しかし、
ホキ美術館名品展で気になったのが、写実に対する解釈です。
会場の説明文が意味不明です。
作者の制作に対するコメントも、
モノを写すことに執着するばかりで、修行の域です。
筆踊るようなマチエールもありません。
中に酷いのが影がそのまま黒。
明暗があっても光がありません。
この絵は風景画なのですが、私にはこんな色は見えません。
遠目で写真のようにメリハリがくっきりしていますが、絵の目線とは違います。
さらに、
人物画に表情がありません。
台湾の羅 展鵬(ろ ちゃんぺん)氏の作品の表情は演劇です。
絵肌は印画紙そのものです。
だた一人、青木敏郎氏だけ、マチエールに触れていました。
「ヨーロッパの油彩画はマチエールがあり、絵の具のかけらそのものが宝石のように輝いている。」
彼は若いころ、日本画家中村正義の私的援助で5年間ヨーロッパ留学しています。
青木氏の作品は静物画ですが、対象が画面にしっかりとついています。
余談ですが、
中村氏は日展を脱退し、片岡球子らとグループをつくり、日本画の革新に取り組み、東京都美術館を団体展から都民の手に取り戻す運動をし、「東京展」をつくりました。
団体展の多くは国立新美術館に移り、今日に至ります。
同日、気になった展示が、
『物語る絵』
地元ゆかりの作家たちによる作品展。
ほぼ無名の作家たちです。
原爆投下後の広島に立つアダムとイブ。
笹川流海岸の漁村での行商の人々。
作品にあるのはテーマです。
絵肌の絵の具の筆跡が対象を生き生きとさせます。
『ホキ美術館名品展』の作品を見て残るのは画像の記憶です。
『物語る絵展』を見た後の記憶は、作者の思いです。