彼と並んで歩く道

こんな所に
その
お店ってあるの?


なんとなく市場っぽいけど…


手は繋がなかった。

猛暑のせいで、右手はタオル。左手は扇子。


その扇子で彼と私を扇ぎながら歩いた。


『あ~ここ!好きな魚貝類買って、ここでバーベキューするの』

『へぇ~面白そう!』

『でしょ!』

『なに買う?』

『取り敢えず、飲み物買ってきて!俺は、何か探してくるから』

『うん!』


『いらっしゃい!バーベキューですか?』

『あっ、はい』

『じゃこの海老とこのイカの口。これ最高だから買っていきなよ!』

『えっ?取り敢えず飲み物を…』

いつもの威勢のいいお姉ちゃんではなくなっている私

お店のお兄ちゃんの威勢の良さに負けたのか?
いきなり連れてこられた見ず知らずのお店への雰囲気への戸惑いなのか?

右を見ても左を見ても、彼の姿が見えない。

『あっ、今聞いてこないと、私じゃ…勝手に買えないし』

『ああ!旦那さんに聞いてからかぁ!じゃ、旦那さんが来たら言ってあげるよ!』

ってか、旦那かぁ…

まぁ夫婦ごっこでも良いかな。


『うん!ゴメンね』


別のお店で買い物を済ませた旦那が

イヤイヤ

彼が戻ってきた。

すると店員が
『バーベキューですか?
』

『あっはい。』

『じゃ、テーブルはここで』

『荷物置いちゃいなよ!』

『うん!あっ、あそこのお店でイカの口ってやつが売っているよ!』

すぐさま店員が近づいて来た。

『あっ旦那さん!ちょっとこれ見ていきなよ!これ最高においしいから!先ずは食べてみて』

『はぁ』

旦那さんもちょっと困り顔

『取り敢えず野菜買ったらで』

と言い隣の八百屋へ

結局暑さにやられているせいか、キュウリを買った。
冷えたキュウリ。

それを持ち席についた。
が…

彼が

いや、旦那さんが見当たらない。

あれ?


『これ!』

『あっ買ったんだ』

『うん。これは生で食べると美味しいって、このイカの口は焼くと旨いって』

バーベキューと言っても卓上のバーベキューコンロ

彼はこの他に
ハマグリや海老など買っていた。

見せ物のバーベキューが始まった。
この道って…

『ねぇ?この道ってさぁ箱根駅伝の道だよね?』
『箱根駅伝興味ない』

『興味なくてもいいけど、あの感動の箱根駅伝の道だぁ♪超嬉しいんだけど♪』

『だって長いじゃん』

『そうだけど、一生懸命走ってるんだよ!それに…』
かなりの坂道

遠心力で傾く体

『それに!この坂道必死に走りながら登って下って、あっ!この旅館。テレビで見た!箱根駅伝の復路で見かける旅館だぁ♪』

箱根駅伝のおかげで
すっかり帰り道って事を忘れていた。


そして小田原に近づいて来た。

ここが小田原って分かったのは、

かまぼこの有名店。
ここも箱根駅伝の名所?

『海の近くに行くよ!』
『うん。気分は魚食べるってなってるから、今お肉って言われても無理だよ!』

『大丈夫。一度行ってみたかったんだよね!市場で魚を買って、その場で食べられる所があるんだよ!』

『へぇ~面白そう!』

『でしょ、テレビで見て一度行ってみたかったんだ』


『多分この辺、ん~車どこにとめようかなぁ…あぁ、ここにしよう!』


そして、海の香を胸一杯吸い込んで

その、市場へ向かった。
『魚いた?』

『あ~結構いたよ!』

『釣りやりたくなっちゃった?』

『魚は見えていたけど、あまり釣れてなかったからなぁ…』


車のエンジンをかけ、木陰の駐車場だったが、車内は蒸し風呂状態だったので、エアコンをかけ冷えるのを待ちながら箱根神社の景色を目に焼き付けた。


『そろそろ乗ろっか!』
ちょっと冷えた車内


流れている曲はジャズだった。


何故だか
山と
この車には
ジャズが似合う
気がする。


時々
なんで出会えたんだろう?
なんで付き合えたんだろう?
なんで私なんだろう?

そう思う時がある。

ただの知り合いだった

お互いがお互いを1ミクロンたりとも興味がなかった

喋ったことも一度も無かった2人



その10年後
再会
その時既に
お互いが
同じタイミングで
気になる存在に
変わっていた


その2年後


あの時は
素直に
『好き』
って言えた。


なんで
今は
その2文字が
言えないんだろう…

たった2文字が


自信がない。

自分に自信がないのもあるが

彼が私の事を
好きであるって事に
ジシンガナイ…

だから
言えない

解っている。

でも
攻めるわけでもなく
守っているわけでもなく

怖くて
逃げている
だけ…



ジャズを聞きながら
逃げている事に気付いた。

神様
ありがとう。

気付かせてくれて。


『あれ?こっち行ったら元の道に戻っちゃうじゃん!』

『あっそうだね。来た道に戻っちゃう』

『どこかUターン出来るところ探さないと』

『あっここは?』

『ん?何とかなるかも』

ハンドルを切りバックして、何とかUターン


『ここから小田原へ向かうから』

『小田原ねっ』

確かに関東からの修学旅行とは、逆周りの見学ルートだ。

海

山に海。


今日を目一杯楽しもう!
そう思ったが…

また、涙が…

もっと一緒にいたい。

帰り道なんだ。

気付いてしまった。

あと何時間一緒にいられるんだろう…