ギルスコットヘロンのウインターインアメリカというアルバムを聴いている時、強烈に物悲しい気持ちになり胸が苦しくなる。なぜなのかとずっと疑問に思っていた。幼少期を思い出すのだが、それ以上深く分かることはなかった。
それが今日わかった気がする。一つの情景を思い出す。それはまだ小学校に上がるか上がらないかの自分が夜父親の隣で寝ていて、ふと目を覚ましてしまう。母親の布団は空で、まだ下の階でテレビでも観ているらしい。父親は俺に宮沢賢治などを読みきかせて、俺が先に眠るとじきに寝る。父親は早寝早起きだった。多分22時くらいに俺はふと目を覚ましてしまう。部屋の気温が寝苦しいのか、少し体調が悪いのかもしれない。隣の父親は少しいびきをかいて熟睡している。部屋は暗く、外からは遠く電車が陸橋を渡るゴトゴトいう音が聞こえる。その時感じる妙な孤独。自分が変な夜の隙間に挟まって身動き取れなくなった様な、隣に父親はいて、その体温も感じるのに遥か遠くへ行ってしまった様な孤独。ハッとして目が冴えてなぜか泣きそうになったあの時を思い出させる音楽だからだ。もはや忘れかけている気持ちだが、強烈に子供心に感じたものを呼び起こす音楽。あの夜の雰囲気に似た音楽。それで、ウインターインアメリカを聴くたびになんとも言えない感情になってしまうのだろう。ちなみに感情って何種類あるのだろう。出来るだけ多くの感情を味わってみたいと今日は思っている。