夏休みになると教室は自由制作の場になります。
私は倉庫からモチーフを借り出して静物画を描きました。
地と図の描きわけです。
ヨーロッパでは地塗りの上に、
絵の具を薄く重ねてハーフトーンをつくり出し明暗を整えます。
基本陰は塗り込みません。
M教授が私の絵を見て
「このくらい描いちゃうんだね。」
絵を眺めてしばらく黙っています。そして、
「これじゃあだめなんだよ。」
つづけて
「この先にあるものなんだよ。」
私が
「具体的にどんな?」
と聞くと
「それは自分で見つけ出しなさい。」
美術の言語学は常に曖昧模糊です。
教授とのやり取りも、学生同士の会話も
言語を超えたカテゴリーと比喩暗喩とブラックホールです。
描くことだけでは許されない
今日とは違った時代でした。
また、そこがアーティストの課題です。