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1.はじめに

 名作劇場第1作である本作も本放送は50年前になります。今でも想い出のアニメなどの特番で、最終回の昇天シーンはよく取り上げられています。天使に囲まれてパトラッシュと昇天するネロの表情は穏やかです。一見ハッピーエンドに見えますが本当にそうなのでしょうか?過酷な運命に晒されたあげく死ぬことでしか救われないのでは何ともやりきれないです。原作付きの完成された物語なので結末を変更できないのはやむを得ないです。空に駆け上がって行くオープニングからして結末を暗示しています。しかしここを生き延びていれば少年ネロには明るい未来が待っていたかもしれません。画家として成功を納めたかもしれないです。仮に農家や木こりになったとしても十分にやっていけたでしょう。この悲劇を回避できなかったのか?結末は決まってはいますがあえて回避ルートがなかったかアニメの場面を基に検証してみたいと思います。まずは登場人物の役割を整理してみました。

 

2.登場人物とその影響力

・ジェハンじいさん

 おじいさんがもう数年死ぬのが遅ければ、かなり状況は変わっていたはずです。そのときであればネロは独り立ちできていたかもしれません。死亡時点では1人で生業を立てるには幼すぎました。おじいさんの死が悲劇に直結したのは間違いないです。元々丈夫でないところに絵画コンクールのためのパネルを買うための無理がたたり倒れ、再び立ち上がることはありませんでした。できる限りのことをしてきたおじいさんにこれ以上のことを求めるのは酷と思います。

 

・ミシェルおじさん

 森に住む木こりです。ネロの理解者でもあります。結論から言うと早いうちに彼の元で木こり修行に入っていたら悲劇は完全回避できていたと確信します。ミシェルが怪我をした時、ネロは泊まり込みで介抱しました。それだけでなく、切りかけの大木を自力で切り倒したことはネロの評価を高くしました(切った木は風車の修理具材になりました)。そのとき弟子入りの話が持ち上がりましたが、おじいさんと離れたくないので辞退しました。2度目はジェハンじいさんが亡くなった直後で、仕事がなくなり窮地に立っていましたが、おじいさんの絵を仕上げるために断りました。3度目は絵の完成直後でした。この時もコンクールの結果が出るまで(3週間後)という期限付きで断りました。この先延ばしが裏目となりました。

 

・ノエルじいさん

 腕の良い風車の修理職人です。ネロの理解者でもあり、ネロの物事の本質を捉える能力に早くから気付いていました。火事の犯人扱いされたネロの名誉回復に大きな貢献をしました。

 

・コゼツ氏

 アロアの父で村No.1の実力者です。最初にネロに対して悪印象を持ったのは第2話でアロアが森から帰るのが遅くなった原因にされたことです。元々ネロがアロアに近付くことを良くは思ってなかったようで、話数を重ねるにつれてネロを見る目が厳しくなっていきます。そして23話のアロアの誕生日にコゼツが大事にしている壺を割った主犯に思われたことがネロに対する悪印象を決定付けました。追い打ちをかけるように24話の牧草刈りでは一生懸命働いたにもかかわらず鬼の形相で怠け者認定されました。それからはハンスの告げ口もあり、ネロに対する悪印象はどんどん酷くなりました。ハンスから風車の火事の放火犯とされ、それを真に受けたコゼツは村人の集まる中でネロを厳しく叱責します。コゼツを恐れた村人からネロは村八分状態になりました。

 

・ハンス

 村のNo.2らしいですが、強い者にはゴマをすり、弱い者はいじめる典型的な嫌なヤツでした。ネロに対して徹底的に冷たく当たります。息子のアンドレの命の危機を助けた時も御礼すらしません。その非礼ぶりにたまたま居合わせたコゼツが注意するほどです。アンドレが頼りなく、アロアの好感度においてネロに負けていることによる八つ当たりも入っているようです。コゼツにネロの悪口を有ること無いこと吹き込みます。それが功を奏し、コゼツのネロに対する印象はどんどん悪化していきます。最後に村八分状態になったネロに住居の退去を命じます(ハンスは大家です)。吹雪の中、ネロは当てもなく彷徨ことになります。

 

・金物屋

 パトラッシュの最初の飼い主でならず者の雰囲気を醸し出しています。パトラッシュを荷車引きにこき使います。働きが良くないと容赦なく鞭を振るい食事も水も与えない非道ぶりです。使い物にならなくなったパトラッシュをゴミのように捨てても、ネロの手当で回復したとわかった途端、所有権を主張します。結果、おじいさんは大金をはたいてパトラッシュを購入することになりました。そのお金を捻出するための無理が寿命を縮める方向に働いたのは否定できないです。一方でパトラッシュが荷車を引いてくれて負担軽減に貢献したのも事実です。この顛末後もネロたちの障害にならないかと気になりましたが再登場はありませんでした。原作ではこの直後、喧嘩で落命したらしいです。

 

・アロア

 コゼツ氏の一人娘でネロの幼なじみです。ネロに好意を寄せています。ところがコゼツはネロのことを良くは思っておらず、ネロの話をする度に形相は険しくなります。皮肉なことにネロを擁護すればするほどネロの立場はどんどん悪くなっていきました。

 

・ジョルジュ、ポール、アンドレ

 ジョルジュとポールの兄弟は良き友達です。ネロが窮地に陥っても仕事の斡旋をするなど何かと力になっていました。一方、アンドレは物語を通して頼りない感じでしたがジョルジュが鍛冶屋見習いのために去った後はネロの友達になり、父親のハンスの目を盗んでネロに差し入れをするなど存在感が増しました。

 

 単純化すると登場人物は、ネロを理解する大人、ネロに辛く当たる大人、子供たちの3グループに分けられると思います。特にハンスとコゼツの実力者ツートップのタッグを組んだ攻撃は強力で村人たちもそれに倣います。子供たちはできる範囲でネロを支援しましたが所詮子供、できることに限りがありました。物語中盤で木こりになる道を選択していれば悲劇は回避できたかもしれません。絵画のコンクールに挑戦するためにはそこで木こりになるという選択はありませんでした。そこで重要なのはネロの最後の一日です。

 

3.ネロの最後の日

 ネロの最後の日を振り返ってみます。アニメでは最終回を含めた3話で構成されています。その日はコンクールの結果発表日でした。ネロは1等をとって200フランを獲得して絵の勉強に打ち込みたいとの期待を胸に発表に向かいます。残念ながらネロの絵は落選しました。絶望に打ちひしがれてネロは夢遊病者のようにアントワープの町を彷徨います。ポールの慰めの声も耳に届きません。ショック状態のまま雪の降りしきる中、家路につきます。途中、パトラッシュが雪の中からコゼツが落とした2000フランを掘り出し、コゼツ家に届けました。エリーナとアロアから深く感謝されますが、感謝の言葉も暖かい部屋、クリスマスパーティーの御馳走もネロには入ってこないようでした。「おじいさんが待っている」と言い残して引き留めようとする2人を振り切って雪の降りしきる中へ飛び出してしまいました。帰宅したもののクリスマスを期日にハンスから退去を命じられているので、家財を整理して再びネロは吹雪の中、終焉の地であるアントワープの大聖堂を目指します。

 ここでいくつかのポイントが考えられます。天才にありがちなことかも知れませんがネロの視野が狭くなっています。貧しくて学校に通えなかったため、同世代の子供達がどのような絵を描くかに関する情報を全く得られてなかったことも不運でした。もしそのような情報に接していれば自分を負かすかもしれない強力なライバルの存在に気付けていたでしょう。学校に通って切磋琢磨できていればそこまでのショックは受けなかったでしょう(学校に通える環境があれば凍え死ぬというルートは無いという突っ込みは御容赦下さい)。

 ネロにとって第2の不運は強いショックを受けた時に寄り添ってくれる人がいなかったことです。落選のショックで生に対する意欲を失った鬱状態になったと推測します。このような状態に陥った人を一人にしてはダメです。ここに至ってもおじいさんの死去は痛すぎました。

 悲劇の遠因になったかもしれない出来事もありました。発表の数日前、ルーベンスの絵の展覧会が開催されました。ネロは絵を見たいため数日分の食費をつぎ込んで入場券を入手します。展覧会はネロの胸を感動で一杯にしましたが、逆にネロとパトラッシュのお腹は空になりました。それでもコンクールで1等をとるというモチベーションがネロの空腹を駆逐しましたが、パトラッシュの方が先に体力の限界を迎えてしまいました。展覧会が無く、しっかり食べられていれば結果は違っていたかも知れません。

まだあります。お金をコゼツ家に届けた時です。これは最大の回避ポイントだったかも知れないです。エリーナとアロアは感謝して、暖をとって食べ物を勧めましたがすぐに出て行ってしまいました。もう少し2人がネロのことを冷静に観察していれば正気を失っていることに気付けたかも知れません。特に、「アロア、おまえはネロの最大の理解者なのだからここは泣き叫んでも引き留めるべきであったぞ!」と思ってしまいます。仮に数刻引き留めに成功していればコゼツが帰宅し、ノエルじいさんによる名誉回復により状況は一変していたに違いないです。ショック状態の回復にはならないかもしれませんが、とりあえず命はつなぎ止められたでしょう。

 最後のポイントです。自宅に戻ったネロは食器や荷車などの家財道具を整理して退去の準備をします。ここでの滞在時間がもう少し延びていれば捜索に来た人々と遭遇したでしょう。残念ながら貧しいネロの家には家財は少なく、すぐに片付いてしまいました。おじいさんとの思い出に浸るのも早々に切り上げ、出て行ってしまいます。捜索隊とは僅かな差で入れ違いになってしまいました。

 

4.おわりに

 結果が決まっている物語だからと言ってしまうと元も子もありません。それを承知の上であえて検証してみました。「フランダースの犬」のネタとして楽しんでいただけると幸いです。