部屋は節電の為なのか、室温28度
扇風機が回っていた。


まだ寝ないのに…

布団まで敷いてあった。

旅館って親切だけど、このご飯後に敷いてある布団がとっとと寝てくれと言われているみたいで、あまり好きではない。


もう少し、テーブルを挟んで会話したりくつろいだりしたいのに。


彼は布団に横になり、借りてきた分厚い本を読み始めた。

が…

3、4ページ読んだ所で

『これ読んだ事ある。結末は忘れたけど、読んだなぁ…でも売っちゃったから』

『たくさん読んでるからねぇ』

『あっ、でもこれ面白いし、もう一度本屋で買おうかな…』

『売った本屋で自分が売った本を買ってきた方がいいね。また売ることになるんだから!』

『あぁ~』

と言いながらも不満げな顔をして本を読み始めた。

かと思ったらテレビをつけて、

『見たいのみてていいよ!』

はぁ…
言われなくてもそうしますよ。
本を読んでいる時間は暇だしね。

派遣のなんとかってドラマをやっていたので、見てしまった。

私は派遣ではないが、自分とかぶる部分があって、共感しながら見ていると…

『本を読んでいたら眠くなっちゃった。でもダウンタウンは見たいから、寝ちゃったら起こして』

と言い、彼は寝てしまった。

まぁ、いつものことでありまして、眠いときは寝る。

子供の様なところがまた不思議な魅力なのです。

そして手が空いた私。

お風呂って気にもなれず、なんとなく穏やかな家庭生活を想像しながら派遣のなんとかってドラマを見ていた。


日々の生活の中で、目まぐるしい仕事の数。
パソコンに向かう毎日で手を止めるのはクレームの電話が鳴った瞬間。
それ以外は、お局様のお話にお付き合い。
だけど、仕事は手を抜かない。変な負けず嫌いなので、ミスがないように試行錯誤しながら、仕事をこなそうとする日々。
頑張ってできあがった資料は
自分のお手柄ではない。
気がする。

上司に渡す。そこで私の仕事はおしまい。

出来上がった資料は上司の手で加工され、会議に使用される。

たまたま見た場面が私と重なってみえた。


テレビの途中だったけど、彼を起こす時間になった。

私も眠いよ…

とは言わず。

『時間だよ。始まるよ。おはよぉ!起きてぇ』

揺さぶったら、子供の様に起きて、

『寝ちゃった』

っと寝るから起こしてって言ったのに…

そこがまたカワイイ。

カワイイって年齢でもないのに。

私はダウンタウンを見ながら、ケタケタ笑っていた。

普段この番組を見たところでケタケタ笑う事はないのに、人が増えると笑えてしまう。
私ってやっぱり淋しい人間なのかなぁ…
旅館のフロント脇にそのお土産屋があった。

食事処からちょっとの距離なのに、ルンルンとはちょっと違うドキドキがあった。


が、2人は
何故か…

観葉植物に一目散に行くわけでなく、まずはお土産屋の店内を見て回った。

観葉植物に行ってしまうと、お土産は見ずに終わってしまうと言う心理からなのか…

私は店内でこれは?
じゃあこれは?
ってイチャつきながら買い物をするのが苦手。

買い物は1人で楽しみたい。
女の子っぽいのは苦手で、だけど…
心は女の子。

お土産屋さんの店内で一番はじめに見つけ立ち止まった場所。

どの地方のお土産屋に必ずと言って良いほど売っている、ピンク色の石がついた恋愛成就の御守りのストラップ。

どこに行っても必ず買うか迷う、このストラップ。
また立ち止まってしまった。

恋愛成就
私達の関係…

彼氏?元カレ?友達?
今は何なんだろう…

そして、私のこと今はどう思っているんだろう。

眺めながらつい考えてしまった。


ふと我に返り、こんな所で立ち止まっている私に気付かれたくなかったので慌てて、温泉饅頭の置いてある場所に移動した。

色気より食い気ではないが
食い気の振りをした。
食事の後でお腹いっぱいなので、饅頭なんて見たくもないのが本心。

店内の別の場所にいた彼も饅頭の場所に来た。

彼も同じ気持ちなのか

『この饅頭結構おいしかったよ』

『へぇ~』
お腹一杯の私には美味しい饅頭には興味が無かった。

そして、饅頭の隣。
正確には通路を挟んだ隣側に観葉植物が売っている。

『これこれ!』
興味のない饅頭から話を変えたのは彼だった。

『そうそう!』

『良いよねぇ』

『なんかホッとするよねぇ』

『人って最後は盆栽にいくんだって』

『えっ?』

『若いうちは切り花で観葉植物で歳を取ると盆栽』

『ってことは…これは中間地点?』

『あっ…』

『これさぁ、今日買っても明日に買っても一緒じゃない?ならば、部屋でビニールに入れられちゃうより明日にした方がよくない?』

『そうだね。じゃ明日のチェックアウトの時でもいいよね』

『それで決まり』

『あっあそこに本がある。貸してくれるのかなぁ?』

彼は本が大好き。

分厚い文芸書を買って旅行中も必ず本を持ってくる。が、読むことは少ない。

その貸してくれそうな本棚から2冊本を選んだ。
私には興味もわかない、分厚い本。

『読み切れないでしょ!たくさん借りても。』

『大丈夫!』

はぁ…

知らない間に速読でも身につけたのか?

その2冊の本を手に部屋に戻った。