こんにちは、今回は珍しい焼物を紹介します。 

 鍋島焼の色鍋島といわれる箱形陶枕一対です。陶枕は、これまで鍋島関連の書籍では一度も紹介されたことがありませんし、私も初めて見るもので偶然手に入れることができました。

 男性用の胴部両面には侍2人の踊り狂う様2態が描かれ、女性用胴部は浮世絵風(見返り美人絵)美人2人と家紋が描かれています。侍2人は刀が1本差(浪人又はかぶき者)で、江戸時代に流行った「おかげ参り」でしょうか浮かれて踊っています。女性用枕に描かれた家紋「丸に隅立て四つ目結紋」は、対馬国厳原藩主宗氏の家紋です。    

 収納箱の蓋表に貼られた紙には「鍋島焼 人物画□色 陶製夫婦枕 拝領家老栗田丹波守」と記載されており、家臣あるいは町人が家老から拝領したものであることが分かります。(家老が藩主から貰ったものではなく、家老から貰ったものと解釈しました)

 ※ 箱書きの朱書き文字は、所蔵者又は古美術商の蔵番号だと思います。

  横径19.4㎝×奥行き9.0㎝×高14.0㎝ 

 

 おかげ参り(伊勢参り)は、江戸時代を通じて行われていましたが、なぜか慶安3年(1650)からおよそ60年周期で熱狂的な集団参拝が行われ、文政13年(1830)には500万人が伊勢神宮に押し寄せたと言われています。

 江戸後期の文化・文政から天保期頃(1800~1830年代頃)に製作された鍋島作品ではないかと推考しています。

 

※ 計測の「高」は胴部の陶器部分の高さです。

  箱枕は一般に木製のが多く、高級なものは蒔絵などが施されています。枕上部のくくり枕は藁束を何枚もの枕当て紙(和紙)

 を重ねて包み胴部に括り付けてあります。一番上の紙が汚れると取り除いて使用します。男性も女性も髷を結っていましたので

 首を乗せて寝ました。