世界最古の長編恋愛小説といわれる源氏物語の作者 紫式部の生涯を描いたNHKの大河ドラマ「光る君へ」が始まりました。

 ということで今回は画題「紫式部 観月の図」の掛軸を紹介します。紫式部については皆さんご存じだと思いますので説明は省略します。

 本画題は紫式部が石山寺に参籠した際、中秋の名月を眺めて「源氏物語」を起筆し、「須磨・明石の巻」の発想を得たとされる場面で、石山寺(滋賀県)には「紫式部の間}が設けられています。

 作者は土佐派最後の画家「土佐光一」です。土佐光一による同じような構図「紫式部 観月の図」は数点が確認されています。   

 

 右下の岩の所に「光一 印」と名前が入っています。

 土佐光一は土佐派正系の末裔で土佐派第25世を継承しております。明治5年、父である第24世光章(28歳で死去)の長男として京都に生まれ、東京美術学校を卒業、父が早世したため皇丹青会の望月玉泉に師事しました。

 明治40年、静岡市に移住し静岡中学(現県立静岡高等学校)の教師となり約30年間奉職しました。昭和40年、93歳で死去しましたが、平安時代から朝廷・幕府絵師として千年続いた土佐派は光一以降後継者がなく消滅してしまいました。