古伊万里金襴手の中でも、いわゆる型物といわれる「荒磯文小鉢」です。円形の見込みに荒磯に跳ねる魚が描かれ、内側面には緑色地に金彩の唐花文と赤色地の如意頭形窓絵が交互に置かれ、その間が赤色の毘沙門亀甲文及び四方襷文で埋められています。 また、青海波文や魚文にも金彩が施されています。

 外側面は内側面と同文様ですが、高台は圏線の間に染付の○×文を廻らせ、高台内には二重圏線が入れられています。小型ではありますが自慢の金襴手作品で、多分、大中小の三つ組鉢の一点だと思います。

 型物(献上手)については伊万里焼№1で若干解説しておりますが、型物とは型で造られたという意味ではなく、一定水準に位置する名物器を指す名前です。つまり元禄時代の華やかな文化を背景として、柿右衞門様式の延長線上で金彩を多用したスタイル(金襴手)が完成しました。その中で茶人達からの特別注文によって製作されたのが型物です。茶道具ですから海外流出品は少なく豪商や大名の間で使用されました。

 型物には五艘船文平鉢、荒磯文鉢(赤地、萌黄地あり)、琴高仙人(赤玉)文鉢、赤玉雲龍文鉢、壽字独楽型平鉢(各種あり)の5種類があり、この他準型物と呼ばれる鉢が10数種類ほどあり、いずれも名品(優品)です。 

 口径14.4㎝×高5.2㎝×高台径8.7㎝

 

※ 高台内二重圏線は、伊万里焼の歴史上3期にわたって出現しています。第1期は承応期(1645~55年頃)を中心とした時代、第2期目は元禄中期~正徳期頃(1695~1716年)、第3期目は天明~寛政期頃(1780~1800年)です。本作品は第2期の元禄・宝永期(1695~1710年頃)の作品です。