柿右衞門様式の型打ち成形輪花皿です。

 見込み右側に松が群生した三つの岬を配置し、左側には流雲の中に霊芝雲を描いています。右側上部の松文は薄ダミのぼかし技法が用いられています。

 器肌はやや青みを帯びていますが透けるような白さです。染付の濃淡のコントラストが絶妙です。(写真よりも実物の方が白さとコントラストが鮮明に見えます)

 このような構図を「雲割り」といい、非常に日本的な美を感じさせる墨絵的な図案となっています。

 裏側面は梅花(4個)唐草文を廻らせ、高台内には「大明成化年製」の銘が入れられています。高台内に目跡が三つありますが、これは柿右衞門B窯の特徴で最上手作品の典型です。

 藍柿右衞門の松原文皿は、延宝年製銘の「松原雪輪文隅入長皿」が有名ですが、本作品は作行が同作品と類似しており、同時代の延宝・貞享期(1670~80年代)に製作された民窯伊万里染付磁器の中でも最盛期の作品といわれています。

 

 口径19.3㎝×高3.6㎝×高台径12.1㎝

 

 ※ 輪花皿とは、口縁部に規則的な切込みが入った皿をいいます。反対に口縁に尖

  った部分がある装飾を稜花といいます。なお、尖った部分がないか、若しくは尖

  った部分が非常に小さいものも輪花と呼んでいます。

 ※ 型打ち成形とは、ロクロでひいた皿や鉢などを柔らかいうちに型に被せて叩き

  締め、型に彫られた文様や形を写し取る成形方法をいいます。