油彩画の技法書は無数にあります。

その中で。「これが伝統的な」とか「これが本来の」とか銘打って解説しているものもあります。

例えば、

①「グリザイユで描いてから、絵の具でグレイズしてゆく」または

②「下地をアンバーで塗ってから明るいトーンで重ねてゆく」などがあります。

ただ①は18世紀以前のフランスアカデミズムと言われるいわばサロンや官展派と言われた人々の技法です。そこから石膏デッサンが始まり、日本の美大・芸大受験に長く取り入れられ、今日弊害が指摘されています。油彩の歴史からすればほんのピンポイントな特異な技法です。

②は明治前後日本人は下地の意味を理解しておらず、当時の油彩画家は絵の具にアンバーもしくはオーカーを混ぜていました。

いわば明治期の『脂派』です。当時は下地もニス焼けも地と図の関係もよくわかっていない時期でした。

油彩の技法は多種多様で、その時代・絵の具が開発された技術変革・手に入る材料・地域の特性などで複合的に生まれます。

同じ時代でも地方により制作者によりまったく違った技法が存在します。

技法書を見るときは

『こんな描き方もできる』

くらいな参考にするといいでしょう。

技法書に縛られず、

まずは自分で描き、自分に合った画材の使い方を

見つけ出せたらしめたものです。

油彩が発展できたのも、油彩のもつ多様性のあらわれでしょう。