偏差値による、輪切りからの脱却

『自己実現』が進路指導のキーワードになります。

1985年、中曽根内閣で文部大臣になった海部俊樹の教育改革です。

フランス、バカロレアに範をとった大学入試共通一次試験の導入も彼の時です。

学力テストによって偏差値がだされ、それに基づいていくべき高校・大学が教師によりまたは自己判断により決定される。

そうではなく、自分がどんな仕事に就きたいか、どんな生き方をしたいのかが先にあり、

その実現のために学び、職業を選択する。

その後学校では『自己実現』をめざし、『夢』を持つことが生きる基本となります。

かつての

家制度により『家』=『職業』

戦後の

『学力』『学歴』がそのまま『職業』選択の基準。

その後の教育改革で、

『関心・意欲』を『新しい学力』観とした平成10年度改訂の新学習指導要領に沿うものです。

家業はもちろん学歴に左右されない『職業選択の自由』を保証するものです。

これはこれで、人材活用と労働力の移転など、プラス面もあります。

一方で、

「何になりたいのか分からない」

「『夢』がみつからない」

「自分が何に向いているのかが分からない」

とうとう、

「『夢』に向かって頑張ったけれども、自分にその力がない事が分かったから、もう何もしない。」

そういった若者や、30代・40代が増えたことも事実です。

『自己実現』とは本来マズローのいうところの心理学用語です。

進路指導とは無関係な転用です。

職業選択はいろんな動機があります。

時には選択どころか、そうしなければならなかったこともあります。

生活のため、喰うため、養うため、

または、その仕事なら今一番儲かる、

とか、名誉とか成功・富など、職業を別の目的実現のために選ぶ場合もあります。

社会が必要とする場合もあります。

はじめは興味のなかった仕事でも、やってみておもしろさに気が付くこともあるし、

社会とかかわる中で、今まで知らなかった仕事に出会うこともあるし、

仕事を通じての出会いから、仕事に就くこともあるでしょう。

人は成長とともにやりたいことも変わるし、今までできなかったことができるようにもなります。

さらに、その人がどんな仕事に向いているのか、

自己評価よりも、

他人の目の方が的を得ている場合も結構あります。

自分の『夢』を追うことも魅力的ですが、職業は『夢』以外にもおもしろいことがたくさんあります。

社会は知らないことだらけです。