SOREMPはナルコレプシータイプ1にでさえ必ず出現するわけではない。
⇒では、娘はSOREMPが0回だったからといって、ナルコレプシーを否定はできないのですね・・・
●ナルコレプシー患者では、夜間睡眠の浅眠化と分断化が認められる。その傾向はタイプ1の方がタイプ2よりもより顕著である。具体的には、日本人のタイプ1患者では、中途覚醒時間(WASO)が11.9%(結果2枚目の⑦、娘の場合は6.4%)、睡眠段階N1が15.6%(結果2枚目の⑧、娘は4.3%)と有意に長い。(注:タイプ2でのデータは見つけられませんでした)
⇒これに関しては娘は正常! やっぱナルコレプシーじゃないかも!
●MSLTにおけるSOREMPは、タイプ1に比べタイプ2では再現性が低い。平均入眠潜時(6枚目の②)もタイプ2では変動が大きく、特にタイプ2の診断では複数回検査を実施すべき。
⇒1回の検査でばっちり「8分以下」をたたき出した娘は、やっぱりナルコレプシー・・・? (何なら娘は「コツを習得したので、今はもっと早く眠れる!」とかほざいてますし)
というわけで、ここまで調べて初めて、ようやく先生が「グレー」だと仰った意味が分かりました。
要するに、症状についてはナルコレプシーの診断基準を満たしている娘の場合、
入眠時レム睡眠期(SOREMP)が0回だったとはいえ、平均入眠(睡眠)潜時が6.00分だった時点でナルコレプシーは否定できない
という結論のようです。
ですが最後に重大な事実を発見・・・。
ICSD-3の診断基準では、タイプ1の方は「情動脱力発作」あるいは「髄液中のオレキシン濃度」という非常に特異性の高い項目が含まれています。
それに比べいまいち客観的な決め手に欠けるタイプ2の診断には、
E. 睡眠不足症候群は除外される(夜寝る時間を増やす適切な対処の後でも眠気の改善が見られず、必要と考えられる場合、少なくとも1週間の手首アクチグラフによって確認されることが好ましい。)
F. 過眠または/かつMSLT所見が、他の睡眠障害、他の医学的・精神科的障害、あるいは薬物や治療薬の使用によって、より明快に説明できない。
この2項目が非常に非常に重要になってくる、ということです。
先生から「ロングスリーパー」と言われた娘は、Eにあります『睡眠不足症候群』に必然的に当てはまってくると思われます。
またFにある「他の睡眠障害」というのは、原文には具体的に『例えば睡眠不足症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、睡眠・覚醒相後退障害』と記載されているようです。
*かつての記事で私は間違った推理をしていましたが、間違いなく睡眠相後退症候群とナルコレプシーは合併し得ず、別個に存在する疾患のようです。
じ…じゃあ、娘はFにも当てはまるかもしれないではないの!!
また娘が本当にADHDだとしたら、これもFに含まれると思われます。
そもそも、娘にとって唯一ナルコレプシーの診断基準に客観的に合致している”MSLTで入眠(睡眠)潜時が8分以下”は、ナルコレプシーに特異的なものではありません。
あくまでも「日中の眠気の強さ」を見ている値なので、EやFのようなナルコレプシー以外の病態により睡眠不足があれば、同じように”8分以下”の結果が出てもおかしくないのです。
――というわけで、今日の結論。
娘がナルコレプシーかどうかは、娘が睡眠相後退症候群かどうか、さらにはADHDかどうかにかかっている。
睡眠相後退症候群かナルコレプシーかは、おそらく先日いただいた薬(ロゼレムとカフェイン)が有効かどうかで判断することになるのでしょう。
そしてADHDかどうかは、2月20日からの発達障害外来の受診にかかっています
それまでの間に、ADHDと睡眠障害との関係についてもっと調べてみたいと思います。