染井吉野は葉桜になりましたが、入れ替わりで藤と躑躅が満開になりました。今朝の新聞にも磐田市の国天然記念物「熊野(ゆや)の長藤が見頃を迎えた」との記事がありました。春が来たと言いたいところですが、一気に初夏の暑さです。昨日は広島県安芸太田町で気温30度超えを記録したそうです。小学生の下校見守りをやっていますが、これから暑さが堪える季節になりました。

 

 岡引の下で働く者を俗に「下引」(下っ引き)、あるいは手下(てか)、手先(てさき)といいます。これらの者が所持していたであろう「なえし」(鈎なし十手)です。

 十手№11で同心が所持していた「なえし」(鈎なし十手)を紹介しておりますが、今回紹介するものは町人身分の所持したなえしです。棒身が八角に造られ、少し洒落ていますので江戸または関東近郊の下引あたりが所持したものと思われます。

 「なえし」の語源は「鍛え棒」、あるいは「打って相手を萎えさせる」ということから来ているといわれます。長さ20~40㎝位の鉄製の棒で握柄の末端に鉄輪(紐付け鐶)が取り付けられています。

 基本的に十手とは区分される捕具ですが、ほとんど十手の代わりに用いられました。ただし、懐に隠し易い反面、十手ではありませんので役人でもない者が所持していたとしても偽役人として咎められることはありませんでした。

 通常は岡引の親分が私物として造り、手下(てか)の下引に持たせました。しかし、下引はこれでは戦えませんので、1mくらいの紐を付けて振り回したり、目潰しをしておいて殴りかかるといった使い方をしました。

 長さ28.0㎝×重さ167g 

 鉄八角形先太棒身 鍵なし 八角握柄 楕円形鉄紐付け鐶