「地球にやさしい」とは? | toのブログ

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 先日、某新聞紙上で「地球にやさしい」という言葉を目にしました。「地球環境を守る」や「地球に良い」も同じようなことを意味しているのでしょう。言葉通り捉えるのなら地球をどのような環境から守るのか?どうすれば地球からやさしいと思ってもらえるのか?となります。環境問題と言えば公害、地球温暖化、生態系の攪乱等が挙げられるでしょう。その原因であるゴミ、汚染物質、肥料の流出、温暖化の原因である二酸化炭素の放出を減らそうとしています。一方で、公害や温暖化で地球は壊れてしまうのでしょうか?

 地球の歴史をたどります。原始太陽系には惑星は存在せず、小天体やチリなどが衝突、合体を繰り返してだんだん大きくなり惑星になったとされています。そのうちの一つが地球です。誕生した直後は高温でドロドロの溶岩の玉だったようです。地球が生まれたときの大気の主成分の一つは二酸化炭素であったことがわかっています。現在の金星の大気は二酸化炭素が高気圧で存在し初期の地球大気に近いと考えられています。その後、長い時間をかけて冷めて、水が液体として存在できる温度まで下がって海が形成されました。そして二酸化炭素のほとんどは海に溶け込みました。さらに時が過ぎて二酸化炭素を光合成によって固定する光合成生物が現れました。それにより二酸化炭素は現在の濃度にまで下がりました。一方、空気中にはこれまで存在しなかった酸素が出現しました。

 酸素は当時生きていた生物にとって大きな影響を及ぼしました。前述のように地球が生まれて間もない頃の大気は二酸化炭素が主成分で酸素は存在していませんでした。そのため約38億年前に最初に現れた生物は酸素の無い環境で生きる嫌気性生物であったと考えられています。約24億年前に光合成生物が発生して二酸化炭素を吸収して酸素を排出するようになりました。同時に酸素を呼吸に利用する生物も現れました。酸素を利用できるということは酸素を使う呼吸(好気呼吸)は酸素を使わない呼吸(嫌気呼吸)よりも約20倍もエネルギー生産効率が高まるとことです。このエネルギーを利用して生物は大きな進化を遂げました。

 このように書くと酸素が生物進化に大きな貢献をしたと思われます。しかし見方を変えるとこれまで存在しなかった物が出現したことになります。熱せられた鉄などを酸素の中に入れると激しく燃え上がるように酸素は非常に反応しやすい気体です。多くの物をことごとく酸化させ錆びさせてしまうので猛毒と言っても差し支えないでしょう。酸素を利用して生きるための大きなエネルギーを貰っている人間でも、呼吸など制御された利用からこぼれ落ちた酸素は活性酸素として老化や成人病の原因になるなどの悪さをします。そのため当時の嫌気性生物にとっては最悪の大気汚染であったろうと想像します。実際に酸素のために嫌気性生物はほぼ絶滅して海底や地中深などの酸素の少ない場所に追いやられてしまいました。この大酸化イベントの証拠として酸化鉄の堆積層が多くの場所で見つかっています。

 産業革命以降の急激な二酸化炭素濃度の上昇が問題とされていますが、初期の地球は遙かに高い二酸化炭素濃度と高温を経験しています。しかしこれはかなり極端な例なのでもう少し近い状況を挙げます。数億年前の全球凍結を終わらせたのは二酸化炭素による温暖化とされています。直後にはその反動で平均気温が60℃まで上昇したと考えられています(現在の平均気温は14℃)。2~3℃上昇するだけで大問題になるのにこれでは人類は生きていけないでしょう。そのような高温環境下では水は高速で循環していたようです。たぶん現在の台風や暴風雨とは比較にならない程激しかったかもしれません。ちなみに全球凍結は3回はあったようで、その後、生物は大きく進化しました。

 汚染物質が環境に放出されると生態系が攪乱さるでしょう。悪くすると種の絶滅をももたらすかもしれません。そのため生物多様性が失われるとの指摘があります。たぶん多様性が失われた世界は味気ないでしょうし住みにくいでしょう。しかしもともと出来たばかりの地球には生物はいなかったのです。生物が現れた後も絶滅と進化を繰り返して今に至ります。地球にとっては生物が何しようがどうでもよいようで、「絶滅も進化も勝手にやってくれ」ですね。

 最初に戻ります。現在の環境とは比較にならない激しい状態を経験した地球にとって「地球にやさしい」あるいは「地球環境に良い」というのは地球のためですか?