一口に「シュール」といってしまうのはあまりにもザツでヤボ過ぎる。そんなことは重々承知だ。しかし、どんな言葉を選んでいいやら。嗚呼、しっくりくるようなウマい言葉が見つからない。
ウマい言葉は見つからないが、ただはっきり言えることは、全ての物語が1ページで完結するその潔さにページをめくる手が止まらなかったということだ。
ギャグ漫画然としたフリとオチにニヤけてしまう1ページが多数を占めるなか、不意を突く叙情的な1ページにしんみりさせられたり、起承転結の起承あたりで終わってしまったような、モヤっとさせる1ページに妙な味わい深さを感じ、やはりまたニヤけてしまったり、次はどんな角度から心揺さぶらせてくれるのか期待し読み進めていたら、気づけば深夜2時。それでも次のページが気になって読み進めていたら、深夜3時を回ってしまった。なんて面白いんだ。現時点で大橋先生の最高傑作だ。
とりわけ好きな1ページは「解散」だ。全く思い入れのないバンドの解散ライブへ行くことが趣味で、日夜パソコンで解散しそうなバンドがいないか調べている平田正子が、とあるバンドの解散ライブへ行ったところ、バンドメンバーが解散を撤回し、活動を続けることを発表したためブチ切れた、という1ページではとても収まりきれない展開を見事なコマ割りで仕上げた一作である。
追記
本書の帯に書かれたcero高城晶平の「人生は1ページでは到底切り取りきれないけど、人生の方向が1度ズレる瞬間なら、余裕で1ページに収まることを知った。」という美しくキレのある言葉に惚れ惚れしてしまった。いつか自分なりにアレンジして使っちまいたい。