猫⑦
猫になるとできることが増えたり、減ったりすることに気が付いた。僕の人生を構築してきた色んな趣味や娯楽が一切できなくなった。壁に立てかけたギターも、何十枚も積み重ねられたCDの山も、何だか自分のものとは思えなくなってしまった。猫の自分がロックのCDをCDデッキに入れて「くぅ~、やっぱりジミー・ペイジは最高だぜ!」なんて、ひどく滑稽な話だ。
しかし反面、もし僕が今の状態で彼女にすり寄ると、彼女はきっと僕を優しく抱き寄せるに違いないだろう。僕は彼女のことが大好きだ。よし、彼女に会いに行こう。
猫⑥
詩を読むのが好きな彼女は僕より2つ年下だったが、器量が良かった。面倒見も良く、僕が甘えてしまう毎日を過ごしていた。僕がさみしがる時には、電話越しに寺山修司を読んでくれた。そのひと時が僕は好きだった。彼女は一音一音をきれいに読んだ。
ぬいぐるみをくれたのは、僕が店で見かけたのを覚えてくれていたからだったに違いない。彼女はまた、チョコレートやキーホルダーをよく僕にプレゼントしてくれた。彼女曰く、ハッピーサプライズ、なのだそうだ。
彼女との思い出を紐解いて行くうちに、一つの答えにたどり着いた。僕と彼女は昨日喧嘩したばかりだった。
猫⑤
とりあえずぼくはカップルのところまで戻り、どうするべきか尋ねてみた。
「ニャーニャーニャニャー」
「君は君が思っているよりも人間さ。すぐにだって日本語を喋れるし、二足歩行だってすんなりやれる。昨夜までの自分を思い出してごらん」
ぼくは瞼を閉じ、「人間」だったころの自分を思い浮かべてみた。
「ニャーニャーニャニャー」
「君は君が思っているよりも人間さ。すぐにだって日本語を喋れるし、二足歩行だってすんなりやれる。昨夜までの自分を思い出してごらん」
ぼくは瞼を閉じ、「人間」だったころの自分を思い浮かべてみた。
