食事処に行くのに、エレベーターに乗った。

…以前だったら…

エレベーターは密室。


でも、何もない…

仕方ないかっ…

それより何より、同じ物を同じ時に、良いなぁって思えた事の方が嬉しかった。

旅館の中の土産物屋に売っていた、苔に植わっている観葉植物。

簾のかかった和室に風鈴が風に揺られきれいな音色を奏でながら、鯉が泳ぐ小さな池の脇に、たくさん置いてある盆栽。
その脇に、チョコッと顔を出しているかのような、苔に植わっている観葉植物。

そんなイメージがピッタリで、見た瞬間から観葉植物に優しさを感じた。

食事は旅館ならではの、ごく普通の食事で、ちょっとの量をたくさん出してくる。和食のフレンチ方式?
大して食べたつもりもないが、すぐにおなかいっぱいになってしまった。

お酒が飲めない私だけど、食前酒に出されたお酒と、彼が頼んで飲んでいた梅酒を一口飲ませてもらった、この2つのお酒はとっても美味しかった。

和風フレンチ方式の料理を頂きながら、会話も弾んだ。

色んな共通の人の話。

今回はその話だけだったが…

会話が弾む度におびえていた…

やっぱり避けて通りたい、私達の過去の話。
そして…

連絡を取っていない間の一番聞きたくないコワイ話。

私も、浮かれた話が無いわけではなかった。

けど、話す必要のない話…

先に話したが、彼氏なのか、友達なのか、たまたまなのか、元カレになってしまうのか。

その話すら、怖くて


…キクコトモデキナイ


会話に結論が出てしまう事にビビりながらも、たわいもない会話をしながらの食事。

彼と一緒ならば、喋らなくても気持ちは幸せだった。

オネガイダカラ、ヨケイナハナシハ、イマハシナイデ。


一緒に居られる
アタシノ、コノシアワセナキモチニ


キヅイテ!



食事も終わり、お茶を頂きながら、また観葉植物の話になった。



『そろそろ行こうか!』
『うん!』

『どぉも。御馳走様でした。』

やばっあせるあせるあせる
またしても…
やってしまった…

元気印のご挨拶。

この勢いで、彼に

好きって言えたらどんなに気持ちが楽なんだろうか…

そして、角を曲がって

目的地のお土産屋さんが見えてきた。
仲居さんがお茶を入れてくれて、一通りの説明をし部屋を出て行った。

昔だったら…

『やっと2人きりになれたね』

って言葉があったのに…

なかった…


早速テレビをつけて、番組表を見ながらチャンネルを変えていった。

昨日のバレーボールのテレビを見始めた。

スポーツ観戦も好きで、サッカーや野球など一緒に観にいったりしていたので、何の違和感もなくバレーボールを観ていた。

『夕飯前に一度お風呂入ってこようか?』

『そうだね。でも鍵どうする?』

いつも長湯の彼を考えたら、私の方が先に出るであろうと思い、結局鍵を受付に預けた。


しかし…

日々温冷浴を楽しんでいる私は、思う存分に温泉で温冷浴を満喫!

湯あたりすることもなく、気付いたらかなりの時間が過ぎていた。

マズィあせる

髪の毛を乾かしポニーテールにして、浴衣を着て…

ってか、どっちを上にするんだっけ?

お風呂から上がりやっとひいてきた汗が、次は冷や汗になりながら、携帯で浴衣の着方を調べた。

焦れば焦るほどかいてくる汗…

脱衣所には私一人。

携帯も上手くボタンが押せない。

助けてぇあせるあせるあせる


何とか浴衣の絵を見つけて、浴衣を着ることができた。


『まだ出ていないだろうなっ』

独り言を言いながら、取り敢えず部屋へ行くと、既に彼はお風呂から出て部屋で涼んでいた。

『あれ?早かったね!』
『随分長湯だったね!もう部屋にいると思ったら居ないから、結局受付まで戻ったよ』

『あっごめんねっ』

『夕飯の時間だから、下に行こう。鍵を取りに行く途中に土産物屋もあったし財布持って行こうよ。』
『苔に植わっている観葉植物もあったよ』

『あっ見た!なんか良いなぁってチェックインした時に思っていたんだ』
『あたしも!』

『じゃ、帰りに2人で買ってどっちが枯らさないで育てられるか競争しょっか!』

『うん。良いねぇ』

そして食事処へ向かった
なんで涙がでたんだろう。
なんで泣けてきたんだろう?

車に乗り、沢山入るCDケースから取り出された、徳永さんのCD

カヴァーの曲
歌詞に泣けたのか、明日への不安に泣けたのか?
涙は目の中から溢れ出さないように、泣いているのがバレないように、目の中に涙を留めた。

もちろん、ジャズを堪能した原っぱでも、寝ているとわかっている彼の前で、涙を流すことはなかった。

一時間位経っただろうか。
彼が目を覚ました。

『次の人聴いたら一回旅館へ行かない?』

彼が言うので、原っぱから立ち上がる準備を始めた。

『ラストの人は聴きたいなぁ!』

『じゃあチェックインしてから決めようね』

『行くかぁ!』

結局次の人を聴かずに、原っぱを去った。

駐車場に行く途中の池。
亀?
ブラックバス?
ブルーギル?

『釣りしたいなぁ…
車に竿あるんだよなぁ…』

『キャッチ&リリースだよ!まぁ夕まずめだっけ?釣れるかもね!』

私は知っている言葉を並べてみた。

『この時間って案外釣れるんだよなぁ』

と言いながら釣り竿を取りに行くのかと思いながら駐車場へ向かった。

結局、飲んでしまった彼の代わりに運転。


…えっ?この車、ウンテンシテイイノ?…

今まで、付き合っていた頃一度も運転させて貰えなかった。
しかも、この車私と旅行に行く前に納車になり、一番始めに私が乗る筈だった助手席。
たまたま忙しくて、旅行の一日前にドタキャンになり、それから2人の関係が全て白紙になってしまった過去がある。

ワタシヲシンヨウシテイルノ?

コノカンケイ
イツマデツヅクノ?
ワタシハ…
カレノナニ?

マズい。
また涙が…


緊張しながら運転した。

道なんて覚えてないよ。
でも何とか旅館に到着。

チェックインして、部屋に案内された。

部屋に行く途中、苔に植わっている観葉植物を発見。


部屋に入り、仲居さんが
『旦那様は大きいですから、浴衣は…』
旦那様かよあせるあせるあせる
『奥様は普通でいいですね』
おっとあせる
お姉さんって言ってくれぇ
奥様と旦那様ねぇ…

やっぱり年齢が年齢なのでそぉ視られても仕方ないのか。

でも、この仲居さん。様子が変なのはわかったよね。
きっと。

なんて、彼に言えるわけもなく…

心の中で独りで会話していた。

やっぱりディフェンス。
オフェンスになりたい。

だけど…

勇気がない。