明治維新から実に156年経ちました。「降る雪や明治は遠くなりにけり」俳人中村草田男の句です。同人は明治の気概や精神が廃れたのを憂いた句らしいのですが、今や歳月も遠くなりました。もちろん明治の気概などは日本人の心の中に微塵の欠片も感じられません。ましてや政治家どもは金儲けと選挙対策に血眼で、国家の存亡や国民の生活など全く考えていません。

 今や骨董も室町・江戸時代だけでなく明治、否、おもちゃなどは昭和の物までもが骨董といわれます。

 

 そこで今回は明治時代の精巧社製2点です。高台内に見える「交差松葉文」(マイセンの陶銘に似ています)が精巧社の陶銘です。精巧社は、明治4年(1871)の廃藩置県によって鍋島藩窯の細工小屋が解散となり、藩窯で働いていた陶工(窯焼き、細工人、絵付師など)が職(藩工としての庇護)を失って路頭に迷うことになりました。

 このため、元藩工が藩主に救済を願い出て鍋島家内庫所の補助で明治10年(1877)、精巧社を設立、大川内山の藩窯付近に窯を築き伝統ある青磁、染付、色絵等の鍋島焼を復活しました。ただし、元来が藩工であり商売等に不慣れであったため20年程創業し、その間、離合集散を繰り返して明治末年までには廃業してしまったようです。いつ廃業となったのか、その後も継続したのかさえ不明です。(伊万里市の学芸員にもメールで質問しましたが分かりませんでした。)

 染付唐子遊戯文方形皿 横12.7㎝×縱12.6㎝×高3.6㎝

 

 染付山水楼閣文角形水注 横経20.0㎝×奥行7.5㎝×高19.5㎝